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wabi

Author:wabi


治療の一環として始めた海岸散策
そこで知り合った海岸猫たちと交流を
深めるうちに彼らの魅力に心惹かれて
2009年10月に旧ブログを開設

そして2015年9月に当ブログへ移転

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★プロフィール写真は元海岸猫の愛猫

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ロンリーキャット (後編 2)

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前にも述べたが、シンゲンは2014年春に突然このエリアに姿をあらわし、そのまま居着いてしまった。

そのためこの強面猫の出自や年齢は、いっさい分かっていない。

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分かっているのは、耳カットと去勢手術のあとがあることくらい。

これらの事実から、シンゲンはどこかでひとの世話を受けていた 『地域猫』 だと推測されている。


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だがどういういきさつがあってその地を離れ、どういう経路でこの海岸までたどり着いたのかは、いまだ謎のままだ。

さらにどうしてここのエリアに定住しようと決意したのか、その理由も分かっていない。

これらの事実関係ついてほんにんに尋ねても、うつろな視線を返してくるばかりで何も応えてくれない。


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ただシンゲンがここを気に入ったのは、食料事情の良さがおおきな要因ではないかと推察されている。

このエリアを担当しているボランティアのSさんは猫たちの世話にことさら熱心で、エサ場には常にカリカリが置いてあるし、なんらかの事情があって自分が給餌に行けないときはアルバイトを雇うことすらある。


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ところが、海岸猫への給餌をこころよく思っていない住人がいるらしく、今年にはいってからエサ場の食器が持ちさられる事件が何度か起こっている、とSさんは言う。

私も直接的、間接的に知っているが、じかに抗議する度胸がない腰抜けのくせに、人目を盗んで海岸猫のエサ場をあらす狷介で卑劣な輩はこの街にも何人か存在している。


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以前に何度か記事にしているが、過去においてこの海岸ではクロスボウ(ボウガン)で海岸猫を殺傷するという犯罪が何件か起こっているし、毒餌で仔猫を殺害する事件も発生した

また本人たちは遊びのつもりなのだろうが、複数の少年がエアガンで海岸猫を標的にしていた現場を知人が目撃している。


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いったいこういう輩は “命” を何だと思っているんだ。

抵抗できない小動物を虐待・殺害してどんな気持ちになるのだろう。

おそらく愉悦を覚えているはずで、なんとなればこういう 『サイコパス』 は罪の意識などハナから持ち合わせていないからだ。


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犯罪心理学者のロバート・D・ヘアによるサイコパス(精神病質)の定義を以下に記しておく。

良心が異常に欠如している
他者に冷淡で共感しない
慢性的に平然と嘘をつく
行動に対する責任がまったく取れない
罪悪感が皆無
自尊心が過大で自己中心的
口が達者で表面は魅力的

※『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋

あなたの周りにこれらの項目にあてはまる人物がいたら、注意したほうがいい。


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社会に溶けこんだサイコパスはおそらく、人好きのする愛想のいい容貌をしているのだろう。

だが普通のひとは心情がどうしても顔付きにあらわれる。

猫も同様で、感情が面差しに表出する。とりわけ顕著に変化するのは目付きだ。


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一見強面のシンゲンがどれくらいの年数を野良猫として生きてきたのかは分からないが、おそらくこの子も、これまでに心無いニンゲンからいわれのない迫害や虐待を受けてきたと思われる。

野良猫という理由だけで、だ。

シンゲンだって家猫としてまっとうに育っていれば、もっと柔和な目付きになっていたはずだし、もし保護されて家族として迎えられた場合も同様の変容が起こるだろう。

「そうだよな、シンゲン」と話しかけたところ、このおっさんは何をほざいているんだと言わんばかりのきつい眼でシンゲンからにらみ返された。


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トレイを片付けるために駐車場に行ってみたら、ナルトがさっきの場所に戻っていた。

理由は分からないが、ナルトはこの場所がよほど気に入っているようだ。


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段ボール箱、机・ベッド・ソファーの下、押入れ、引き出し、棚の隙間、洗濯機や乾燥機など、猫はとにかく狭いところを好む。

その理由として、狭い穴の中にいる鼠などを獲っていた猫の祖先の本能が今も残っているからだといわれている。


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また狭いところは、外敵からの攻撃にそなえるには絶好の場所だからとも考えられている。

家猫であってもそうなのだから、敵の多い外で生きている野良猫の場合はさらに現実的で切実な理由として狭いところに居場所をもとめる。


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実際、ナルトにいる場所なら頭上からの攻撃は防げるし、胡乱な輩が近づいてくればどの方向へも逃げることができる。


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猫の祖先とされるリビアヤマネコから13万年も永々と継承されてきた習性は、幼いナルトの身体のなかにもしっかりと受け継がれているのだ。

その習性が、野良猫として生き抜いていくためだけに役立っているのは残念だが。


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猫の祖先の話をしたので、我が国の猫の歴史にも触れたい。

日本においてニンゲンが猫を飼うようになった時代は、諸説あって定かではないようだ。


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ただ鼠や虫から穀物を守るために、農家で猫が飼われはじめたという意見には説得力がある。

そのころは鼠を獲物とする猫と鼠害を防ぎたいニンゲンとの利害が一致し、猫は 『益獣』 として大切にあつかわれていた。


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やがて農家以外でも愛玩動物して飼われるようになり、ニンゲンと猫との共存はつづいた。

ところが、穀物の番人という利用価値がなくなると無責任な飼い主は猫を放置したり遺棄したりし、その結果 『野良猫』 という存在が生まれ、繁殖力の強い猫はその数を増やしていくことになる。


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本能にしたがい習性にのっとり、そしてニンゲンに寄り添う、そんな猫の生き方は昔も今もなんら変わっていない。

変わったのはニンゲンほうで、自分たちが遺棄しておきながら、繁殖期の鳴き声がうるさいとか、敷地に糞尿をするという理由で、かつてはよきパートナーであり益獣であった猫をしだいに 『害獣』 あつかいするようになっていく。


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猫を気まぐれで身勝手な動物だと評するひとがいるが、猫を裏切ったニンゲンと昔ながらの生き方を固守している猫、いったいどちらが自分勝手なんだ、と私は問いたい。

このように猫は、ニンゲンがわの恣意的な都合に翻弄されつづけている。

彼らがなんの苦情も申し立てないのをいいことにして。


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そうしてついには、先述したサイコパスでないニンゲンも野良猫を迫害、虐待しはじめ、挙げ句の果てには殺処分されるのを承知で保健所や愛護センターへ持ちこむようになった。

まるでほかの生き物の生殺与奪権をおのれが握っているかのように。

が、断言する‥‥。


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天はそのような権利をニンゲンにけっして与えていない、と。



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ナルトは唐突に起きあがると、足速に私の眼の前を横切り駐車場から出ていった。

私はナルトの行き先を見定めるため、ストーカーよろしくそのあとを追うことにする。


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そうしたところ、てっきりほかの場所へ移動したと思っていたシンゲンがふたたびエサ場のほうへ引き返している姿が目に入った。


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シンゲンは歩みをとめておもむろに草むらのなかへ身体を伏せると、前方を凝視しはじめる。


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シンゲンの視線の先にはナルトがいた。

そのナルトはあたりを見まわしながら哀しげな鳴き声をあげている。


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と、次の瞬間、今度は慌てふためいた様子でナルトは身体を反転させた。


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そしてナルトはおおきく跳躍すると、そのまま草むらのなかへ飛びこんだ。

ファインダー越しにナルトだけを見ていた私には、何が起こったのかまったく分からなかった。

だがナルトが逃げ出した理由は直後に判明する。


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ナルトのあとを追ってシンゲンも草むらへ飛びこんでいったからだ。


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草むらを回り込んでみると、ナルトの姿はなく、シンゲンが所在無さげに地面の匂いを嗅いでいた。

逃げるときナルトがどう感じたのか、その心情は分からないけれど、シンゲンが本気でナルトに攻撃をしかけるつもりがなかったのは明らかだ。


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真剣に相手をやり込めるつもりなら、猫はもっと執拗に追っていく。

猫には動くもの、逃げるものを追いかけるという習性があり、シンゲンはそれに従ったまでだ。


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その風貌とは裏腹に、寛大で穏やかな性格をしている、というのが今回の訪問であらたにしたシンゲンへの心証だ。


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ただ、この日姿を見せないシロベエと新参の黒猫との仲がどうなっているのか、いささか気になっている。

追撃され尻に帆をかけて潰走させられたシロベエとの軋轢は、その後修復されたのかどうか、そのことがとくに心がかりだ。


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シンゲンは駐車場を出て、それから散歩するようなゆっくりとした歩度で砂利道を進んでいく。


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やがて進行方向を右に切って道路を横断すると、民家の塀に近づく。


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そしてブロック塀の立ち上がり部分に敷かれたコンクリートの上に、ごろりと横になった。

この光景は以前に何度か目にした記憶がある。


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そうしてシンゲンは四肢を伸ばし、そのまま大きくあくびをした。

この姿勢は 『横寝』 といって、猫がリラックスしたときに見せる。


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野良猫のシンゲンがこの体勢をとるということは、警戒を緩めゆったりとした気分になっている証左だ。

しかしそういう状態であっても、ぬかりなく私の動静を確認するところは、やはり外で生きている野良猫の悲しい習い性というべきか。


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私が近づいてこないと見定めたようで、やがてシンゲンは腹を上に向ける 『ごろ寝』 とか 『へそ天』 と呼ばれる体勢になった。

これは猫がもっともリラックスしたときに見せるポーズである。

ここまでくつろいでいるシンゲンをそっとしておいてやりたいと思った私は静かにきびすを返した。


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そしてふたたび駐車場に足を運ぶと、ナルトがまたさっきと同じ場所へ戻っていた。

やはりここはナルトにとって思い入れがある特別な場所のようだ。


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しかしこの周辺に猫の興趣をそそるようなものは見あたらない。少なくとも私の眼には。

また身を守るためという動機も考えにくい。

なぜなら、この駐車場にはその目的により適した場所がほかにもたくさんあるからだ。


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いったいナルトはどんな意図があって、“この場所” にこんなにも拘泥しているのだろう。


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さっきからナルトの視線は砂利道をたどって国道のほうへ向けられている。

まるで国道から誰かがやってくるのを待っているかのように。


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ナルトの真剣な表情を見ていたら、私の脳裏にある情景が出し抜けに浮かんできた。

その情景とは‥‥。


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ひと気のなくなった時刻に、国道からやってきたニンゲンが仔猫をこの場所に置き去りにする、というものだ。

そのことを覚えているナルトはだから、自分を迎えに飼い主が国道のほうから戻ってくるのを “この場所” で待っているのではないだろうか。


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私の想像が事実と一致しているのかどうか、それはもちろん分からないし、確かめようもない。

ただし、もしこの推測が当たっていたとしたら、ナルトの行為はすべて徒労に帰するだろう。


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( ナルト‥‥、お前がここへ捨てられてからずいぶん長い月日が経っている )

( だいいちその飼い主はお前がそのまま死んでしまっても仕方ないと考えていたはずで、そんな無慈悲なニンゲンは二度とここへ来ないから、もうあきらめたほうがいい‥‥ )

という言葉を、私はぐっと呑みこんだ。


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無垢なナルトの瞳に見つめられたら、たとえ現実だとしても、そんな残酷なことは言えない。


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私が言えるのは‥‥、

「 いつか心優しいひとがお前のことを見つけて、家族としてあたらしい家に迎えてくれるかもしれない 」

「 だから、外での暮らしはきびしいと思うけれど、望みを捨てないで何としても生き延びるんだ 」

と、いかにも無責任で冷淡なせりふくらいだ。



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実は過日、私のブログを見たあるブロガーさんから里親さんを探すために一時的にナルトを保護したいという申し出があった。


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シシマルエリアのボランティアさんたちとも直接会談して捕獲の算段まで決めたのだが、しばらくして先方からスケジュール変更の報せがもたらされる。

その条件は時間的にかなりタイトなので、対応するのは無理だとの旨を先方に伝えた。


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すると先方から、ほかの野良猫を保護する予定があるからと告げられ、けっきょくこの話は白紙撤回となった。

とはいえ、本来なら私をふくめた関係者がやるべきことを好意で代行してくれようとしたそのひとには感謝している。


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そしてナルトがしあわせをつかむ機会をのがしたことは、私としても断腸のきわみで、いまだに彼に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


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この日の “待機” は終了したのか、ナルトは雑草の繁茂している駐車場の奥へ行ってしまった。

ちなみに、このエリアに猫のねぐらとなる猫ハウスは設置されていない。

以前はいくつか建物の陰に置いてあり、物珍しさもあって最初は利用していた猫もいたのだが、やがて誰も近寄らなくなったからだ。


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おそらく防砂林とちがって、ここだと物陰であっても猫ハウスは目立ってしまうので、その危険性を海岸猫たちが感知したからだと思われている。

だからここに住む猫たちは、こうして車やトレーラーの下で雨露をしのぐ。


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睡眠中に寝言を言うくらいだから、猫は間違いなく夢を見ているはず。

ナルトはいったいどんな夢を見るのだろう? 独りぼっちで寝ているときに‥‥。


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このブログで紹介している海岸猫たちは、記事にあるようにそれぞれ異なった過去を持つ。

たいていは酷薄なニンゲンによって海岸へ遺棄された捨て猫だが、シンゲンのようにほかの地域から流れてくるものや、サキのように海岸猫の母から生まれる生粋の野良もいる。

だが海岸猫となったいきさつに相違があったとしても、ここでの生活が彼らにとってつらくきびしいことに違いはない。

そして、すべての海岸猫は飼い猫になれる素質を等しく具えている、と私は確言できる。

なぜならニンゲンと猫は古来から相利共生の関係をつづけてきたという歴史が、そのことを証明しているからだ。



〈了〉



『 告知 』

もうじき2歳になるアメショ柄の 『ナルト(鳴門)』、現在里親さんを募集していますので、

心の琴線に触れた方は下のバナーをクリックして詳細記事を見てください。


もちろんナルトだけではなく 『サキ(咲)』 やほかの海岸猫の里親さんになってくれる方も募っています。



どうか、よろしくお願いいたします。




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ロンリーキャット (後編 1)

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私はほかの海岸猫の姿を求めてエリア内を捜索する。

しかし過去に出現頻度の高かった場所を重点的に調べていったけれど、文字どおり “猫の子一匹” いなかった。

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たくさんの海岸猫がいたころなら、こちらが捜すまでもなく彼らのほうから姿を現してくれたのだが、今ではエリアをたずねても誰にも会えないことすらある。

私は彼らを捜すのをあきらめて元の駐車場へもどることにした。

そして、私はそこで意外な光景を目にすることになる。


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駐車場にはシンゲンが舞い戻っていた。

私とどこかですれ違ったのだろうか、それとも私が駐車場から出ていくのを物陰から見ていて、それで姿をあらわしたのだろうか。


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そのシンゲンはナルトとひとつのトレイから猫缶を食べていた。


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だが仲良くトレイを共有しているというのではなく、競い合っていると表現したほうが正しい。


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シンゲンは大きな体格を活かし、どっしりと構えて猫缶を食べているが、身体も細くまだ力もないナルトはそんなシンゲンに押され気味だ。


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こうして見ると、ふたりの体格差は大きさも重さも倍ほどありそうだ。

ニンゲンにたとえれば、体重40キロの少年が体重80キロの大人と力くらべをしているようなもので、そう考えるとナルトの行動はかなり大胆といえる。


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この猫缶はナルトに与えたものだが、力がすべての猫社会ではそんなことで優先権がみとめられるとは思えない。

だからシンゲンの態度も私にとっては予想外といえる。


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さっきから見ていたら、ナルトを追い払おうともしないで、ただ黙々と猫缶を食べているだけだからだ。


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ただそんなシンゲンであっても、ナルトに主導権を奪われることは阻止している。


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身を引いて猫缶をあきらめたかに見えたナルトだったが、ふたたびトレイに頭を突っこんだ。

その勢いに、ひるむシンゲン。


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が、それも寸秒のこと、シンゲンはすぐに体勢を立て直し自分のスペースを奪回した。

そうしてナルトとシンゲンはふたたび頭をくっつけあって猫缶を貪るように食べる。


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猫缶は残り少なくなっているにかかわらず、ナルトもシンゲンもトレイから離れようとしない。


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ナルトはふと顔をあげると恨めしそうな目付きで見つめてきたが、私はどちらか一方の肩を持つつもりはない。

野良猫社会は強くないと生き残れない、優勝劣敗が原則の世界なので、ニンゲンの介入は好ましい結果を生まないからだ。


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私のにべない態度にがっかりしたのか、やがてナルトは身をひるがえした。


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しばらくシンゲンの背後で様子見をしていたナルトだったが、慎重な足取りでトレイに近づいてくる。


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そしてナルトはシンゲンの隙を突いてトレイに鼻先を差し入れると、ひとかけらの猫缶をかすめ取るように頬張った。


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市販されているキャットフードには、大別して猫缶などの 『ウェットタイプ』 とカリカリなどの 『ドライタイプ』 がある。

『完全栄養食』 のドライタイプと水を与えていれば、猫は生きていける。

だが 『一般食』 や 『栄養補完食』 であるウェットタイプだけでは、必要な栄養を摂取できない。


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ところがたいていの猫はウェットタイプを好む。嗜好性が高いからだ。

このへんの事情はニンゲンと同じで、旨いものばかりを摂っていればいずれ健康を害する。

ナルトとシンゲンもエサ場にカリカリがあるにもかかわらず、これほど猫缶に執着するということはふたりともウェットタイプが好みなのだろう。


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さて、しつこいようだが猫缶はほんの少し残っているだけだ。

なのにシンゲンは一向にトレイから顔をあげようとしないし、ナルトはまた背後からシンゲンの隙を虎視眈々とうかがっている。


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やがてナルトはシンゲンの横っ面に頭をあてると、力をこめてぐいぐいと押しはじめた。

だがシンゲンの巨体は小柄なナルトが渾身の力を出しても、そうそう簡単には動かせないだろう、と私は思っていた。

ところが、ここで予想外のことが起こった


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シンゲンがナルトに押し切られ、たたらを踏むようにトレイから離れたのだ。

小兵力士が巨漢力士を土俵の外へ押し出すシーンを彷彿とさせる。


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勢いがあまったのか、ナルトはそのまま地面に腹ばいになった。


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しばらく睨みあったあとでシンゲンが声をあげると、ナルトは慌てて身体を起こしてその場から去っていく。


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私から見れば、シンゲンはここまでよく辛抱したと思う。

シンゲンなら猫缶を独り占めできたはずで、そうしなかった彼は意外と寛容なんだな、と私は認識をあらたにした。

強面の外見とは裏腹に存外心優しいやつかもしれない。愛想がないだけで。


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興奮が覚めてきて自分の行動を冷静にかえりみているのだろうか、ナルトはシンゲンに背を向けてあらぬ方向を見つめている。

ただ耳を後ろに向けて、シンゲンの動向をさぐることは忘れない。


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地面に転がっているトレイ‥‥、猫缶はもう残っていない。


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新参者ということもあり、ナルトはエリアの先住猫に気兼ねをし、小心翼々としていると思っていたのだが、そんな私の予想はちがっていた。

野良猫として暮らすうちに、おのずとたくましくなったのだろう。


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そしてナルトは自分が生まれた家に帰ることをあきらめ、この海岸で野良猫として生きていく覚悟を固めたのかもしれない。

果たしてそれが良いことなのか悪いことなのか、一概にはいえないけれど、私としてはやはり一抹の寂しさを覚える。

それと同時に悲しさと怒りも‥‥。


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所在なさそうな足取りで去っていくナルト、その後ろ姿をじっと見つめるシンゲン。

彼らの心中になにが去来しているのか、私には知るよしもないが、できればさきほどの猫缶をめぐる出来事が原因で確執が生じないようねがっている。

たがいに寄るべない野良猫の身、助け合えとまではいわないが、諍いは起こさないでほしい。



〈つづく〉



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ロンリーキャット (中編)

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この日は古参のシロベエや、2016年夏からこのエリアに居着いた黒猫の姿がどこにも見あたらない。

ここでの地歩をまだ固めていないと思われる新参の黒猫が気兼ねして離れたところこにいるのはわからないではないが、駐車場を縄張りにしているシロベエの姿が見えないのはいささか奇妙だ。

外で暮らす野良猫の身には何が起こるかまったく予測ができない。

だからいつも顔を見せる海岸猫が姿を現さないと、どうしても不安を覚える。


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この子ならほかの猫たちの居場所を知っているかもしれないけれど、いまだに警戒心を持っている私にすんなり教えてくれるとは思えない。


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キジ白は私の顔を見つめて懸命に何かを言っている。

だがその内容は、どうやら私が求めている答えではなさそうだ。


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ひとり駐車場に残された寂寥を癒やすためなのか、それとも無聊を慰めるためなのか、キジ白は大きなあくびをした。


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外で暮らす野良猫は様ざまな外敵と闘いながら生きていかなければならない。


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必然的に気持ちは殺伐とし、いきおい表情が険しくなる。

とくに心の有り様を映す瞳はしだいにとげとげしい光を帯びてくる。


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けれど、野良猫になってまだ日の浅いキジ白の眼にはそういった光がみとめられない。

どちらかというと、おどおどした怯懦な灯がともっているように、私には感じられる。


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私には、この子が心の中に抱えているだろう喪失感を満たすことはできないけれど、一時的に腹を満たすことなら可能かもしれない。


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そこで、持参してきた猫缶をトレイに盛った。


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しばらくすると、匂いに誘われるようにキジ白がトレイに近づいてきた。慎重でゆっくりとした足運びで。


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猫缶に口を付ける直前、キジ白は周囲の様子をうかがった。

食事中はどうしても無防備になる、だから野良猫は害意を持った存在が近くにひそんでいないか確認しないではいられない。


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こういった行動は、そばにエサ遣りボランティアさんがいようがいまいが関係なく見られる。

彼らはたとえ信頼できるニンゲンであっても自分を護ってくれるとは思っていないようだ。


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そしておそらく、この世で頼みとするのは自分自身しかないと信じているのだろう。

また、そうしないと生き抜くことができないと、猫たちは本能的に悟っている気配がある。


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さらに、ニンゲンは手のひらを返すように平然と自分たちを裏切るという事実も承知しているのかもしれない。

そもそも野良猫はこうしたニンゲンの身勝手な行為によって生まれた存在なのだから。


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このキジ白にしても遺棄されずに飼い猫のままでいたら、こうして神経をすり減らしながら地面に置かれた猫缶を食べることなどなかったはず。

どうして無辜の幼い猫が、こんな憂き目にあわなければならないのだろう?


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やがてキジ白は満足げに舌なめずりをしながら上体を起こした。

トレイの中にはかけらが残っているだけなので、ほぼ完食したといっていいだろう。


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が、そう思ったのも束の間、キジ白はトレイにわずかに残った猫缶にふたたび口を付けた。

よほど腹が減っているのだろうか? でもそれは妙な話だ。


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猫たちが飢えないよう、このエリアにはカラス除けをほどこしたエサ場にいつもカリカリが置いてある。

むろんこの日も食器の中にはカリカリが残っていた。だからキジ白が空腹であるはずはないのだが。


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キジ白がいきなり食べるのを中断して眼をおおきく見開いた。

私は背後をちらりと振りかえり視界の隅に人影をみとめただけで、あとは砂利道を踏みしめる足音を聞いていた。


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その足音は歩調を変えずにしだいに遠ざかっていったが、その間、キジ白は警戒心のこもった視線を注ぎつづける。


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そのうちにキジ白は “手” を使ってトレイの隅に残った猫缶を手前に掻き出しはじめた。


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ちなみに、猫には我々ニンゲンと同じように 『利き手』 という概念があるといわれている。

つまり、右利きの猫と左利きの猫、両利きの猫の3タイプが存在しているのだ。

そして利き手をもっている猫と両利きの猫とでは、その気質にちがいがあるという実験結果が得られた。


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利き手を持っている猫は勇敢で親和的、そして両利きの猫は内気で臆病だという。

ただこの結果にどれほどの信憑性があるのか、私にはなんとも言えないが、まあそういうこともあるかもしれないくらいには思っている。


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“今度こそ”、キジ白は猫缶を完食した。


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育ち盛り、食べ盛りのキジ白には、あれだけの量だと足りなかったのかもしれない。

そう思った私は、追加の猫缶をトレイに盛ってみた。


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ところが、キジ白はトレーラーの下へもぐり込んでしまった。

私がトレイから充分な距離をとっても出てこようとしない。どうやら腹は満たされたようだ。


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さて、残った猫缶をどうしよう。

ほかの海岸猫がいればこのまま与えるのだが、あいにくこの日はキジ白以外ではシンゲンが姿を見せただけ。

そしてそのシンゲンも早々に立ち去ってしまった。

実はこの猫缶をめぐって、あとで一騒動が起こり、私はキジ白の意外な一面を知ることになる。


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この幼い海岸猫をいつまでも 『キジ白』 と呼んでいては、記事を書くうえで色々と差しさわりがあるので、以前から決めていた名前を発表したい。


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今後この子のことを 『鳴門(ナルト)』 と呼ぶ。

名前の由来は、被毛がうず巻き状のアメショ柄なので、そこから連想して “鳴門” にした、というしごく単純なものだ。

ただし、ナルトほんにんの承諾は得ていない。



〈つづく〉



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ロンリーキャット (前編)

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里親募集の告知ページに記載しておきながら、『シシマルエリア』のアメショ柄のキジ白をしばらく登場させていない。

その理由としては、シシマルエリアへ赴く機会が減ったうえに、訪れても彼が姿を見せてくれなかったり、姿を見せてもすぐにどこかへ隠れてしまったりで、まともに撮影できなかったからだ。

そこで、キジ白を家族として迎えたいという申し出が1日でも早く寄せられることを願って、以前に撮影した未掲載の写真で彼を紹介する。


* * *


本編に入る前に、8月下旬に撮った写真、いわゆる “近影” を載せておく。

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顔なじみのひとには抱かれるくらい人馴れしているキジ白、しかしまだ数回しか会っていない私に対しては用心をおこたらない。


* * *


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シシマルエリア‥‥。

数年前には10名以上の海岸猫が暮らしていたエリアなのだが、轢死したり水槽の中で溺死したり行方不明になったりして、当時いた猫で今も残っているのはシロベエだけになった。


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信頼していないニンゲンが近づくと、キジ白はすぐに物陰に隠れてしまう。


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この日も私の姿をみとめると、トレーラーの下へもぐり込んでしまった。

野良猫ならこれくらいの警戒心がなければ生きていけない。だから好ましい反応といえる。


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鋭敏な感覚で何かの接近を察知したのか、キジ白は眼をおおきく見開いて、背筋をのばす。

そして‥‥。


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一方向を見つめ、視軸を固定させたまま、キジ白はいきなり甲高い声を発した。


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キジ白の視線をたどって後ろをふり向くと、草むらの中に茶トラの柄が見えた。


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どのような事情があり、どのような経路で流れてきたのか‥‥、2014年春に突然このエリアに現れた “強面猫” のシンゲンだ。


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シンゲンは近くにいる私に一瞥もくれないで、眼の前を悠然と横切っていく。

あいかわらず愛想のないやつだ。


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と、そのときキジ白の鳴き声があたりに響いた。

シンゲンはついと歩みを止めると、声の主を探すようにその方向へ目をやる。


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が、すぐに前を向くと、何ごともなかったようにふたたび歩きはじめた。


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するとキジ白がトレーラーの下からはい出してシンゲンのあとを追う。


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ところがシンゲンはキジ白が近づいても、あからさまに無関心をよそおう。

この強面猫はニンゲンにだけでなく、仲間の猫にも無愛想な態度でのぞむのを信条としているようだ。


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シンゲンはマーキングにご執心で、キジ白の存在に気づいていながら一顧だにしない。


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片やキジ白は、シンゲンが自分を早く見てくれないかと辛抱強く待っている風だ。


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やがてマーキングにも飽きたのか、シンゲンがおもむろにキジ白のほうに向き直った。


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シンゲンはそれから、尻尾をあげながらキジ白に歩み寄っていく。

ふたりからは緊張感や切迫感などがまるで感じられないところから、諍いが起きる懸念はなさそうだ。


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だったら、親和的に鼻を近づけあう猫のあいさつをするのではと期待したのだが、その期待はみごとに裏切られる。

シンゲンが直前できびすを返したのだ。「ガキなんかにかかずらっているヒマはないんだ」といった風情で。


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そしてそのままキジ白に背を向けて歩きはじめた。やはり愛想がないやつだ。


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シンゲンは、ここに出現したときすでに去勢手術を終えていたことから、場所はまったく不明だがどこかでボランティアのひとの世話を受けていた、言うところの『地域猫』だと思われる。


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そんな野良猫としては比較的恵まれた境遇にいたシンゲン、なのにどうして命がけで国道を渡ってまで海岸にやってきたのか不可解なのだが、そのへんの事情を彼は黙して語らない。


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顔つきは強面だが、その見せかけの仮面はシロベエによって木っ端みじんに粉砕された。


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シンゲンはエリアに住みついた当初、先住猫たちをやたらと威嚇しては傍若無人の振る舞いをしていたのだが‥‥。

業を煮やしたシロベエに一喝されてほうほうの体で遁走するという醜態をさらしてしまい、以来すっかりおとなしくなった経緯があるのだ。


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もしかしたら以前暮らしていたところでも、同じように空威張りし、けっきょく仲間に見くびられ、ついには排斥されたのかもしれない。

この想像があたっているなら、シンゲンが誰に対してもつっけんどんな態度をとるのもいくらかは理解できる。


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キジ白は去っていくシンゲンを追おうともせず、その後ろ姿をうずくまったままじっと見ている。


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やがてシンゲンは駐車場から出ていった。


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ひとり残されたキジ白、この子は何を期待してシンゲンに近寄っていったのだろう。

シンゲンと遊びたかったのだろうか、それともただあいさつをしたいだけだったのだろうか。


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この幼い海岸猫は、ある日突然このエリアに姿をあらわしたと聞いている。

その状況から、ニンゲンの手によってここまで運ばれ、そして遺棄されたと推測される。


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私の顔を真正面から見つめるキジ白の双眸から 「ボク、どうしてこんなところに連れてこられたの? お母さんやほかのみんなはどうしているんだろう。早くおうちに帰りたいよ」 という切実な想いが伝わってくる。

しかし今の私は、この子に直接救いの手を差しのべることができない。

きびしい環境で生きている海岸猫の、とくに幼い猫の憂いを帯びた顔を見るたびに、私は不甲斐ない自分を恥じ、いたたまれなさと自責感に苛まれる。



〈つづく〉



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シシマルエリアの変事 (後編)

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シンゲンは駐車場を出ると、道路をゆっくりと横切っていく。

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向かっている先にはこのエリアのエサ場がある。おそらくシンゲンはそこへ行くつもりなのだろう。


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このエリアの給餌は週末には朝夕の2回だが、平日は朝だけだと聞いている。

だから猫たちが空腹をうったえないために、エサ場には常にキャットフードを置いてある。


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私が予測したとおり、シンゲンは真っすぐにエサ場へ行くと、餌の入った食器に鼻先を突っこんだ。

そのとき、背後から猫の大きな鳴き声が聞こえてきた。


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駐車場に戻ってみると、キジ白が車の下から顔をのぞかせていた。


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キジ白の鳴き声が駐車場に響きわたる。

しきりにあたりを見まわしているが、キジ白の周りには私がいるだけでほかには誰もいない。


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私が思うに、この幼い海岸猫は特定の相手に何かを訴えているわけではなく、情動に突き動かされて鳴いているのだろう。

その情動が惹起したのは、自分が置かれた過酷な現実、それを冷静に見定め受け容れることができないでいることが原因かもしれない。


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ふたたびエサ場へ行ってみると、食事を終えたシンゲンがのっそりと姿をあらわした。


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目の前でカメラを構えて立っている私を警戒しているようで、鋭い眼差しで睨みつけている。

一度は気を許し身体をすり寄せてきたシンゲンだが、その後私の訪問頻度が少なくなったためにすっかり信頼を失ったようで、会うたびにこうして胡乱な視線を向けてくるようになった。


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断続的に聞こえてくるキジ白の声が気になるのだろう、シンゲンは耳をそばだて駐車場の方を凝視しはじめた。

だがシンゲンの位置からは、死角になっていてキジ白の姿は見えない。


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キジ白の鳴き声にどう反応するのか見極めるつもりでカメラを構えて待っていると、シンゲンは突然駆けだし、私の目の前を疾走していく。


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そして近くの民家の敷地のなかへ姿を消してしまった。

おそらく私を警戒しての行動だろうが、シンゲンにここまで不信感を抱かせるようになった原因に私自身はとくに心当たりはなく、首を傾げるばかりだ。


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駐車場に戻ってみたら、キジ白はさきほどと同じ車の下に腹ばいになり、思い出したようにときおり小さな鳴き声をあげている。


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やがて視軸を固定して一点を見つめはじめたが、そこにはただ雑草が生えた地面があるだけで、猫が興趣をそそられるようなものは何もない。

ということはつまり、キジ白は何かを見つめているようだが、しかし実際は何も見ていないのだ。


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ファインダー越しにキジ白を観察していると、しだいにとろんとした表情になり、瞼がじりじりと降りてきた。

このあたりはニンゲンの子どもと一緒で、おおかた泣くのに疲れて眠くなったのだろう。

私は上体を起こすと、できるだけ音を立てないようにその場から離れた。


シンゲンがいなくなりキジ白も動かなくなったのでシロベエの様子をうかがうと、シートの上に姿はなく、さらに周囲を捜しても見つからない。

そこで私は駐車場をあとにして、海岸の方へ捜索の範囲を拡げることにした。

すると‥‥。


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倉庫様の建物の裏にまわってみたところ、シロベエはそこにいた。

自分の縄張りである駐車場を離れて何をするつもりなのかと訝っていたら、シロベエは使いこまれた金属製のテーブルにおもむろに前足をかけた。


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そしてそのまま脱臼した右後ろ脚で軽く跳躍すると、テーブルの天板によじ登った。

こういう動きを見ると、機能しなくなった股関節を周りの筋肉が補っている様子がうかがえる。


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それにしても縄張りとして固守する駐車場ではなく、どうしてこんな場所でくつろごうと思ったのだろう。

近づいてきたキジ白を避けるようにその場を去った先ほどの態度といい、私の印象ではどうもシロベエはあの新参の海岸猫を苦手としている風に見える。


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しかし膂力にしろ胆力にしろ、小さなキジ白よりはるかに勝っているシロベエの方が何故忌避するのだろう?

「ひょっとしたら‥‥」私の脳裏にある考えが浮かんだ。


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その考えとは、同じ捨て猫であるシロベエにとって、キジ白の悲痛な叫び声は自分の辛い体験を想起させる動因だったのかもしれない、というものだ。


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私もそうだが、ニンゲンだって思い出したくもない辛い過去の出来事を追体験させられるような事象には耳を塞ぎ目を背けたくなるものだ。

基本的には気散じな猫にしても、生死に関わるような災厄は記憶の印画紙にしっかりと焼き付けられて、事あるごとに意識の表層に浮かびあがってくるのではないだろうか。


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やがてシロベエは眠りについた。

猫もニンゲン同様に眠っているあいだは『レム睡眠(浅い眠り)』と『ノンレム睡眠(深い眠り)』をくり返していることが分かっている。

つまり猫もレム睡眠のときに夢を見ている可能性が高いのだ。


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もしかしたらシロベエは自分が海岸へ遺棄される前の夢を見ているのかもしれない。

母親や一緒に生まれた兄弟たちとしあわせに暮らしていた頃の光景を‥‥。


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今回私が目にしたシシマルエリアのささいな出来事は、このエリアの海岸猫たちの関係性が大きく様変わりする予兆にすぎなかった。

ただしその事実を私が知るのはずっとあとになってからだ。



〈了〉



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シシマルエリアの変事 (中編)

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猫は単独で行動し、たとえ同じエサ場で暮らす仲間とも基本的に群れることはなく、言うところのヒエラルキーは存在しない。

だから猿山のボスのような、集団を支配する絶対的な個体もまた存在しない。

ただ猫は習性として強い縄張り意識を持ち、その領域にほかの猫が侵入してくると排除しようとする。

一般的にオス猫は縄張り意識が強く、その範囲はメス猫の3~5倍にもおよぶといわれている。


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また去勢されていないオス猫は、去勢されているオス猫に比べておおよそ2倍の縄張りを持つとされている。

ただ、人から給餌されている猫の場合は、食べ物を探す必要がないので縄張りの領域は狭くなる。


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だから多くの海岸猫は強固な縄張りを持っていないが、それでもやはりほかの猫を寄せつけないスペースというものがある。

それは我々ニンゲンにも他人に近づかれると不快に感じる『パーソナルスペース』という領域を持っているからおおよそのことは想像できるだろう。


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シロベエの場合は、エリアの中心にある駐車場が縄張りであり、生え抜きの海岸猫がいなくなってからはその領域を固守している。

だから縄張りを侵犯した幼いキジ白を、シロベエがすんなりと受け容れるとは思えないのだが‥‥。



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キジ白が潜り込んだ車のところへ戻ってみると、身を低くかまえ、忍び足で車の下から出てくるキジ白の姿が目に入った。


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キジ白は周囲の物音に耳をそばだてながら、慎重な足どりで猫缶が入ったトレイに近づいてくる。


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何か胡乱な物音を捉えたのだろう、猫缶をひとくち口にしたところで、キジ白は警戒のこもった鋭い視線を私の背後に投げかける。

しかし悲しいかな、鈍麻したニンゲンの聴覚ではその音がなんなのか判別できない。


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それにしても食事中にこうも気を張りつめてばかりいたら、食べ物の味も分からないのでは、と私などは思ってしまう。


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やはり周りの様子が気になるのか、キジ白はトレイから顔を上げると、大きく眼を見開いて周囲を見まわし始める。


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その視線は眼の前にいる私に向けられているのではなく、明らかに別の何かに焦点が合わされている。

私もキジ白の視線を辿ってあたりを見まわしてみたが、それらしき対象は確認できなかった。


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ニンゲンの手によってここへ捨てられた幼いこの子の眼は、これまで何を見てきたのだろう?

産んでくれた母親のことや、一緒に生まれてきたきょうだいのことは覚えているのだろうか?

そして‥‥、


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その家族と無理やり引き離されて見知らぬ場所へ連れてこられたときのことは覚えているのだろうか?

それまで信じていたニンゲンに、ゴミのごとく捨てられた現実がこの小さな心に深い傷を残しているとしたら、そしていまだに血を流しているとしたら、とても遣りきれない。


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前かがみの姿勢で、足早に車の下へ戻っていくキジ白の後ろ姿を見送りながら私は思った。


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手酷い裏切りにあったこの幼い猫に今必要なのはおそらく、猫缶などではなく温かい愛情なのだろう、と。


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駐車場の一画で動くものがあったので視線を移すと、茶トラ猫のシンゲンの姿があった。


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シンゲンはけっして愛想のいい猫ではない。

つまりは私の訪問を知って姿を現したわけではない、ということだ。


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近づいた私には一顧だに与えず、完全に黙殺していることからもほかに目的があってやってきたに違いない。


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シートの上にいるシロベエに向かってシンゲンは鳴いた。とても小さく、かわいい声で。


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シロベエは片方の耳をわずかに動かしただけで、眼を開けようともしない。

その強面の相貌とは裏腹に、力関係では一方的にシロベエに押え込まれているシンゲンだからシロベエの動向は常に気になるのだろう。

それでシロベエのご機嫌をうかがうために一声かけたのかもしれない。


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駐車場を通行する許可をシロベエから得たと思ったのだろうか、シンゲンはその場で身体をくるりと反転させた。


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やがてシロベエからあるていど離れた場所までくると、シンゲンはいきなり大きな鳴き声をあげた。


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そして、さらに大きな声で “吠えた”。

もしかしたら「シロベエの奴デカイ態度しやがって、今に見ていろ!」などと陰口をたたきながら、捲土重来を目論んでいるのかもしれない。


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私の眼から見れば、やはりシロベエの態度は解せない。

なんとなれば、以前のシロベエならシンゲンの姿を見ただけで執拗に威嚇して、自分の縄張りである駐車場にけっして侵入させなかったのだから。


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牢名主よろしく一段高いシートの上で安楽そうに横たわっているシロベエだが、このエリアにおける彼のポジションになんらかの変化があったのかもしれない。

私がうかがい知ることのできない水面下で‥‥。



〈つづく〉



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シシマルエリアの変事 (前編)

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何人かの関係者に訊いたところ、前回紹介したテルは2015年11月に生後2~3ヵ月の状態で、ある日いきなり海岸にあらわれたという。

ということはつまり、その年の初秋に生まれたのだ。

そして、ここにも2015年初秋生まれの幼い猫がいる。


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いや、室外機の下に置かれたエサを一心不乱に食べている黒猫のことではない。


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この黒猫も2016年の夏にとつぜん海岸に姿を見せたが、そのときにはすでに成猫だった。

だから出自に関してはまったく不明で年齢も分からないのだが、警戒心が強いことから、おそらく街から流れてきた野良猫だと思われる。


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食事を終えた黒猫はエサ場からでると、ゆっくりとした足どりで歩いていく。


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そのとき、今までどこに隠れていたのか、私のわきから細身のキジ白猫が姿をあらわすと、鳴き声をあげながら黒猫のあとを追いはじめた。


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ところが黒猫はそんなキジ白を一度もかえりみることなく、建物の陰に姿を消してしまった。


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キジ白は黒猫の姿が見えなくなってもその場にとどまり、何かをうったえるような鳴き声を断続的に発している。

その声はしだいに小さくか細くなり、やがてキジ白は沈黙した。


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キジ白はそれから後ろを振りかえると、私の顔を見つめながらひときわかん高い声で鳴いた。

しかし私はその声にどう反応していいのか分からず、ただ黙ってキジ白を見ているしかなかった。


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するとキジ白は、自分の置かれた状況をあらためて確認するようにあたりを見まわしはじめた。


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その間にもキジ白は、不安と警戒が入り混じった視線を私に送ってくる。

私とのあいだには7~8メートルほどの十分な距離があるが、キジ白の様子からこれ以上近づくのはためらわれた。


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切なげな声をあげつづけるキジ白の顔はまだ幼く、そこには悲哀と戸惑いの感情が見てとれる。

その様子は、広大なショッピングモールで親とはぐれてしまった迷子を私に連想させた。


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冒頭で述べた2015年初秋生まれの幼い猫というのはこのキジ白である。

アメショ柄の被毛を持つこの海岸猫が当ブログへ初めて登場したのは『往く者・来る者 (後編 2)』だ。

そのときにも述べたが、この子が出現した状況や直後の様子から、ニンゲンの手により遺棄されたと推測される。

つまりこの幼い海岸猫は「迷子」ではなく、より過酷な状況に追いこまれた「捨て子」なのだ。


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迷子にしろ捨て子にしろこれがニンゲンの子どもなら、発見さえされればしかるべき機関によってそれなりの処遇を受けるのだろう。

しかし猫の場合はそうしたシステムが存在せず、少なくともしばらくのあいだは自身の力で生き抜くしかない。


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そして体力のない猫や疾患を抱えた猫は、誰の目にも触れることなくやがて孤独のうちに死んでいく運命にある。

それはある意味『自然の理法』と言えなくもないが、このような状況をつくりだしているのが我々ニンゲンの身勝手で傲慢な行為のせいであることは自明の理だ

そのことだけはしっかりと自覚しておきたい。


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黒猫のにべもない態度に落胆したのか、キジ白はゆっくりとした足どりで私の眼の前を横切ると、そのまま駐車場の方へ歩いていく。

私はキジ白との距離を保ちながらそのあとを追っていった。


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するといつからそうしていたのか、駐めてある車の下にシロベエが身を潜めていた。

キジ白を見つめるシロベエの眼には警戒の色が認められる。


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やがてキジ白が身をひるがえると、シロベエはその動きに呼応するように鋭い鳴き声をあげた。

シロベエの声音には、こういった状況で相手を威圧していた凄みは微塵もなく、逆に怯えと当惑が入り混じっているように感じられる。


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キジ白は、断続的に発せられるそのシロベエの鳴き声を馬耳東風と聞き流し、足早に歩いていく。


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そうしてキジ白はシロベエが潜んでいる同じ車の下へするりともぐり込むと、そこにうずくまった。


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ふたりはそれからしばらくのあいだ、互いにおし黙って身じろぎしなかったのだが、やがてシロベエはしびれを切らしたように身体を起こすと、そそくさとその場を離れていった。


先ほど黒猫が食事をしていたことでも分かるように、このエリアには海岸猫たちが空腹をうったえないようカラス除けのネットを設置してエサを常時置いてある。

だからここに住む猫たちはあまり飢えた素振りを見せない。


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それでも育ち盛りのキジ白なら食べるかもしれないと思い、ためしに持参してきた猫缶をあたえてみた。


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食べ盛りのキジ白であっても、やはり予想どおりそれほど腹が減っている様子はなく、猫缶を味わうようにゆっくりと食べている。


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それに、どうやら目の前の猫缶よりも周りの様子が気になるようで、キジ白はちょっとした気配や物音に過敏な反応を見せる。


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そしてついには元の車の下へ隠れてしまった。

猫の先天的な性格は父親の性格によって左右されるというが、この子の場合は同じ時期に生まれた灰シロ猫のテルと違って、父親から臆病で慎重な気質を継承したのかもしれない。


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それにしても、いったい誰がどんないきさつで幼い猫をこんなところへ放り捨てたのだろう?

聖人・君子よりかなり下の階級に属している私にしたところで、そんな “犯罪者” の動機などとうてい理解できるものではない。

というか、そんなもの理解したくもない。


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その犯罪者が野良猫の暮らす地域なら仔猫でも生きていけると考えたとしたら、それは大きな錯誤であり無知蒙昧としかいいようがない。

先に述べたように、幼い猫が屋外で生き延びる確率はかなり低いし、ましてや護ってくれる母親がいない捨て猫の境遇だと確率はさらに低くなるからだ。

だからもしもその犯罪者がこういった野良猫の実態を知っていたとすれば、「死んでしまうかもしれない」と分かっていながら仔猫を捨てたことになる。


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こうした動物を遺棄する行為は『未必の故意』による殺害に当たると、私自身は思っている。

だから前回紹介した動物愛護法において、「殺害・傷害」と「遺棄」とで罰則に著しい差があるのは不可解だし、不条理だと感じている。


私はキジ白から逃げるように姿を消したシロベエのことが気にかかっていた。

そこでキジ白をそのままにしてシロベエを捜すことにした。


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しばらくあたりを見まわしていると、後ろ脚を引きずるようにして歩くシロベエの姿が目に入った。


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しゃべりかける相手もいないのに、シロベエは歩きながら小さな声を発しつづけている。

まるで屈託を抱えた者がぶつぶつ独り言を言うように。


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シロベエは海岸に現れて半年ほどたった2010年12月に、突然行方不明になった。

そしてその原因はいまだに分かっていないが、2週間後に戻ってきたときには右の後ろ脚を『完全脱臼』していた。


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はた目には痛々しそうに見えるのだが、シロベエ自身は存外平気な様子で、走ることもこうやって跳躍することにもあまり差し支えがないようだ。


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にしても、幼いキジ白に怯えているようなさっきの態度はシロベエらしくなく、これまでの彼の行動を見てきた私には理解しがたいものだった。

エリア生え抜きの海岸猫がすべていなくなってからは、シロベエが実質的にこのエリアのボス的存在であり、なかんずく駐車場は自分の縄張りとしてほかの猫を排斥してきた場所だからだ。


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シロベエとキジ白とのあいだにいったい何があったのだろう?

私にはあの臆病で幼い海岸猫が、シロベエの地歩をおびやかす存在だとはどうしても思えないのだが‥‥。



〈つづく〉



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#猫バンバン プロジェクト

日産自動車が提唱している『#猫バンバン プロジェクト』を紹介します。




外で暮らす猫たちは寒い冬場に暖かさを求めて、停まっている車のエンジンルームや
足回りに潜りこむことがある。


それを知らずにエンジンを始動すると、猫が負傷したり、最悪の場合は死亡します。

実際に駐車中の車にひそんでいたふたりの海岸猫(ミイロ・シシマル)が
発進した車のタイヤに轢かれて死亡し、
ひとりの海岸猫(カポネ)が始動したエンジンで怪我をしている。


そんな事故を防ぐため、 “エンジンをかける前” にボンネットを叩いて猫たちの命を救うのが
『#猫バンバン プロジェクト』の趣意です。


『#猫バンバン プロジェクト』の詳細は下の画像をクリックしてください。
日産のページへジャンプします。







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往く者・来る者 (後編 2)

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5日後、私はまたシシマルエリアに足を運んだ。

前回訪れたのはその前に初めて見かけたシャムMixが気にかかったためだが、今回はエリアに突然あらわれた黒猫がその後どうなったかどうしても知りたかった。

以前にも述べたように、ここ数年のあいだに海岸猫の数は激減している。

5、6年前から比べると、個々の経緯は様々だが7割ほどの猫が海岸から去っていった。

だが最近になって前述のシャムMixや黒猫のように、ぎゃくに海岸へやってきた野良とおぼしき猫を目撃するようになった。

今回も黒猫の様子とともに、そんな猫たちを紹介しよう。


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記事にはしていないのだが、自宅からもっとも近いエサ場ということもあって、海岸へ行った際にはランの様子をうかがうのが半ば私の慣習になっている。

この日もシシマルエリアへ向かう途中、ランエリアに立ち寄った。


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防砂林へ入るやいなや、ひとりの茶トラ猫が灌木の中でぽつねんとしている姿が目に飛びこんできた。

《そうか、この茶トラだったのか‥‥》私は思わず独りごちる。

がっちりした体躯をもつこの茶トラと私はこのときが初対面ではなかった。


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実は、前日の夕刻にランエリアの近くでたまたま会った知人と立ち話をしている際、海岸沿いの道路を横断する茶トラを目撃している。

茶トラはすぐに防砂林脇の植込みに姿を消したので、私がその姿を目にしたのは寸秒の間だった。

そうそう頻繁に見知らぬ猫が海岸に出没することはないという先入観があったので、シシマルエリアからはそれなりの距離はあったが、そのときはてっきりシンゲンが出張ってきたと思ったのだ。


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この茶トラをそれまで海岸で見かけたことはついぞなく、どういういきさつがあったのか分からないが、やはり左眼を負傷した黒猫と同様に街からやってきたと思われた。


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野良猫とは思えない柔和な表情をしているので敵意や害意を抱いていそうにないが、茶トラは私が来たときからランをじっと見つめている。


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そのランは茶トラの存在を知ってか知らでか、のんびりと毛づくろいをしていた。


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香箱をつくっているところを見ると、茶トラも思いのほかリラックスしているらしい。

そこで私は「お前は何処から来たんだ?昨日からずっと海岸にいるのか?」と訊いてみたが、茶トラはこのおっさん何を言っているんだ、という風情で静かに見つめかえしてくるばかりだ。

街中から海岸へ出張ってくる行動範囲の広さから、この茶トラはおそらく雄だと思われる。


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それにしてもランの呑気な様子を見ているうちに、野良猫としての自覚が欠如しているのではといささか心配になってきた。

しかし‥‥。


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眼を閉じて一見まどろんでいるように見えるランだが、鋭い指向性と高い感度を有する耳だけはしっかり茶トラのいるほうに向けていることを見逃してはいけない。

だからもしランが茶トラの存在を知っていて、なおかつこういう態度をとっているのなら、相当に肝が据わっているといえる。


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ここにいても埒があかないと悟ったのか、しばらくすると茶トラは灌木の奥へ姿を消した。

その直前に私のほうを顧みた茶トラの表情は、なにかなし憂いを含んでいるようだった。

「元気でな‥‥」行くあてがあるのか気になったが、私には茶トラにそう声をかけるしかすべがなかった。


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ランのエサ場をあとにした私は、一路シシマルエリアへと向かった。


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エリアに着いた私を最初に迎えたのは、生え抜きの海岸猫すべてがいなくなったせいで棚ぼた式に登りつめたとはいえ、いまやこのエリアのボス的存在となったシロベエだった。※〔1〕


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シロベエ自身にも自覚が生まれたのか、その立ち振るまいに尊大さを感じるのは、あながち私の錯覚だとも言いきれない。


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実際にこの駐車場の中心に近く、そして比較的高くて眺望のきく場所に陣取っているシロベエの姿態は、まるで玉座に横たわる王のようだ。

たとえ誰ひとり従属せず、何ひとつ権力がないとしても‥‥。


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とはいえ仔猫ならいざ知らず、成猫にとって独りでいることはごく当たり前の状況であって、それにより痛痒を感じることはないはずだ。


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だとするなら、現状はシロベエにしてみれば今までにないほど心地よいものなのかもしれない。


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“玉座” で昼寝をはじめたシロベエをそのままにして、私はエサ場に誰かいないか調べることにした。


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そして駐車場を出てエサ場へ向かっていると、道路を横断しているシンゲンの後ろ姿が目に入った。

目的はちがっても、どうやらシンゲンと私の行き先は同じようだ。


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ところがてっきりエサ場へ行くものと思っていたシンゲンは、エサ場の中をちらりと見ただけでそのまま通り過ぎていく。

私もエサ場をのぞいてみたが、中には誰もいなかった。ということはつまり、先客のいるのを知ってシンゲンが遠慮したわけではない。

《いったい何処へ行こうとしているんだ、シンゲンは‥‥?》私はいぶかった。


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くつろぐなら好適な場所が駐車場にいくつもあるのに、そうしないということはやはりシロベエに気がねしているからだろう。


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考えてみれば、義兄として、また強力な後ろ盾として頼りにしていたコジローのいなくなった今が、シンゲンにとって最もつらいときかもしれない。※〔2〕


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硬いコンクリートであっても、今のシンゲンにはシロベエの目が届かないというだけで心穏やかでいられるのだろう。


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ここにきてシンゲンは、はじめて私と目をあわせた。「なんだおっさん、いたのか」という風に。

私の存在などとっくに気づいていたはず、なのにどういった理由によるかは知らないが、猫はよくこういう見えすいたマネをする。


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私は思わず「おおっ」と声をあげた。

なんとなれば、シンゲンの『ヘソ天ローリング』を見たのは初めてだったからだ。※〔3〕


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シンゲンのいかにも猫らしい仕草を見ても、素直に「かわいい」と思えないのは、やはり彼が強面であるからで‥‥、

本来は人に対するのと同様に面構えで判断してはいけないのだが、猫の愛らしさはとどのつまり顔だちなんだなあ、とあらためて痛感した光景だ。※〔4〕

シンゲンにはたいへん申し訳ないのだが、こればかりはしかたがない。


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駐車場に戻ってみると黒猫の姿があった。

黒猫は心地よい海風を受けながらつかの間の眠りに就いていた。


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私の気配に気づいたのだろう、黒猫はわずらわしそうに眼を開けた。

だがまぶた以外を動かすつもりは毛頭ないようで、あくまでも鷹揚にかまえている。

黒猫のその態度は、このエリアに何年も住みつづけている古参猫の風格を感じさせるほどだ。


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ところで「黒猫が目の前を横切ると不吉」だとか「黒猫は悪魔の使い」などと巷間言われているが、どちらも迷妄的信仰(迷妄)の類である。

元来日本において黒猫は『福猫』といわれて幸福の象徴だった

それに「黒猫には魔除けの力がある」とか「黒猫を飼うと病気が治る」などと信じられていて、通説によると沖田総司が労咳(肺結核)の完治を願って黒猫を飼っていたと言われている。

(ちなみに『吾輩は猫である』のモデルとなったのは夏目漱石自身が飼っていた元野良の黒猫である)

ところが明治以降に欧米の文化が日本に流入してきたおりに、「黒猫は不吉」という迷信も一緒に入ってきた。

そもそもそんな迷信が生まれたのはヨーロッパにおいておこなわれた『魔女狩り』の際に「黒猫は魔女の使い」などという根拠のない話が流布されたためだ。

そして黒いという理由だけで、黒猫は魔女とされた人たちとともに殺害された。

イタリアでは魔女狩りの名残りとして、今でも毎年6万匹もの黒猫が殺されつづけている。


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ここにほかの国における黒猫の扱いについて記しておく。

イングランド:黒猫が道を渡ったり自宅に入ってきたら縁起がよい。結婚祝いに黒猫を送ると新婦に幸せがおとずれる。

スコットランド:玄関先に見知らぬ黒猫がいたら、その家に繁栄がもたらされる。

アメリカ:黒猫が横切ると不幸が、白猫が横切ると幸運がもたらされる。

ベルギー:イーペルという町では19世紀末まで時計塔から黒猫を落として殺すという行事がおこなわれていた。
(現在はその反省として生きた黒猫の代わりにぬいぐるみを落とし、それを受けとめた人は幸運になるという祭りが催されている)


黒猫を「幸福の象徴」として捉えるのも「不幸の象徴」として捉えるのも、ともに迷信だが、少なくとも良い前兆として受けとめた場合には、いわれのない迫害や虐殺は起こりえない。

(どだい皮膚の色や毛の色で不当な差別をするのはニンゲンだけだ)

どうせ誤って信じるのなら‥‥、猫もニンゲンも幸せになれるほうを選ぶべきだ、と私は思う。


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だから私の身にもいずれ良いことが起こると信じたい。いや、ここははっきり「信じる」と言っておこう。

(皆さんも黒猫を見かけたら吉兆と思い、更に黒猫を家族として迎えれば幸せと繁栄がおとずれると信じましょう)


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《それにしても‥‥》と私は首をかしげた。

黒猫は駐車場にいる。しかも死角になっているとはいえ、シロベエの目と鼻の先、4メートルほどのところにいる。


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それも黒猫は物陰に隠れているわけではなく、すぐ目につくところでのんびりくつろいでいるのだ。

だからシロベエはとうぜん気づいているはず。にもかかわらず、示威的な行動を起こさないのはどうしてなんだろう?


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すでに黒猫と一戦交えて被毛の色のごとく “白黒” ついたのだろうか、それとも平和裏に野良猫社会における協定のようなものが結ばれたのだろうか。


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いずれにしろシロベエとの付き合いもすでに6年になるのだが、私はこの海岸猫の性格がいまだにつかめない。

野良猫にはさして珍しくないが、シロベエもいつ何処で生まれたのかなどの生い立ちに関することはいっさい分かっていない。

ある日突然このエリアに現れて、そのまま住みついてしまったのだ。


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その頃このエリアは大所帯だったのだが、シロベエはほかの猫たちにうとんじられていた。

それというのも、この海岸猫の行動がいささか奇矯だったので、皆が「触らぬ神に祟りなし」とばかりに関わりを避けていたからだ。


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個々の出来事はさすがに忘れてしまったが、ひとつ実例を挙げると、シロベエがこれといった理由もなく周りのいる仲間にいきなり喧嘩を吹っかけている現場をいくどか目撃した。

コジローにいたっては、そういう予測不能な行動をとるシロベエを蛇蝎のごとく嫌い、自分からはけっして近寄らなかった。

そしてシロベエがエリア内でうろついているときには、コジローは隣接するべつのエリアへ一時的に避難していたくらいだ。


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エリアに波風を立ててばかりいるそんなシロベエのことを、私はいつしか「空気が読めない奴」と呼ぶようになった。

ただ幼い猫たちには不思議と慕われ、ともに里親さんに引き取られた『新入り猫』や『ツバサ』とじゃれあっている光景をよく見かけたものだ。

まあなにはともあれ‥‥。


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新参の黒猫も落ちついた様子だったし、シロベエとシンゲンの姿も確認できたし、これでこのエリアにおける私の目的はほぼ達成された。

そこで、来る途中で会った茶トラのその後とひとりでいるランのことが気になっていたので、このエリアでの撮影を終えて、ランのところへふたたび行ってみようと思った。

そんな矢先だった。

出し抜けに甲高い猫の鳴き声、というより叫び声が駐車場に響きわたったのは。


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その第一声をきっかけに、叫び声が断続的に聞こえてきた。

シロベエも毛づくろいを中断してあたりを見まわしている。

鳴いているのは黒猫ではないし、シンゲンでもない。

一瞬、先日見かけたシャムMixの顔が頭に浮かんできたが、私はすぐにそれを打ち消した。

人目を避けてひっそりと暮らしている野良猫は、よほどのことがないかぎり鳴いたりしないものだ。それもこんな大声では‥‥。


「いったい誰がこんな派手な声で鳴いているんだ!?」


私は鳴き声をたよりに駐車場の奥へとゆっくり歩いていった。

しかし砂利のまじった土の駐車場、どうしても足音は立ってしまう。

その私の足音を聞きつけたのだろう、途中でその鳴き声はぴたりと止んだ。


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果たして、駐車場の隅にひとりのアメショー柄のキジ白猫がうずくまっていた

まだ幼さが残るこのキジ白とは初対面だ。


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初見の海岸猫に言う決まり文句が、私の口から思わずついて出た。

「お前は誰だ?何処から来たんだ?」


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しかし私の顔をしばらく見つめたキジ白は、正面に向きなおりふたたび大きな鳴き声をあげた。

まるで誰かに苦情を申し立てるような調子で。


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面差しや身体の大きさから推して、このキジ白は去年の秋に生まれたのだろう。

また初対面のニンゲンが側にいるにもかかわらず、逃げる素振りも見せないで安楽に香箱をつくっている人馴れした態度から、無慈悲なニンゲンの手によって遺棄された捨て猫だと思われる。

あらたに黒猫が加わったことで少々複雑な状況になったとはいえ、比較的平穏なこのエリアに波乱を起こすのは意外にもこの幼いキジ白なのだ。

さらには安泰だと思われたシロベエの地歩をおびやかすのもこの子なのだが、その模様はべつの機会に紹介したいと思う。


ただこれだけは皆さまにお伝えしておきたい。

このアメショー柄のキジ白の子の里親さんを募集しているということを。

詳細は里親募集のページ危険な防砂林から仔猫を救って!を参照してください。



〈了〉



脚注
※〔1〕仲間と群れない猫の社会にいわゆるヒエラルキーは存在しないが、個体同士の間には序列が介在している。
※〔2〕コジローがいなくなった経緯は『青天の霹靂 (後編 2)』を参照されたい。
※〔3〕ヘソ天ローリング:私が勝手につくった造語で、ヘソ天のポーズのまま身体を左右にゆらすことを言う。
※〔4〕『猫の愛らしさはとどのつまり顔だちなんだ』というのは「猫の可愛さ」について論じただけで、
       シンゲンを貶めているわけでも差別しているわけでもない。念のため。



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往く者・来る者 (後編 1)

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エリアにおける序列をシロベエが少々露骨な方法でシンゲンに因果を含ませてから3日後、私はまたシシマルエリアを訪れた。

こんな短いスパンでこのエリアを再訪するのは実に久しぶりのことだ。

とはいっても、シロベエとシンゲンの諍いに心を砕いたわけではない。

だいたいにおいてシロベエとシンゲンが起こすあの手の小競り合いは常態化していると思われ、いまさら一時しのぎの仲裁などしてもなんの意味もないことは明らかだ。

それに、そもそも野良猫社会には彼・彼女らなりの確固とした秩序や掟があり、ニンゲンが介入する余地など端からありはしない。

私の目的は、あくまでもあの日に初めて姿を見せたシャムMixの動向を知ることだった。


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ところがエサ場を中心として、その周辺の駐車場や空き地をひととおり捜してみたが、シャムMixの姿はどこにもなかった。

《やはりシャムMixはこのエリアで暮らしているのではなく、あの日たまたま通りかかっただけなのか?》


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シャムMixを捜しているときに、自身は草むらに身を隠しているつもりなのかもしれないが、実際は100メートル先からでも見分けられる状態のシンゲンに会った。


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シンゲンは私が近づいて話しかけても、心ここにあらずといった風でこれといった反応をしめさない。

焦点の定まらないぼんやりとした目つきをして、表情も何やら屈託ありげだ。

もしかしたらシロベエとの軋轢のせいで心身ともに疲弊しているかもしれず、そうであるなら今はそっとしてほしいだろうから、私は「シンゲン、またな」と一言声をかけてその場をはなれた。


私はそれから無駄だとは思ったが、シャムMixの姿を求めて先日彼女が去っていったのとは逆の方角へも足を延ばした。


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エサ場から少し離れた駐車場のそばを通りかかったとき、私の視界の片隅を小さな影がよぎった


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はっとして、反射的に振りかえるとそれは黒猫だった。

一瞬、数年前にこのエリアから突然姿を消した『クロベエ』が帰ってきたのかと思ったのだが、体付きが明らかに違っている。

「違う黒猫だ!」私は心の中で思わず声をあげた。


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黒猫は私の存在を気にとめることなく物陰に姿を消した。

そこで私は足音を忍ばせてゆっくりと障害物の反対側にまわりこんだ。


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そうして古タイヤの脇にうずくまっている黒猫と私は向かい合った。

これまでここで黒猫の姿を見たのは、先述したエリア生え抜きのクロベエだけだ。


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猫の被毛の柄は千差万別だが、ソリッドタイプの白と黒は個体選別が難しい。とりわけ黒猫の識別は難度が高い。(あくまでも私にとってはということだが)

だからこの黒猫とは今回が初見になるのか‥‥、私に確信はない。


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それというのも、ひと月ほど前から黒猫を何度か目撃しているからだ。

* * *

まず海岸において黒猫を最初に目撃したのはランエリアだった。

灌木の奥に腹ばってじっとランの様子をうかがっている黒猫をたまたま発見した。

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私を見つめる黒猫の双眸には警戒心とか猜疑心といったものがあまり感じられない。

この黒猫とは初見かと思ったのだが、実は数日前にここから200メートルほど離れた場所で体付きのよく似た黒猫を私は目撃していた。


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ただし、そこは海岸ではなく国道の反対側の市道で、そのとき黒猫は海岸とは逆の方角へ歩いていて、そのままとある民家の門扉の下をするりとくぐっていった。

むろんその黒猫が目の前にいる黒猫と同一なのかは断言できないが、距離的にも更に猫全体に占める黒猫の割合を考えても、同じ猫である可能性は極めて高い。

そしてそうであるのなら、飼い猫が命を賭してまで交通量の多い国道を渡って海岸まで来ることは考えられないので、おそらく野良猫だと思われる。


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このとき、ランはお気に入りの場所でのんびりくつろいでいた。

表情にも警戒感や緊張感は微塵も感じられない。

黒猫の存在に気づいていないのか、それとも気づいていながら黙殺しているのか、私には判断がつきかねた。

私が写真を撮るために近づくと、黒猫は身体をひるがえして防砂林の奥へ逃げてしまった。


それから3日後の同じ夕刻だった。

私がランエリアを訪れたとき、すでに黒猫がいて、ランと2メートルほどの距離で対峙していた。

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ランは前回とは打って変わった緊張した面持ちで一瞬たりとも黒猫から眼をはなさず、その動きを追う。


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一方の黒猫はというと、顔貌がずいぶんと変わっていた。

防砂林のいたるところに張り巡らされている蜘蛛の巣を顔面にくっつけているのは仕方ないが、左眼が半分以上ふさがっている。


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黒猫が前回と同じように灌木の中に入りこんだために、ふたりの隔たりは4メートルほどに広がる。

そのせいか、さきほどの張りつめた緊張感はいくぶん薄れ、ランも落ち着きを取りもどしている。


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黒猫の顔をよく見ると、左眼の上に引っかかれたような傷がある。

おそらくはほかの猫と喧嘩をして負ったもので、その傷せいで左眼がふさがっているのだろう。


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私が来てからすでに20分以上が経過している。

リンと黒猫はその前から相対していたのだから、猫同士の睨み合いにしてはいささか長い。


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膠着状態にしびれを切らしたのか、黒猫は灌木の更に奥へ引っこんでしまう。

冒頭で述べたように、野良猫同士の諍いにニンゲンが介入しても根本的な解決にはならないので、私はふたりをそのままにしてその場から立ち去った。


そしてつぎにこの黒猫と遭遇したのは5日後、リンエリアでのことだった。

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黒猫の眼の状態は更に悪化し、左眼は完全にふさがっていた。

飼い猫ならなんらかの治療を受けているはずだから、やはりこの黒猫は野良猫であり、そして命をかけて国道を渡らなければならない事情があったのだろう。


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左眼の傷が物語るように、ほかの猫との争いにやぶれて、もともとの定住地から離れざるを得なくなったのかもしれない。


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そのとき、私の視界の左隅にサキが現れた。どうやらサキも黒猫の存在に気づいたようだ。


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見ていると、サキは姿勢を低く保って、字義どおり抜き足差し足で黒猫へ近づいていく。


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そしてその動きは、まるでスローモーションかコマ送りのような極めてゆっくりとしたもので、少なくとも私の耳には足音はまったく聞こえない。


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しばらくして灌木の茂みの中から枯れ葉を踏む足音がひとしきり聞こえてきたが、ふたりが争っている様子はなく、やがて静寂がおとずれた。


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踏み分け道を使って灌木の茂みの反対側にまわり込んでみると、黒猫の姿は既になく、サキがあたりの匂いをさかんに嗅いでいた。


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おそらくは黒猫が残していった匂いからその正体を探っているのだろう。

ちなみに猫の臭覚は犬にはおよばないものの、ニンゲンの1万倍から10万倍と言われている。


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ただならぬ気配を察知したのだろう、サキの母であるリンも現場にやって来ては娘と同様に下草の匂いを入念にしらべはじめた。


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リンの表情は刃物のように鋭い。おおかた自分のテリトリーを侵犯した相手に思いを巡らせているのだろう。


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幼いサキにとっては、自分のテリトリーに見知らぬ黒猫が侵入してきたことがショックだったのか、目を瞠って不安げな表情を見せている。※〔1〕


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娘を見つめかえすリンの表情は険しい。「これくらいことであたふたするんじゃないわよ!」とでも母として、また野良猫の先輩としていましめているのかもしれない。


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結局この黒猫は、私の知るかぎりにおいては3度海岸猫のエサ場近くに出没した。

その後、ぱたりと姿を見せなくなったので、街へ戻ったのだろうと思っていたのだが‥‥。

* * *

だからもし同じ黒猫ならこの日が4度目の遭遇になるのだが、はたしてそうなのだろうか?

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いくぶん丸みをおびた顔の輪郭など類似点はある。しかし、いかんせん同一猫だと断定できる決定的な特徴が見あたらない。


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あの黒猫なら左眼の傷は完治していることになり、それはそれで喜ばしいことなのだが‥‥。

と、そのとき私の背後から猫の鳴き声が聞こえてきた。


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振りかえって見ると、声の主はシロベエだった。


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私には理由など知る由もないが、シロベエはご機嫌斜めなようで、断続的に甲高い声を発している。

この海岸猫は2010年の12月に突然エリアから姿を消した。

2週間後にひょっこり帰ってきたのだが、そのときには右後ろ脚を脱臼していた。


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だから歩く際などに、脱臼した右脚に重心がかかると腰ががくりと沈んでしまう。

ただシロベエ自身が痛みを感じている様子は見られないし、走ることや跳躍することに支障があるようにも感じられない。


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シロベエの状態を見ていると、おそらくは関節がずれただけの『亜脱臼』ではなく、関節がはずれた『完全脱臼』だと思われ、そうであるのなら治療には全身麻酔での手術とリハビリが不可欠だ。

手術費用は数十万円かかり、また完治までは関節部を固定して数ヵ月を要すると言われている。

野良猫にそのような治療を施すのは現実的ではなく、だからボランティアさんも放置せざるを得なかったのだろう。


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それはともかくとして、のんびりと草を食んでいるシロベエだが、私が気になるのは黒猫の存在を知っているのか、ということだ。

縄張り意識がことさら強いシロベエのことだから、ほかの猫が駐車場に現れたとなると、心中穏やかでいられるはずがない。


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黒猫の出現によってこのエリアにおける序列や力関係に、なんらかの波紋が生じるのだろうか?

更には前回記したように、この黒猫がシロベエの地歩をおびやかす存在になるのだろうか?

これらの疑問に対する答えは次回に譲ることにする。



〈つづく〉



脚注
※〔1〕発情していない雌猫は雄猫を近づけないし、場合によっては攻撃を加える。



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どのような事情があってシンゲンが海岸へやって来たのかは不明だが、去勢手術を施されていることから(耳カットもされている)、以前暮らしていたところではそれなりの処遇を受けていたと推察される。

またそういう境遇に置かれていたことから、おそらくはシロベエのようにニンゲンの手により遺棄されたのではなく、自らの足で海岸へ移ってきたと思われた。


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そうしてこのエリアへやって来た当初のシンゲンは、なんの理由もなくほかの海岸猫を恫喝したり食事を横取りしたりと、はなはだ不遜な振るまいを見せていた。

おそらくそれらの行為は、シンゲンにとってあらたな環境に対する不安を払拭するための虚勢であり、エリアにおける自分の序列をあたうかぎり高いものにするための示威だったのだろう。

さながらやんちゃな転校生が空威張りによって、自分を実際より強く思わせるように‥‥。


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だがそんなシンゲンの目論見は、シロベエによっていともあっさりと、そして完膚なきまでに粉砕される。


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シロベエの一喝に縮みあがって遁走したのを機に、このエリアにおけるシンゲンの序列は最下段近くまで一気に落ちてしまった。


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ところがシンゲンはそのあと、シロベエも一目置いているエリア生え抜きのコジローに取り入って自分に有利な地歩を築くという抜け目のなさを見せた。

言うなれば、「虎の威を借る狐」ならぬ「先住猫の威を借る新参猫」を画策したわけだ。


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しかしそんな遣り口はしょせん一時のがれの弥縫策であり、世の常としてそういうものはいずれ破綻する運命にある。

シンゲンの場合もその例にもれず、頼りとしていたコジローがエリアを去ったために、彼のはかりごとは水泡に帰した。

まあこうやって振りかえってみると、猫の社会もニンゲン社会と同様にそれなりに複雑でなかなか厄介なもののようだ。


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塀の向こう側に姿を消したシンゲンの動きを予測したのだろう、シロベエは不自由な後ろ脚を引きずりながらも足早に移動していった。


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一方のシンゲンは、そんなシロベエの動きを知ってか知らでか、門扉に向かって民家の駐車スペースをのんびりと歩いてくる。


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そして待ち構えていたシロベエと顔をあわせると、シンゲンは先ほどより若干威勢のいい声を発した。


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しかしシロベエはシンゲンの声など歯牙にもかけずに昂然とした足どりで近づいていく。

シンゲンは更に大きく甲高い声をあげるが、ふたりの優劣は尻尾の状態を見れば一目瞭然だ

自信たっぷりに尻尾を高く上げているシロベエに対して、シンゲンの尻尾は下げられている。

こちらからは確認できないが、おそらくシンゲンの尻尾は体の近くに引き寄せられていると思われ、これは相手に対する恐怖心や服従心の表れだ。


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と、ここで敵対心がないことをしめすために互いの鼻を近づけて相手の匂いを嗅ぐという、いわゆる『鼻キス』がおこなわれる。

予想外のなりゆきに私はちょっと驚いた。

シンゲンは思いがけないシロベエの出方にいくぶん緊張を緩めた様子だ。

がしかし‥‥。


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つぎの瞬間、シロベエはあたりに響きわたるひときわ大きな声を発してシンゲンを威圧した。

するとシンゲンはたちまち耳を寝かせ、姿勢を低くして防御態勢をとる。

シロベエがいつどこで習得したのか知らないが、この脅し方はきわめて実用的で効果的だな、と私は妙に感心した。


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なんとなれば間断なく威嚇しつづけるよりも、相手をいっとき安心させてから態度を豹変して脅せば、与える恐怖が増大するからだ。

それを証明するように、シロベエが甲高い唸り声をあげるたびにシンゲンは身体をこわばらせ、か細い哀訴の声をもらしている。


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ニンゲンの場合だって、体力的にも状況的にも絶対敵わない相手に脅しとすかしを巧妙に使い分けられたら失禁するほどびびってしまうだろう。

《剣呑、剣呑‥‥、シロベエみたいなニンゲンが周りにいなくてよかった》と私は思う。


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シンゲンは自分を卑小化させるために身体を縮めて地面に腹ばい、シロベエの顔色をうかがいながら哀しげな声をあげつづける。

「ボクはあたなに逆らいません。何故ならボクの身体はこんなに小さく力もないからです。だから許してください」とでも訴えているのだろうか?

だがあいにく私は “猫語があまり得意ではない” ので正確なところは分からない。

けれど言いまわしは違ったとしても、意味合いにおいてはおそらくそんなに大きく外れていない、と私は思っている。


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極度の緊張感に耐えられなくなったのだろう、シンゲンは逃げ去った。後ろも見ないでまさに脱兎のごとく走り去った。

シロベエはだから、シンゲンのそんな周章ぶりを見て目的を達成したと思ったのか、後を追おうとはしない。


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シロベエからあるていどの距離を確保し、いわば安全圏に移動したにもかかわらず、シンゲンは耳をやや外に向け、背中を湾曲させ、尻尾を力なく下に垂らしている。

この体勢を見れば分かるように、シンゲンはいまだ恐怖にとらわれているのだ。


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ふたりの隔たりはおおよそ10メートル、それだけ遠ざかってもシロベエはシンゲンから眼を逸らさず彼の挙動を注視しつづけている。


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前回の記事で述べたように、猫同士にも相性の良し悪しがある。ただシンゲンとシロベエの場合にかぎれば、シロベエが一方的にシンゲンを嫌っている印象をうける。

ただその要因は分からない。だから単純に「虫が好かない」とか「なんとなく嫌いだ」とかの理由にならない理由かもしれない、と私自身は感じている。


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ちなみに、猫の性格を決定するのは父親の遺伝子であり、それによって『豪胆・大胆』と『臆病・小心』に大別される、という説がある。

さてそれではシンゲンの性格はどちらに当てはまるのか、と考えてみたのだが‥‥、私には判断がつきかね、「どちらとも言えない」と答えるしかない。


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このエリアに現れた当初のシンゲンは強面ぶりをいかんなく発揮し、先述したようにほかの猫の食事を奪い取ったりする傍若無人な行動が目立っていた。


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また私に対しても敵意をあらわにし、悪鬼のごとき形相で凄んできたものだ。


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私はだから、この時点でシンゲンの性格は『豪胆・大胆』だと思っていた。


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ところがそれ以後のシンゲンはすっかりおとなしくなった‥‥、というか、シロベエによって手もなくはぎ取られた強がりの仮面は二度とかぶらなかった。


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だからシンゲンは外面的にいかつく見えても、実際は気弱で温順な猫なのかもしれない、と私は思っている。

それにもしかしたら、その上辺と中身の落差・ギャップが原因で、仲間から疎んじられて元の定住地を離れたのでは、とも思う。

そしてシロベエにいくら敵対視されようが、いまだにこのエリアで暮らしつづけているということは、以前いたところではもっとひどい目にあっていた可能性もある。


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それはともかく、久しぶりにシンゲンを見た私には少しばかり気がかりなことがある。

慧眼な読者のうちには、すでにお気づきの方もいらっしゃると思うが‥‥。

回想シーンに挿入した2年前の写真と比べて、現在のシンゲンはかなり痩せている。

もし別の場所でシンゲンと会っていたなら、同一猫とは思わなかったかもしれないほどの変わり様だ。


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猫が、それも野良猫が痩せるのはけっして良い兆候ではなく、栄養不良か罹患している可能性も考えられる。

ただ2年前のシンゲンはいささか太り気味だったので、今が標準体重だと言われれば納得はできる。


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シンゲンが草むらに姿を消したので後を追うのをあきらめてあたりを見まわしていた私の視界に、こちらへ向かってくるシロベエの姿が映った。

《ん、シンゲンを追ってきたのか‥‥?もしそうなら、なかなか用心深いやつだな》


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猫は縄張り意識の強い動物であり、その領域に侵入してくる者がいれば体を張って駆逐しようとする。

エリア生え抜きの海岸猫がすべていなくなった現在、シロベエにとってはエリアの中心にある駐車場が自分の縄張りであり、固守すべきパーソナルスペースなのだ。

だからその駐車場にシンゲンが舞い戻らないか確認するために、ここまで出張って来たのだろう。


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シロベエとシンゲンの力関係が逆転しないかぎりは、ふたりだけしかいないこのエリアにおけるシロベエの地歩は盤石に見えた。

シロベエ自身もそう思っていただろうし、少なくともこのときまでは私もそう信じていた。

ところが‥‥。


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その盤石に思えたシロベエのポジションをおびやかす者が、数日後に出現することになる。

それも思いがけないかたちで‥‥。



〈つづく〉



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往く者・来る者 (前編)

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ここ数年のあいだに海岸猫の数は激減している。

チビ太郎やビクのように死亡が確認できる猫は少数であり、大半はある日突然ゆくえ知れずになる。

その中にはあとから考えれば、というていどの体調の不良が認められる場合もあるが、多くの海岸猫はなんの前ぶれもなく忽然と姿を消してしまう。

仲間と暮らしている猫は体力の衰えを自覚すると、ほかの猫にいじめられるのを避けるために集団から離れていくという。

ビクの場合もHさんに保護されず人目につかない防砂林の奥でひっそりと死んでいたら、遺骸も発見できなかった可能性が高く、行方不明の海岸猫の中にはそのような最期をむかえたものも少なからずいると推測される。

ところが海岸を去る猫がいれば、『ニューカマー』でも紹介したように、いかなる経緯があるのか不明だが、あらたに海岸へやってくる猫もいる。


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私は久しぶりに『シシマルエリア』へ足を運んだ。

今年の春先に一度訪れているが、その際はごく短い滞在時間で終わったので、今回あらためて訪問しなおした。


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エサ場をのぞくと、見知らぬ猫が置き餌をむさぼるように食べている最中だった。


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私の気配に気づいたのか、見知らぬ猫は警戒心のこもった面持ちで振りかえる。


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が、よほど腹が減っているようで、すぐにべつの食器へ鼻先をつっこんだ。

シャム柄とサビ柄が混ざった被毛を持つことから、この猫は雌だと思われる。


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ふたたび振りかえったシャムMixに向かって、私は初見の猫に対してかならず言う言葉をかける。
「お前は誰だ?何処から来たんだ?」


だがシャムMixは視軸の定まらない目つきでこちらを見つめたまま、何も答えてくれない。


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よく見ると、この猫の眼はいわゆる『斜視』の状態を呈している。

『白目(眼球結膜)』がなく、『黒目(虹彩)』がほとんどをしめる猫の眼がそもそも斜視になるのか、といぶかる方もいらっしゃるだろう。

しかし猫にも斜視はあり、とくにシャム系は生まれつき『内斜視』が多い。※〔1〕

ニンゲンの斜視と症状が同じなら、遠近感がつかみにくかったり、ものが二重に見えたり、更には視力低下をまねくこともある。


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このシャムMixにそのような症状が表れているのかどうか、むろん私には分からない。


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食事を終えたシャムMixはためらいがちではあるが、迷いのない足どりで駐車場の奥へ歩を進める。


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ところがシャムMixはいきなり足を止めると、すばやく身体をひるがえした。


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どうやら車の修理をしているひとが立てた、比較的大きな音にびっくりしたようだ。


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シャムMixはそのまま後ろも振りかえらずに駐車場から足早に離れていく。


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このシャムMixとは今回が初対面だからはっきりしたことは言えないが、さきほどの狼狽ぶりを見ると、もしかしたらこのエリアに属していないのかもしれない、と私は思った。

近隣に自分のテリトリーを持っているのか、それとも流浪の身なのかは分からないけれど。


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しかしこのエリアに隣接して小さなエサ場あったのはずっと以前で、今現在常設のエサ場があるという話は耳にしていない。

ただシャムMixが国道の北側から出張ってきている可能性もなくはなく、もしそうであるのなら情報が入ってくるアテはない。


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どのような意図があるのか分からないが、シャムMixはときおりぴょんぴょん飛びはねながら走っていく。


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この特徴的な走りかたは斜視となんらかの因果関係があるのだろうか?


駐車場に戻ると、足場材の上でシロベエが香箱をつくっていた。

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エサ場に行く前に駐車場をひととおり見まわした際には気がつかなかった。

そのときは物陰に隠れていたのかしれないし、あるいは一時的に白いシートの保護色となって見のがしたのかもしれない。


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いずれにしろ私の存在は気づいているはずなのに、シロベエは耳をわずかに動かすだけで眼を閉じたままじっとしている。


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私がゆっくり近づいていくと、ようやく眼を開けた。


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しかしそれでもなお、シロベエは私を一顧だにしないで、あらぬ方向を見つめている。


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私が何度かシャッターを切ると、シロベエはおもむろに身体を起こして毛づくろいをはじめた。

このエリアも例にもれず、ここ数年で猫の数が激減し、いっときは10名以上もいたのに今ではシロベエのほかには2014年の春から住みついているシンゲンがいるだけだ。

その結果としてシロベエはこのエリアで最古参の海岸猫になったが、この猫の出自や海岸へ来た経緯は詳らかではない。


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シロベエが初めて海岸に姿を見せたのは2010年の初夏のことで、その頃のシロベエはどうして自分がこんなところにいるのかと、ひどく戸惑っているふうだった。

既に成猫だったことから、おそらくは酷薄な飼い主の手によって遺棄された、『捨て猫』だと思われる。


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シロベエが背後を振りかえったまま、いきなり “吠えた”。憤怒の形相を浮かべながら。


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静かな駐車場にシロベエの怒声がひときわ大きく響きわたる。


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シロベエの視線をたどって振りかえると、塀の上にシンゲンの姿があった。

春先にこのエリアを訪れたとき、シンゲンは姿を見せなかったので会うのは久しぶりだ。


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聴覚の優れた猫だからシロベエの声はとうぜん耳に入っているはずなのに、シンゲンは塀の上を悠然と歩いてくる。

この間もシロベエは叫び声を上げつづけている。


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シンゲンもここにきて、ようやくシロベエに呼応するように鳴き声を発した。

だがその声はシロベエのそれに比べて、いかにも小さく弱々しいものだった。


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シロベエは塀の上のシンゲンを凝視したまま間合いをつめていく。

シンゲンがこのエリアに現れた当初、ふたりのあいだに生まれた軋轢はその後も解消されずにしっかり継続されているようだ。

ニンゲン社会と同様、猫社会にもこれといった理由がないにもかかわらず「ウマが合わない」とか「肌が合わない」という間柄が存在している。

このふたりのように‥‥。



〈つづく〉



脚注
※〔1〕内斜視:目が内側に寄って、いわゆる寄り目になる症状。
    いっぽう片方の目が外側を向く症状を『外斜視』という。



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