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wabi

Author:wabi


治療の一環として始めた海岸散策
そこで知り合った海岸猫たちと交流を
深めるうちに彼らの魅力に心惹かれて
2009年10月に旧ブログを開設

そして2015年9月に当ブログへ移転

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侵入者 (中編)

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私が3度目にキジトラと会ったのは、夏がすぎ秋が日毎に深まっていく時節だった。

場所は以前とおなじリンエリアのエサ場。

ただし、キジトラの印象は前回と少しちがっていた‥‥。


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キジトラはエサ場のすぐそばで香箱をつくっている。

そして前回とおなじように私の顔をまっこうから見つめ返してくる。


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キジトラと私との隔たりは前回より更にちぢまり、3メートルほど。

しかしその表情からは驚きや怯え、戸惑いといった感情はうかがえない。少なくとも私の目には。


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そう感じるのは、間近にせまった冬に備えて自ら脂肪をたくわえているせいか、あるいはこのエリアの食料事情の良さのせいか、以前より身体がひとまわり大きくなり、顔もふっくらとして穏やかになったことが原因のひとつかもしれない。

けれど‥‥。


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以前のおどおどした態度が後退し、ふてぶてしささえ感じさせるキジトラのたたずまいを見た私は一抹の不安を覚えていた。



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防砂林からレンガ道にでたところで、こちらへ向かってくるリンとサキに出くわした。

母を先導しているサキは私のすぐわきを足早に通りすぎていった。


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とくにこれといった目的がないのか、リンは周囲を見まわしながらのんびりとした足取りで歩いてくる。

することがないから取りあえず娘のあとについていくだけ、といった印象を受ける。


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「リン、どこへ行くんだ?」私がそう尋ねても、リンは私を一顧だにしないで目の前を横切っていった。

「いつもならすり寄って歓待してくれるのに、今日はずいぶんつれないな」


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リンとサキはエサ場とは逆の方角へ向かっている。

もしかしたらふたりはキジトラの姿を目撃し、それで彼を忌避してエサ場からはなれようとしているのかもしれない、と私はそんな想像を働かせた。


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それというのもこの時期、エサ場近くでリンとサキの名を呼んでも姿を見せないことが多いからだ。

そしてふたりを捜してエリアを歩いていると、エサ場から遠くはなれた防砂林で彼女らを発見する機会が増えていた。


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私があとを付いてくるのに気がついたのだろう、リンはふいに立ちとまると私の方をふり返った。

「ついてくるなら早く来なさい」とでも態度でしめしているのだろうか。


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しばらくすると、リンは前に向き直りサキのあとを追いはじめる。

私もすぐにふたりのあとを追ってレンガ道を進んでいった。


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リンとサキはそれから踏み分け道をつかって防砂林のなかへ足を踏み入れた。

そしてリンが立ちどまると、先行していたサキが引き返してきて、母にならって防砂林の一画を見つめはじめる。


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しばらくは母のそばにいたサキだったが、やがてきびすを返すとひとりで防砂林の奥へ向かっていった。


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だがリンは踏み分け道に座って防砂林の一画を凝視したまま動こうとしない。

いったい何を見つめているのか私も気になり、リンの視線の注がれているあたりをうかがってみたが、とくに変わった物は目につかなかった。


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おそらくリンは視力にたよることなく、猫の五感のなかでもっとも感度が優れている聴力で何かを感知しているのだろう。

猫の聴力はとりわけ高周波の音を聴きわける能力に長けていて、犬の可聴域が40~65000ヘルツなのに対して猫の可聴域は25~75000ヘルツにもおよぶ。


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リンは突然身体を起こすと、サキが向かった逆の方向、つまりさっき来た道をひき返しはじめた。


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リンは脇目もふらず、立ちどまることもなく、しっかりとした足取りで歩いていく。

サキとリンのどちらについていくか、私は踏み分け道にたたずんでしばし考えたが、結局リンのあとを追うことにした。


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すると母の動向をうかがっていたのだろう、サキもリンのあとを追ってレンガ道にでてきた。

リンは相変わらず前を見つめたまま迷いのない足運びでレンガ道を進んでいく。


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いっぽうのサキはやや戸惑い気味に歩を運んでいる。

母がどこへ向かっているのか、どうやらサキにはまだ理解できていないようだ。


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母に置いてきぼりにされるのが嫌なのか、サキはいきなり走りだした。


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成長するにしたがい単独行動が多くなったとはいえ、やはりサキは母のことを頼りにし慕っていることがよくわかる。


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リンたちに導かれてべつの区画の防砂林に入っていくと、そこにボランティアの宮本さんがいた。

「なるほど、そういうことだったのか」今しがたリンがとっていた不可解な行動の理由がこれでわかった。


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リンは樹木ごしに宮本さんの気配を察知して、それでさっきあれほど執拗に防砂林の一画を見つめていたのだ。

私の見当だと、リンが座っていた位置からこの場所までの方角とリンの視線はほぼ一致している。


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食事の用意をはじめた宮本さんを前に、リンは行儀よく腰をおろして待っているのに若いサキはそわそわと落ちつかない。


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私はふと感じた疑問を宮本さんにそのまま投げかけてみた。

「どうしてエサ場ではなく、こんなところでふたりに食事を与えるのですか?」と。


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すると宮本さんは言った。「キジトラがエリアに来はじめてからはリンとサキがエサ場に寄りつかなくなったので仕方なくここでやっているんです」

更にせっかくの猫ハウスも使わずにふたりはべつのところで寝ている、と言う。


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どうやら私の心配していたことが既に現実となっているようだ。

そもそもの発端は異なっているけれど、いわゆる『庇を貸して母屋を取られる』状態にリンとサキは陥っているのだ。


私は宮本さんにキジトラがエサ場にいることを話した。

それを聞いた宮本さんはリンとサキに食事を与え終えると、エサ場へ向かった。


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宮本さんが海岸に来ていることを知っていたのか、キジトラはさっきとおなじ場所におなじ姿勢で待っていた。

そして宮本さんが食器にキャットフードを盛ると、キジトラはすぐに “食卓” に跳びのった。


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前回私が猫缶を与えたときと同様に、キジトラからは飢餓感というものがまったくといっていいほど見受けられない。

まだ馴染みのない私が目の前にいる状況であっても、少しも慌てずに一口ひとくちキャットフードを賞味している。


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その様子を見ているうちに、以前にも感じた疑念が私の頭にふたたび浮かんできた。

「この子はここにあらわれる前にどこでどんな暮らしをしていたのだろう?」


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ニンゲンをあまり怖がらない、そしておっとりとした食事の仕方、これらのキジトラのふるまいは生存競争のきびしい環境にいる野良猫のそれとは明らかにちがっている。

たとえ野良猫であったとしても、誰かの手厚い世話を受けていたと思われた。


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そうなると、野良猫としては比較的恵まれた環境にいたキジトラがなぜ、命を賭してまで危険な国道をわたって海岸へ来る必要があったのかという、おおきな疑問がのこる。

だから、酷薄な飼い主によって海岸へ遺棄された “捨て猫” の可能性も現状では否定できない。


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そこへたまたまボランティアの松田さん、そしてやはり海岸猫を通じて知り合った堺さん(仮名)がエサ場に相ついでやってきた。

やがて話題の中心は、キジトラの出現によってリンとサキのふたりがエサ場に寄りつかなくなったことへと、自然に移っていった。


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それから皆でキジトラのあつかいについて話し合ったが、リンとサキのためとはいえキジトラを追い出すわけにもいかず、しばらくのあいだは静観するしかないという結論におちつき解散した。

私はひとり残ってしばらく海岸猫たちの様子を見ることにする。


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リンとサキはエサ場に隣接する場所まで戻ってきていたが、やはりキジトラがいるエサ場には近づこうとしない。


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おそらく若いサキはリンよりキジトラを警戒し、そして不安を感じているはず。

このいきなりの “ヘソ天ローリング” ※〔1〕も、その不安をまぎらわすための転位行動のなせる業なのかもしれない。


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それともただ母にかまってもらいたい気持ちをあらわしているだけなのか?

というのも、先ほども同じ印象をうけたが、今日のサキはリンから離れようとせず常に行動をともにしているからだ。


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いずれにしろ、キジトラが突然自分たちのエリアにあらわれたことへの怖れや戸惑いが、サキの精神になんらかの影響を与えているのは確かだろう。


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猫はときおりニンゲンには理解できない奇妙かつ突飛な行為を見せることがある。

リンのとった行動は、サキのヘソ天ローリングよりも更にこの場にそぐわない不可解なものだった。


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頭頂部を地面に押しつけたリンはそのまま頭を左右にぐるぐると回転しはじめた。

リンはもちろんだが、ほかの猫でもこのような動作をするところを私は今まで目にしたことがない。


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そしてそのまま頭を回転させながらしだいに上体を起こしていく。


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まるでブレイクダンスの回転系の技、たとえば『ヘッドスピン』とか『ウィンドミル』などに挑戦し、途中でやめたようなイメージ、とでも言えばいいのだろうか。

私は思わず「何をしようとしたんだリンは?」と言いながら首をひねった。


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が、当のほんにんは何ごともなかったように、平素の表情をして前方を見つめはじめる。

ヘッドスピンする猫、そんな猫が本当にいたらさぞ話題になるだろうな、なんてくだらない想像が私の脳裏をかすめた。


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閑話休題。

海辺の道路を往来するひとを見つめるリンの脳裏にいったい何が去来しているのか、私には想像するしかないけれど‥‥。


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エサ場をキジトラに占拠され、エサ場に戻りたくても戻れない状況にリンとしても内心穏やかではないはずだ。

だからもしかしたら先ほどのブレイクダンスもどきの奇妙な動きをしたのも、その心理が表出した結果かもしれない。


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リンのわきをサキが通りすぎていく。

それも母の関心をひくつもりなのか、リンの鼻先をかすめるように横切る。


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大きな歩幅で砂山を悠然とおりていったサキだったが、道路近くまで来たところで突然目を見張り歩みをとめた。


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つぎの瞬間、サキは慌てた様子で身をひるがえす。


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サキはそれから砂山を小走りでのぼり、元いた場所へ戻ってきた。


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そしてしかめっ面で道路の先を見つめながら舌なめずりをする。

まるで不味いものでも口にしたかのように。


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振りかえると、飼い主に連れられた黒い犬が道路を通りすぎていくのが見えた。


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サキが道路にでて何をしようとしたのかは知るよしもないが、散歩中の犬が通っただけでやめてしまうくらいだから大したことではないはずだ。

唐突にグルーミングをはじめたサキ。おそらく気散じのためにやっているのだろう。


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サキの背後、灌木のわきに座っていたリンが突然上体をかがめて身構えた。

今度は防砂林の奥から散歩中の犬でもやって来たのだろうか?


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サキも気配を察知したのか、リンに近づくとぴたりと寄り添った。

リンはそんなサキには一顧も与えず、防砂林の方を凝視したまま身じろぎしない。


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しかしサキにはリンのような緊張感は微塵もなく、リンのとなりで毛づくろいをはじめた。

どうやらサキは何かを感知したわけではなく、ただ母のそばに近寄りたかっただけのようだ。


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私は砂山の反対側へ行き周囲を見まわしてみたが、人の姿も犬の姿も確認できなかった。

リンはいったい何に対してこれほど鋭い視線を送りつづけているのだろう?


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「そうか!」ここにきて私にもようやく理解できた。リンが何を見つめているのかが。

リンの視線は最初から防砂ネットを通して隣接するエサ場にまっすぐ向けられていた。


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そして、そこにはキジトラがいる。


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数ヵ月前からリンエリアのエサ場に姿を見せはじめた正体不明のキジトラ。

宮本さんたちの話では、そのキジトラのせいでリンとサキはエサ場に寄りつかなくなった。


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これまで母娘ふたりで比較的穏やかに暮らしてきたリンとサキにとって、このキジトラの存在は頭上に垂れこめた暗雲のようなものかもしれない。

エサ場を追われ、ねぐらを失ったリンとサキの生活が今後どうなっていくのか、いましばらく見守っていく必要がありそうだ。



〈つづく〉



脚注
※〔1〕『ヘソ天ローリング』ヘソ天状態で身体を左右にゆする行為。管理人による造語。



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侵入者 (前編)

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私がそのキジトラとリンエリアのエサ場で初めて会ったのは2017年の夏だった。

ただし当日はカメラを持たない本来の散歩のために海岸へ行ったので撮影はしていない。

そしてそれ以後は姿を見かけなかったから、たまたま通りかかっただけなのだろうと思っていた。

ところがそれから1ヵ月後、そのキジトラとまた同じ場所で再会した。


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キジトラは木の根元で香箱をつくり、私の顔をまっこうから見つめてくる。

私とそのキジトラとの間隔はおおよそ4メートル。


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この4メートルという間合いは、いきなりあらわれた私を警戒し逃げだしてもおかしくない距離だ。

キジトラは知っているのだ。背後の灌木の茂みに逃げこめばニンゲンが容易に追ってこられないことを。


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これまで海岸では見たことのない顔なので、おそらくは街から流れてきたのだろう。

そしてここなら食べ物が手に入ることを知って、ときおりやってくるようになったと思われる。


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香箱をつくったまま目を閉じて、一見リラックスしているように見えるキジトラ。

ところが私が片足をほんの少し、20センチほど前にだすと‥‥。


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キジトラはそのかすかな物音に鋭く反応し、より安全な木の向こうがわへすばやく移動した。

予想したように、キジトラは姿勢とは裏腹に私への警戒をゆるめてなどいなかったのだ。


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馴染みのない私だからなのか、それともすべてのニンゲンを警戒しているのか‥‥?

それはこの子がこれまでに暮らしてきた環境や状況が判明すればあるていどは推測できるのだが、今の段階ではなんともいえない。


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「お前はどこから来たんだ? 今まで誰かの世話を受けていたのか?」と私はキジトラに訊いてみた。

しかし、私と目を合わせたくないのか、あらぬ方向を見つめたまま何も答えてくれない。


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顔を横に向けているが、よく見ると猫の感覚器官のなかでもっとも鋭敏な耳はしっかりと私の方へむけられている。

「この用心深さ、やはりこのキジトラは街から流れてきた “野良猫” の可能性が高そうだ」


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この子に関して今わかっているのは、男子で、まだ去勢手術を受けていないことくらいである。

そしてそのほかのこと、たとえば出自や年齢などはよほどの偶然でもないかぎりおそらく永遠にわからないままだろう。

これまでに海岸へ流れてきた街猫たちと同じように。

* * *

これはまた別の日の夕刻。

リンとサキが揃ってエサ場へ引きあげてきたときだった。


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最初に気づいたのはリンで、突然立ちどまるとゆっくりその場に座りこんだ。

やがてサキも歩みをとめ、灌木の茂みのなかを注視しはじめる。


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リンは灌木の奥を見つめたまま身じろぎしない。


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サキは姿勢を低くし、慎重な足運びで灌木の茂みへ近づいていく。


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ふたりの視線の先、灌木の奥にはあのキジトラがいた。

そこはエサ場の裏にあたり、リンたちのねぐらからもあまりはなれていない。


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リンエリアを担当するボランティアの人たちが海岸猫に食事をあたえるのはたいてい早朝だけで、この時刻にやってくることはあまりない。

ここに何度かかよっているキジトラならそのことはすでに知っていると思うのだが。


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こうしてこの場所にいるのは無駄になることを覚悟で、たまにやってくるボランティアさんを待っているのか、それとも私などには思いもつかないべつの目的があってのことなのだろうか。


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おそらくこれまでに私よりもたくさんこのキジトラの姿を見ているはずであろうサキ。

私の目には、そのサキの表情がなんとなく不安そうに映る。


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キジトラの出現で張りつめてしまったこの場の雰囲気をやわらげるためもあって、私は持参してきた猫缶をふたりに与えた。


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もちろんキジトラの分も忘れずに。


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そのキジトラは猫缶の匂いに誘われて灌木のなかからでてきたが、彼なりの基準であろう距離をたもったまま、それ以上は近づいてこない。

そして私ではなく、猫缶をほお張るリンとサキの様子をじっと見つめている。


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リンとサキもやはりその存在が気になるのだろう、ときおり食事を中断してキジトラに視線を送る。


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ふたりの視線がけん制としての効果を発揮しているのか、キジトラは私が遠くにはなれてもトレイに近づこうとしない。


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そこで私はゆっくりとキジトラのほうへ歩み寄っていき、トレイを彼の近くに運びながらできるだけ穏やかな声で話しかけた。

「腹は減っていないのか。減っていたら遠慮しないでこの猫缶を食べていいんだよ」


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すると私の言ったことを理解したのか、あるいはトレイが自分のそばに置かれたのを見たからか、キジトラはやおら身体を起こし慎重に歩をはこぶと、猫缶にそっと口をつけた。


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その食し方からは野良猫にありがちながっついた様子が感じられず、猫缶を味わうようにゆっくりと咀嚼している。


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気配を感じたのか、サキが首をあげてそんなキジトラに視線を投げかける。


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が、すぐに視線をトレイに戻し、ふたたび食べることに専念しはじめた。


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ボランティアさんから毎日不足なく食事を与えられているサキの方が、よそ者のキジトラより貪欲に猫缶を食べている。


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リンはというと、もうキジトラの動向など気にとめることなく、あくまでマイペースで猫缶を食べつづける。


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キジトラは相変わらず食事を愉しんでいる風で、私が近づいても逃げる気配を見せない。

「この子はどこでどんな生活をしていたんだろう。去勢手術を受けていないからいう理由だけでは地域猫や飼い猫だった可能性を否定できないな」

キジトラの悠然とした態度を目の当たりにして、私はあらためてそんなことを考えていた。


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食事を終えたリンとサキは揃って前方を見据えたまま身じろぎしなくなった。


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ふたりの視線をたどると、エサ場の奥へ身を隠したキジトラがいた。

どうやらリンとサキの気配を察知して食事を途中でやめたようだ。


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ニンゲンの私よりおなじ境遇におかれた野良猫のリンとサキを用心しているのか‥‥?

この子の生い立ちがますますわからなくなる。


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リンとサキはさっきよりキジトラから距離をとったが、視線はキジトラからそらそうとしない。

ふたりからしてみてもキジトラは警戒すべき相手なのだ。


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若いサキはキジトラと対峙するのがさすがに不安になったのか、おもむろに起きあがると母の後ろに移動した。


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やはり空腹だったのだろう、キジトラはまたトレイのところへ戻って猫缶を食べはじめている。


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そうしてようやく満腹になったのか、キジトラは猫缶を少し残してトレイからはなれていった。


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流れ者の野良猫は腹が満たされると、たいていその場から去っていくのだが、このキジトラはエサ場の近くに腰をおろした。

「帰るところがないのだろうか、それともここがよほど気に入ったのだろうか?」


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リンとサキはエサ場から少しはなれたところへ移動し、灌木の茂みをとおしてキジトラの動きを観察している。

おそらくはキジトラがエリアにあらわれるたびに、ふたりはこうして慎重に距離をとって警戒しつづけていたのだろう。


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キジトラが姿を見せる頻度がどれくらいなのか私にはわからないが、家族としか暮らしたことのないリンとサキにとってはさぞ気疲れする出来事だと想像される。


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やがて実際にキジトラを警戒するのに疲れたのか、それともただ単に飽いたのか、サキはエサ場のある区画から歩き去っていった。


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だがリンは立ち去る気など毛頭ないようで、灌木のなかを凝視したまま微動だにしない。

自分たちのエサ場にほかの猫が居座っている事実を、彼女としては受け容れられないのかもしれない。


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リンは灌木の茂みに向けた視軸をゆっくりと移動させている。

キジトラが何をするのか一瞬たりとも見逃すまいと、その動きを目で追っているのだろう。


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だから敢えてふり返らなくても、キジトラがどのあたりにいるのか、リンの目の動きを見ていれば手に取るようにわかる。


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試しにリンの視線をたどっていくと、果たしてそこにキジトラがいた。


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キジトラはエサ場からはなれて灌木の茂みの奥へ進み、そして一本の木の根元にうずくまった。


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それを見とどけたリンの眼光はやわらぐどころか、更に鋭くなったように私には感じられる。

やはり自分たちのエリア、それもその中枢にあたるエサ場を我が物顔で動きまわるキジトラの存在を容認できないのだろう。

エリアのリーダーとして、また母として。

リン母娘と侵入者のキジトラ、今後この海岸猫たちの関係はどういう展開を見せるのか、私自身も気になっている。



〈つづく〉



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好奇心 (後編 3)

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ホイールローダーのエンジンルームにもぐり込んだサキ。

リンは散歩中の小型犬に恐れをなして防砂林のなかへ逃げ去ってしまったので、私はその場にとどまることにした。


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サキがホイールローダーのエンジンルームにもぐり込んでから数分が経った。

ここに至って私はサキのことを本気で心配しはじめていた。

入ったはいいが、そこから外に出られなくなったのではと思って。


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床部分のわずかな隙間からは相変わらずサキの身体の一部が見え隠れしている。

興味にかられてエンジンルームを探索しているのか、それともそこから抜け出す手段を懸命に模索しているのか、私には判断がつかない。


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「おいサキ、大丈夫か? 」と言いながら私は試しに運転席の床を手のひらで叩いてみたが、ホイールローダー相手では日産自動車が提唱している『#猫バンバン』のようにはいかない。

トントンという小さく乾いた音がするだけで、これではなんの効果もないだろう。


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というわけで、私はなす術もなくひきつづきホイールローダーのそばでたたずんでいるしかなかった。


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私が何気なくあたりに視線をめぐらせると、道路端でぽつねんとしているリンの姿を発見した。

リンは比較的安全な防砂林のなかから人目につく道路にあえて戻ってきたのだ。

「いったい何のために‥‥?」


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そしてホイールローダーを凝視しながら、リンはゆっくりと一歩を踏みだした。

リンは明らかにためらい葛藤している。このままホイールローダーに近づいていいものか、と。


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やがて心を定めたのか、ゆっくりと慎重な足どりではあるが、リンはホイールローダーへ向かって歩を進めはじめた。


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それからリンはホイールローダーの下へもぐり込むと、厳しい表情でうずくまった。

リンはなぜ、多くのニンゲンと苦手とする犬も往来する道路をとおってまで引き返してきたのだろう?

ホイールローダーへの興味を捨てきれずに、それでまた戻ってきたのだろうか?


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ホイールローダーを見あげるリンの表情はなにかなし不安げに私の目には映る。

その様子からリン自身のホイールローダーへの関心はあらかた消え失せているように感じた。


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「そうか‥‥」このとき、リンがふたたびここへ戻ってきた訳を私はようやく理解した。

リンはなかなか防砂林へ帰ってこない娘のサキのことが気がかりで、それで危険をかえりみず引き返してきたのだ、と。


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しかし母の心配をよそに、サキはエンジンルームからいっこうに出てこようとしない。

だが鳴き声もあげず、あせった様子もみられないことから、どうやらサキはエンジンルームに閉じ込められた訳ではなさそうだ。


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待つのにしびれを切らしたのか、やがてリンはやおら腰をあげると、サキがこもっているエンジン部分の真下までやってきた。


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そして先刻と同じようにエンジンルームに頭を突っこんだ。

だがリンがサキの姿を認めたのかどうか、私の位置からは分からない。


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そうしてしばらくエンジンルームをのぞいていたリンだったが、あたふたとその場から離れた。


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するとそのとき、私の視界の片隅、足元のあたりを小さな影が駆け抜けていった。

急いで振りかえると、それはサキだった。


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リンがエンジンルームから出てくるようにうながし、それにサキがしたがったのか、それともただ何かに驚いただけなのか知る由もないが、いずれにしろサキの姿を確認できて私は安堵した。

やはりサキはホイールローダーから出られなくて当惑したり恐慌をきたしていたわけではなかったのだ。


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一方ひとりホイールローダーに残されたリンは身じろぎせずに険しい面持ちで何かを見つめはじめる。

だがその視線が注がれているのは娘ではなく、道路のずっと先の方だ。


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身体の位置をかえて更に真剣な眼差しで前方を凝視するリン。


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やがてリンはおもむろに身をひるがえし、そして‥‥。


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ホイールローダーの車体の下から飛び出ると、いきなり走りはじめる。


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その反応からあえて確かめる必要もないのだが、ふり返ってみると案の定、散歩中の犬がこちらに向かってきていた。


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先ほどのシーンを再現するように、リンは防砂柵の上へ一気にかけあがった。


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「お前はよほど犬が苦手なようだが、過去に嫌な目にあったことでもあるのか? 」と私は訊いてみた。


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しかしリンは柵の上からあたりを眺めるばかりで、私の問いかけにはいっさい答えてくれない。

ただ気丈夫なリンがここまで忌避するのだから、やはり犬に関してはよほど怖い目にあったと推測するしかない。


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それでも引き返してきたところをみると、娘のサキがやはり心配だったのだろう。

リンとサキがことさら仲のいい母娘であることを差し引いても、猫にもニンゲンと同じように親子の情がある、と私は思っている。

猫は情が薄い動物などと巷間言われているが、その認識は我々の一方的で皮相的な思いこみだと私は信じて疑わない。


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ひとしきり周囲を見まわしていたリンだったが、柵の上で器用に身体を反転させると防砂林のなかへ入っていった。


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それから2、3分経っただろうか、リンもサキもいなくなったので私も防砂林へ戻ることにした。

と、そのときだった。


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さっきは砂浜にいたはずのサキがリンと入れ替わるかたちで柵の上にひょっこりと姿をあらわしたのは。


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彼女が視線を注いでいるのはホイールローダーだ。

サキはまだホイールローダーに興味を示しているのだろうか‥‥?


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やがてサキは視線をあげると、今度は眼前にひろがる太平洋を眺めはじめる。

猫にとってはただの “大きな水溜り” であるはずの海を‥‥。


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そしてつぎにサキは陽が沈んだばかりの西の空を見つめはじめた。


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ひとしきり海を見渡し、それから朱に染まる西の空を見やる、まるで海岸に来た多くのニンゲンが風景を眺める過程をなぞっているかのようだ。


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野良猫の母から生まれ野良猫として育ったサキ。

だからここから眺望できる範囲がサキの “全世界” である。


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とはいっても、サキが実際に行動するのはエサ場を中心とした半径200メートルほどの領域に限られている。

そんなサキが海岸から離れたのは避妊手術をうけるために動物病院へ搬送されたただその1回きりだ。


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同じ日に生まれたふたりのきょうだいたちは里親さんに保護され海岸から去ったと聞いている。

ボランティアさんたちのお陰もあってすっかり穏やかで人懐こくなったサキだから、彼女だって家猫になれる資質は十分にある、と私は思っている。


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サキは何かを発見したようにいきなり目を見開いた。


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そしてつぎの瞬間、慌てふためいた様子で柵から駆け下りる。


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道路に降り立ったサキはゆっくりとした足どりで歩いていく。

その先には、やはりこちらに向かって緩やかな歩調で近づいてくるリンの姿があった。


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サキはやがて甘えた鳴き声をあげはじめる。

それは迷子になったニンゲンの子供が母親の姿をみつけて甘え泣きをしながら駆け寄っていくさまを彷彿とさせる。


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サキはなおも哀しげで甘えた鳴き声を発しながらリンに近づいていく。

いったいどういう訳なんだろう、ふたりは防砂林のなかで会っていなかったということなのか?


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リンとサキの様子からは久しく会っていなかった母娘が再会を喜んでいる雰囲気が伝わってくる。

もしかしたらふたりはサキがホイールローダーのエンジンルームにもぐり込んで以来顔を合わせていなかったのかもしれない。

その可能性は十分にありえる。


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リンは散歩中の犬の接近に気をとられサキがホイールローダーから出てきたことを知らず、またサキはリンが防砂林に戻ったことに気づかず、すれ違うかたちでふたたび道路に戻ってきたのではないだろうか。

そう考えると感動の再会シーンも納得できる。


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なんにせよ、リンとサキの身に何ごとも起こらなくて良かった。

私は猫が好奇心の強い動物だということを再認識するとともに、リンとサキには野良猫という境遇を自覚して人目につく行動を極力ひかえてほしいと切に願っている。


ちなみにイギリスにはこういう諺がある。

『好奇心は猫を殺す』。

とはいっても当然のことながら、この諺は猫に対する箴言ではなく、あくまでも我々ニンゲンへの戒めの言葉である。

ただイギリスの伝承を知らないと、この諺の本当の意味を日本人は理解できない。

イギリスでは古来から猫は容易に死なない生き物とされ、『猫は九生あり(猫は九つの命を持つ)』などと言われている。

つまりそんな猫でさえ好奇心のかられるままに行動すれば命を落としかねないのだから、ニンゲンならなおのこと剣呑だと苦言を呈しているのだ。

皆さまも好奇心に誘われるまま無闇やたらにどこへでも首を突っこんでいては、いずれ予想もしない危殆に瀕することもありえるので、くれぐれも自制していただきたい。



〈了〉



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好奇心 (後編 2)

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私はすぐさまリンのあとを追った。

だが私はリンのように柵を乗り越えられないので、大きく迂回しなければならない。

そうして足早に迂回路を進みながら私は考えていた、どうしてこの日に限ってリンは人目につく行動をするのだろう、と。

さきほどのエリアの境界線越えを先導したのは娘のサキだったが、今回はリンが先陣をきった。

やはり猫も我々ニンゲンと同じように退屈していて、だからときに向こう見ずなことをして日頃の無聊を慰めるのではないだろうか。

好奇心に衝き動かされるままに。


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防砂柵の海側にまわってみると、リン本人はのんびりと寝転がっていた。

私はその様子を見て、安心するとともにちょっと拍子抜けした。


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やがてリンはおもむろに起きあがると、姿勢を低くし慎重な足どりで柵に沿って歩きはじめた。

海側からは遮るものもない人目につく場所に自分がいることはリンも十分に認識しているようだ。


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そしてリンが防砂柵の隙間をのぞいたつぎの瞬間だった。


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母のことが気になってあとを追ってきたのか、それとも自分も海が見たいと思ったのか、サキが柵の上にいきなり姿をあらわしたのは。


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サキは柵の上から眼前に広がる海を見つめる。


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見開いた目には好奇の色がうかがえる。

まるで生まれて初めて海を目にした幼子が見せる感嘆の表情ともどこか似ている気がした。


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サキはそれからも柵の上から身動きしないで海に見入っている。

サキが海を見るのは今回が初めてなのかもしれないという、私がいだいた印象は的外れではなかったのかと、あらためて感じさせるほど彼女は憑かれたように海を眺めつづける。


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だが海辺で暮らす『海岸猫』がこれまで海を見ていないなんて‥‥、果たしてそんなことがありえるのだろうか?

ただ可能性としては、いままでちらりと視野の隅にとらえることはあっても、見晴らしのいい場所からぞんぶんに海を眺める機会がなかったということは考えられる。

そうとでも考えないとサキの熱中ぶりの説明がつかない。


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考えてみれば、視覚や聴覚や臭覚が漫然ととらえているだけでは認識できない、という経験を私自身いくどもしている。

たとえば夜空にまたたく星ぼし、路傍に咲くちいさな花、梢を飛び交う小鳥のさえずり、風に運ばれてくる四季折々の匂いなど、意識しないと自分の身体をただとおり抜けてゆく事象はたくさんある。


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サキが心を奪われたように海を眺めているときも、リンは周りへの警戒を怠っていない。

リンが警戒のこもった視線を送ったのは、直後に私も確認したが、飼い主に連れられて砂浜を散歩中の小型犬だった。

海岸に暮らして久しいリンは防砂林の外がどれほど危険かを承知しているのだろう。


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そんなリンの心中を知ってか知らでか、サキは柵から下りるといきなり寝転がって甘える仕草を見せる。


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そしてサキの前足がリンの身体に軽く触れたときだった。


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リンはふり向きざまに耳を倒して険しい表情をつくり、サキに覆いかぶさってきた。

じゃれ合うときとは違ういくぶん本気がかった母の剣幕に、サキが驚きたじろいでいるのが見てとれる。


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サキはあわてて起きあがると、姿勢を低くし足早にその場を離れていく。


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予想もしていなかった母の怒りに気圧されてここまで来たものの、サキはこれといってやることがないという風で、柵のそばで身じろぎもしないでたたずんでいる。

そのサキの背後からリンがゆったりとした歩調で近づいてきた。


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母の接近に気づいたサキは後ろをふり向いてリンと対峙する。

そしてさっきのリンの怒りが本気かどうかを確かめるつもりなのか、背を丸めたいくぶん好戦的なポーズをとった。


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が、リンはそんな娘に鋭い眼光を投げかけて制すると、ふたたび悠然とした足どりで歩を運びはじめる。


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サキはとっさにとった母への反抗的な態度をとりつくろうつもりなのか、転位行動と思われる毛づくろいをしだした。


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しっかりと前を見据えてためらいのない足運びでこちらに向かってくるリン。

まるでこれからやることがすでに決まっているかのような確信にみちた歩き方だ。


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「リン、いったいどこへ行くつもりなんだ? 」と訊いてみたが、リンは黙して何も答えてくれない。


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それどころか私の疑念を嘲弄するようにリンは立ち止まりもせず、その後も大きな歩幅で進みつづける。

私の内にはいつしか疑念に加えて危惧の念が浮上してきた。

なんとなれば、リンが向かっているのは比較的多くのひとが往来する一画だからだ。


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やがて防砂柵の終わりに近づくと姿勢を低くし、歩調もやや速めて柵に身体を寄せる。

リンは彼女なりに警戒している、私はリンの行動を見てそう感じた。


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防砂柵の端から顔だけを出して道路を往来するニンゲンの様子を注視するリン。

どうやら自分の向かう先にはニンゲンがたくさんいるということはリンも十分理解しているようだ。

「それにしても‥‥」私の胸中にさっきまで感じていた不審の念が再度わきあがってくる。

人目を警戒し柵に貼りつくようにしてまで、リンはどこへ何をしに行くつもりなのだろう、と。


リンの目的はすぐに判明した。




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リンの好奇心をかき立てたのはまたしても『重機』だった。


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今度は小型の『ホイールローダー』。

先刻のショベルカーといい、今回のホイールローダーといい、リンは重機にことさら興味があるのだろうか?

それとも乗り物一般に興味をおぼえるのだろうか‥‥?


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そこへ遅れてサキもやってきて、ホイールローダーを興味深そうに見あげる。


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サキはそれからリンと並んでホイールローダーのエンジン部分に頭を突っこんだ。

母に劣らず、いやむしろ母よりもサキの方が好奇心自体は旺盛なのかもしれない。


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それを証明するかのようにサキはリンを押しのけるかたちでエンジン部分を仔細に探索しはじめた。


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そしてついにはシャフトを足がかりにして、サキはホイールローダーの内部へもぐり込んだ。

リンは道路の先を見つめたまま動きをとめると、目を見張る。

と、つぎの瞬間‥‥。


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リンは脱兎のごとく駆けだすと道路と防砂林を隔てている防砂柵へ跳びついた。


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そしてそのまま柵の上まで一気によじ登る。

リンをかかる行動に駆り立てたのは飼い主と一緒に近づいてきた小型犬だった。

どうやらリンはよほど犬が苦手なようだ。

もしかしたら犬に関してトラウマとなる出来事が過去においてあったのかもしれないな、と私は思った。


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それからリンは柵の上をつたっていき、やがて柵の向こうがわ、防砂林のなかへ姿を消した。


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サキはどうしたのだろう、リンと同じように逃げてしまったのだろうかと、ホイールローダーのところへ戻ってみた。


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すると運転席の床部分のわずかな隙間に動くものを認めたので、更に近づいてみると “サキの瞳” がそこにあった。


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リンもいなくなったことだし、サキもじきに飽いて這い出てくるだろうと、しばらく待ってみたが、いっこうに姿をあらわさない。

まさかとは思うが‥‥、もぐり込んだはいいが出てこられないってことなのか? 

いずれにしてもこのまま放っておくわけにもいかないので、私はホイールローダーのそばで待機することにした。



〈つづく〉



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好奇心 (後編 1)

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リンとサキは勝手知ったる自分たちのエリアに戻ってきた。

サキがエリアの境界線を越えてからここまでおおよそ15分が経っている。

たいした時間ではないけれど、ふたりにとっては日頃は経験できない貴重で意義あるひとときだったのかもしれない。

ふたりの行動を見ていた私自身はいささか気をもまされたが。


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防砂林の奥にある、いまはもう誰も利用しなくなったベンチにリンとサキはとりあえず落ちついた。

ニンゲンがやってこないこの場所は、ふたりにとってはお気に入りスポットなのだろう。


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そしてふたりそろってベンチの上でグルーミングをはじめた。


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それも同じ姿勢で同じ部位をグルーミングするという、見事なシンクロ状態で。

こういうのを『阿吽の呼吸』とか『以心伝心』とかいうのだろう。

これまで数組の海岸猫の親子を見てきたが、これほど仲のいい親子はめずらしい。


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グルーミングを終えたサキはベンチから跳び下りると、早足で踏み分けを歩いていく。

そのまま数メートルほど進めば、先ほど越えたばかりのエリアの境界線がある。

サキはふたたび境界線を越えようとしているのか?


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けれど私の懸念は思いすごしだった。

サキは踏み分け道のわきにある松の木にひらりと跳び乗った。

こういう場面を目にするたびに、猫の身体能力、とりわけ跳躍力にはほとほと感心する。

このときもサキは助走もせずに1メートルあまりジャンプした。


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猫は自分の身長の5倍ほどの高さまで跳び上がれる。

健康で標準的な体型の成猫の場合、その高さは1.5メートルほどになる。(なかには2メートルもジャンプする猫もいるそうだ)

ちなみにこの数値を身長170センチのニンゲンにおきかえると、8.5メートルもの高さになり、これは住居用の建物の3階部分にあたる。

想像してみてほしい、ニンゲンが垂直跳びでマンションの3階のベランダに着地する光景を。

その光景を頭に描くことができれば、猫の跳躍力がいかに驚異的かがある程度は実感できるだろう。


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リンはというと、ベンチにうずくまり顔だけを向けて娘の行動をじっと見つめている。


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サキは警戒心のこもった目で何かを追いはじめた。

やがて私の視界の片隅にレンガ道をとおっていく人影が入りこんでくる。


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海岸散策や犬の散歩、ジョギングなどするひとの大半は海辺近くの道路を利用し、レンガ道を往来するひとはあまりいない

それはそうだろう、せっかく海岸に来たのだから海が見えない防砂林の中にあるレンガ道をとおるのはそれなりの目的があるか海に興味のない人たちだろう。

そしてそのようなニンゲンはごく少数派だ。


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だからこそ海岸猫たちは警戒するのかもしれない。

自分たちに敵意や害意を持ったニンゲンがその少数派の中にいる可能性が高いと本能的に察知して。


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ベンチを離れて近くの松の根元に座りこんだリン。


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リンの視線が向けられている先には今しがた探索したショベルカーがあり、境界線のネット越しにアームの一部がここからも望むことができる。

リンはまだショベルカーへの興味を捨てきれないのだろうか?


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何をしているのか私にはうかがい知れないが、灌木の奥にやはり腰を下ろしたサキの姿が見える。

先刻の重機探索で緊張を強いられた反動なのか、ふたりがやや気の抜けたまったりとした時間を過ごしているように私には感じられた。


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融通無碍に生きている猫は気散じも得意で退屈などしないと言われている。

が、果たしてそれは事実なのだろうか?

猫だってニンゲンと同じようにときには無聊に苦しむことがあるのではないか、彼らとの交誼を深めるにつれ私はそういう想像をするようになった。


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リンが移動すると、サキが灌木の茂みから出てきてリンのもとへ駆けつけてきた。


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そしていきなりリンの顔をグルーミングしはじめる。


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リンはいささか辟易気味で、目を閉じてじっと我慢しているという印象をうけるのだが‥‥。


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サキは母のそんな様子を気にすることなく丁寧かつ執拗にグルーミングをつづける。


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しかしさすがに耐えられなくなったのか、リンは目を見開くと娘の顔をにらみつけた。

するとサキはようやくグルーミングをやめ、あらぬ方を見つめる。


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ふたりがもし無聊をかこっているとしても、私にできることは限られている。


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私はふたりをうながすようにレンガ道をエリアの中心へ向けて歩きはじめた。

すると、まずサキが私のあとを追ってきた。


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そして私のわきを足早に通り抜けると、そのままレンガ道を進んでいく。

サキはどうあっても私に先行されるのを避けたいようだ。


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リンも私のあとについてきたが、なぜか途中で歩みをとめレンガ道に座りこむと、サキのうしろ姿を見送っている。

そこで私はリンに声をかけた。「リン、一緒にエサ場へ行こう」


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やがてリンはおもむろに腰を上げると、悠然とした足運びで歩きはじめた。


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リンは表情をひき締め前方を見据えたまま、一歩一歩地面の感触をたしかめるような足どりでこちらに向かってくる。


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私はリンの歩く姿を正面から見るのが好きだ。

ライオンやトラなどの大型ネコ科動物を彷彿とさせる威風堂々としたその歩き方が大好きだ。


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実際には猫としても小柄なリンがどうやってこうした貫禄や風格を獲得したのか、不思議なのだが。

威圧感のある表情、昂然とした物腰、それらはエリアのリーダーであるという自覚から必然的に身についたのかもしれない、と私は思っている。


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エサ場へ到着してすぐにリンとサキに食事を与えた。


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今の私がふたりの無聊を慰められるとしたら、とどのつまりは腹を少しだけ満たしてやることくらいしかないのだ。


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食べ物に対して恬淡なリンはあっさりとトレイから離れた。


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けれど若いサキは食べることに対してまだまだ貪欲だ。

自分のトレイを空にすると、リンがの残したキャットフードにも口をつけた。


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リンは防砂林から出て “海の方” を眺めはじめる。

しかしリンの目線の高さでは防砂柵にさえぎられ、海はごく一部しか見えない。


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やがてリンはやおら立ち上がると、慎重に歩を進めはじめた。


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そしてしばらく行くと、いきなり身体を地面に横たえた。リンがこのような姿態をさらすことは滅多にない。


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猫がつくる様々なポーズのなかでは、この “ゴロ寝” がもっとも可愛いと感じるひとも多いだろう。

だがこのときの私にはそういった心証などいっさい湧いてこなかった。

なんとなればこの場所は海岸沿いを走る道路のすぐわきなので、否が応でも人目につくからだ。

野良猫はニンゲンの注意をひかないようひっそりと暮らすのが肝要であり、それが生命を永らえる条件でもある、と私自身は常々思っている。


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どんな気配を察知したのか私には分からなかったが、リンは慌てて身体を起こすと、身構えるが早いか出し抜けに駆けだした。


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そして道路を一気に横断し防砂柵に突進すると、ジャンプ一閃、柵の上に跳び乗り、そのまま向こう側へ身をおどらせた。

人通りが多いこの時刻の海岸沿いの道にリンが出るのは稀であり、ましてや柵を越えて海辺へ近づくことなどこれまでついぞ見たことがない。

いったい何をしてリンをこのような行動をとらせたのか、私はいぶかると同時に呆気にとられた。

リンは性懲りもなく、またぞろ好奇心をそそられる新たな対象物でも発見したのだろうか?



〈つづく〉



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好奇心 (中編)

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前回猫は好奇心の強い動物だと述べたが、彼らはまた、自分のおかれた環境の変化をきらう保守的な動物でもある。

家猫でいえば、それまで見たこともない物が部屋の中へあらわれる、いままでに聞いたことのない音がする、これまで会ったこともない生き物(自分と同じ猫やニンゲンも含めて)が目の前に出現する、などの事象が起こると警戒し度合いによっては恐れおののく。

それらの胡乱なものの正体をあばこうと、まずは逃走できる距離をたもちながら観察し、そして害意をもたない相手だと知ると近づいてにおいを確認したり威嚇するように足でつっついたりする。

このように見なれた物が決められた場所にあり、顔見知りの者がいつもの行動をとり、耳になじんだ音が同じ音量で耳にはいってくる、という昨日と寸分たがわない状況がつづくことを猫は望む性質がある。

そしてこの性質は外で暮らす野良猫にも、反応の程度に多少の差こそあれほぼそのままあてはまる。

リンとサキが防砂林に突如としてあらわれたショベルカーに近づいていったのも、その性質に衝き動かされたからではないだろうか。


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リンは操縦席の背もたれのにおいを丹念にかいでいる。

ニンゲンの1万~10万倍もの臭覚をもつ猫の鼻はどんなにおいをかぎとっているのだろう。


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リンの露骨ともいえるしかめっ面からすると、どうやら好もしいにおいではないようだ。

おそらくこのシートには作業員の汗や体臭が、それも複数人のにおいが染みついていると推測される。

猫に比して鈍感な臭覚しかもたない私でも、敢えてそのにおいをかぎたいとは思わない。


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それでもリンの好奇心はさらなる探求を彼女に命じている。


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猫にとっては “悪臭” を放つシートであるのに、今度はヘッドレストのにおいをかぎはじめるリン。

私の想像では、ヘッドレストには背もたれ部分より更に多種多様なにおいがごた混ぜに染みこんでいると思われるのだが。


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ひとしきりヘッドレストのにおいをかいでいたリンは慌ててキャビンから跳び出してきた。

そして、まるで忌まわしいものにでも遭遇したかのように、しばらく身じろぎもせず険しい表情でショベルカーを凝視する。

いったいリンはヘッドレストからどんなにおいをかぎ取ったのだろう?


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そんな母の様子を見て驚いたのか、それとも不安になったのか、サキが歩み寄ってきた。


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サキはショベルカーへの関心をとっくに失ったようだが、リンはまだ拘泥しているようにみえる。

しかし、私のその推測は間違っていた。


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リンの興味はすでに新たな対象物にうつったようで、ショベルカーの横を通りすぎていく。


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リンの視線がそそがれているのは10メートルほど先に駐車されているトラックだ。

今度はそのトラックのなかを探索しようとでも思っているのだろうか?


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サキは母のあとを追おうともしないで、離れたところからうつろな目つきでショベルカーを見つめている。


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やがてリンはトラックの方へ向かっていったが、前方を見すえたまま突然立ちどまった。

じつはこの時点で私も気づいたのだが、トラックのなかには数人の作業員たちが乗っていて、全員がこちらを見ているのだ。

もしかしたらその人たちは、リンがショベルカーのキャビンに侵入したところを目撃したのかもしれない。

私は急いでリンのそばに行き、彼女をショベルカーやトラックへ近づかせないように「リンもういいだろう、早くエリアへ帰ろう」といくぶん語気を強めて言った。

私は作業員たちがショベルカーに闖入したリンとサキをこころよく思わず、そのことで野良猫を “害獣” あつかいされるのを危惧したのだ。


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私の思いが伝わったのか、それともトラックに乗っているニンゲンの姿をみとめて驚いたのか、リンはきびすを返すと足早に戻ってきた。


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そのまま自分のエリアに引き返すかと思われたリンだったが、砂山の中腹でふいに足をとめた。

そしてまだ諦めがつかないのか、トラックの方を見やる。


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リンはそれから砂山の上に登ると、そこでまた立ちどまり腰をおろした。


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やがてそこへサキがやってきたが、そのままリンの目の前を横切っていった。


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砂山のいただきから周囲の様子を見まわすリンとサキ。

サキからは感じられないが、リンからは自分たちのテリトリー外であろうと得体の知れないものの存在が気になって仕方がないという様子が感じられる。


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もしかしたら巨大な重機の出現が、自分たちの生活になにか良からぬことの起きる前触れになりはしないかと心を砕いているのかもしれない。

本能的に、あるいは経験的に。


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しばらくのあいだそうしていたが、ショベルカーやトラックへの興味が失せたのか、それともそれらへの関心を自ら断ちきったのか、リンは砂山から下りると防砂ネットのわきを歩きはじめた。

今度は立ち止まりもせず、うしろを振り返りもせず、しっかりとした足どりで。


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そのリンを追うように、あとをついていくサキ。

エリアから抜けるときはリンを先導したサキだが、今度はその母に従っていく。


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そうして、リンとサキは境界線を越えて自分たちの縄張りに戻ってきた。


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私はリンに言いたかった。「あまり目立つようなことはしないでくれ。それでなくてもお前たちのことをうとましく思っているニンゲンが少なからずいるんだから」と。


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リンとサキの母娘はレンガ道をエリアの中心へ向かって進んでいく。

まるで散歩を楽しんでいるようなのんびりとした歩調で。

私はそのうしろ姿を見ながら、てっきりふたりはこれから自分たちのエリアでいつもどおりの過ごしかたをするのだろうと思っていた。

だがこのあと、リンとサキは好奇心に誘われて私を更に不安にさせる大胆かつ危険な行動にでることになる。



〈つづく〉



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好奇心 (前編)

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『怖いもの見たさ』という慣用句が表しているように、我々ニンゲンはある事象の危険性を予想しつつも自ら近づいていくという矛盾した行動をとることがままある。

こういうように、恐怖心と好奇心という相容れない心理を胸の裡に共存させているのは何も我々ばかりではない。

猫とかかわりを持ったひとならご存知だろうが、猫はきわめて警戒心がつよく用心深い動物だ。

ところが一方、猫はとても好奇心が旺盛な動物でもある。

今回はそんな猫の心の葛藤を垣間見たと感じさせてくれる出来事があったので紹介しよう。


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私がエリアを訪れたとき、リンは何をするでもなく、樹間から差し込む西日に目を細めながらただぼんやりとたたずんでいた。


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そのとき何かの気配を感知したのか、リンはふいに後ろを振りかえる。


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リンの視線が注がれた方に目をやると、サキの姿があった。


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サキはゆっくりとした足つきでこちらに近づいてくる。


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そしてリンにすり寄ると、鼻先で軽くあいさつをした。

「お母さん今日は、ご機嫌いかがですか?」とでも言うように。(リンはいささか煩わしそうだ)


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サキはそれからレンガ道の奥を見つめながら、思案顔をつくる。

あくまでも私の想像だが、今日はこれから何をしようかな、と考えているのかもしれない。


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しばらくそうしていたサキだったが、心を決めたようにリンから離れると、しっかりした足取りでレンガ道を防砂林の奥へと向かっていく。


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やがて娘に促されるようにリンもおもむろに腰を上げ、サキのあとを追ってレンガ道を歩きだした。

が、その歩調は緩慢で、更に途中で何度も足をとめては周りに目をめぐらせる。

そんな母を気遣ってか、サキは少し前方でリンが追いつくのを待っているようだ。


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ところがそんな娘の気持ちを知ってか知らでか、リンはその場に座りこむと大きなあくびをした。

といったふうに、リンはやる気のないこと甚だしい。

もしかしたらリンとしてはエリアの巡回などせずに、できれば陽当りの良い場所でまったりとしていたかったのかもしれない。


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ようやくその気になったのか、リンは表情をひき締めゆっくりとではあるが、力強い足運びでサキのあとを追いはじめた。


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たいていは人目につかない防砂林の踏み分け道を通ってエリア巡回をするふたりだが、この日はレンガ道を使うことにしたようだ。


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それからリンとサキの母娘は、代わるがわる前になったり後ろになったりしながらのんびりと巡回をつづけていった。


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さらにはレンガ道の脇にある松の木でいきなり爪研ぎをはじめたりする。

融通無碍な生き方を旨とする猫のこと、その行動は思いつくまま気分の赴くままといった感じで、きわめて恣意的だ。少なくとも私の目にはそう映る。

ところがである。


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私がふたりを追い越すやいなや、サキは松の木から慌てた様子で跳び下りると、私の脇を小走りで駆け抜けていった。

どうやら先導するのはあくまでも自分たちであって、ほかの者、とくに私に先行されるのは許容できないようだ。


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それまでの道草を食いながらのだらだらしたペースから打って変わり、サキは脇目もふらずに歩いていく。

これからどこへ行って何をするのか、その思いを定めたように。


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サキはレンガ道を外れても、真っすぐ前を見据えたまま灌木や木立のあいだを突きすすむ。

そして‥‥。


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ついにはエリアの境界であるフェンスも逡巡することなくあっさりと越えてしまう。

「いったいサキはどこまで行くつもりなんだろう?」私はいぶかった。


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リンも私と同じ気持ちなのだろうか、フェンスの手前で立ちどまると、娘の後ろ姿を真剣な眼差しで見つめる。

目の前にあるフェンスは縄張りの端であり、リンとサキがこのボーダーラインを越えて隣の区域に足を踏み入れることは滅多にない。


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娘のことが心配になったのか、リンはやおら腰を上げるとゆっくり足を運んでいく。


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そうしてサキにつづいてリンも縄張りの境界線を越えた。

それを見た私はきびすを返してレンガ道に戻り、足早にふたりのあとを追った。


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やや緊張しているのか、サキは尻尾を下げ心持ち姿勢を低くして、慎重な足つきで進んでいく。


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やがて我々の眼前に現れたのは、ショベルカーとかユンボ、バックホーなどと呼ばれている、いわゆる『掘削機』だった。

すでにこの日の作業を終えたのか、エンジンはかかっておらず、操縦席にはオペレーターの姿もない。


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さっきは境界線を越えるのをためらっていたリンだったが、私を追い抜くとさっさとショベルカーのキャタピラに跳び乗った。

どうやら警戒心より珍しいものへの好奇心がまさったようだ。


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それからリンはニンゲンがいないことを確認すると、軽く跳躍してキャビンのなかへ乗りこんだ。


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リンは周囲に目を配ったあと、床の匂いを嗅ぎながら更にキャビンの奥へと向かっていく。


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一方サキは操縦席よりキャタピラなどの足回り部分に興を覚えたのか、キャビンの下へもぐりこむ。


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冒頭でも述べたが、このように飼い猫などよりずっと用心深いはずの野良猫ですら変わったものや見なれないものに興味を示す。

我々ニンゲンの場合だと、好奇心に駆られるまま正体不明の事物にうかつに近づいたり首を突っこんだりしたら、思いもよらない災難にあったりするものだが。

猫の場合は果たして‥‥。



〈つづく〉



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心もよう (後編)

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サキは再びリンに押えこまれてしまった。

それもリンの眼前にみずから寝ころがってそういった状況をつくるという、私には理解できない行為の結果として。

動機はなんだろう、何かの意図があってのことなのだろうか、まさかサキに被虐趣味があるとは思えないのだが。

何はともあれ、私は事の成りゆきを見届けることにした。


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私からはふたりの頭の部分が死角になっていて、リンがサキに何をしているのか分からない。

分かっているのは、リンがさっきのように相手に体重をあずけるような体勢をとっていないことだ。


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ややあってサキが前足をつかってリンを押しのけた。

ただしあくまでもさりげない、ほとんど力のこもっていないかたちばかりの拒否の仕方で。

にもかかわらずリンはあっさりと上体を起こし後退した。

その様子から、リン自身も第2ラウンドを望んでいないことは明白だ。


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やがてリンは前屈みになると、サキの頭から首筋にかけてグルーミングした。


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すると今度はサキがお返しとばかりに、リンをグルーミングしはじめる。

ちなみにグルーミングには2種類あって、自分に対しておこなうのを『セルフグルーミング』といい、複数の猫がたがいに毛づくろいする行為を『アログルーミング』という。


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このアログルーミングはもっぱら雌同士か雌と雄のあいだでおこなわれ、雄同士でおこなわれることは滅多にない。

理由としては、雌は子どもを産み育てるという本能をもっているため性別に関係なくグルーミングできるが、雄の場合は縄張り意識が強いので他の雄に愛情を示せないからだと言われている。


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このアログルーミングは直截的な親和行動であり、具体的な愛情表現なので、たとえ猫のことをほとんど知らない人が見た場合でも分かりやすい猫の感情だ。


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それはさておき、さっきからリンの足元に身体を伏せたままサキは動こうとしない。


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憂いを含んだ横顔を見せるサキ、彼女が何を考え何を希求しているのか、私には計りかねる。

リンはリンで、そんなサキにどう対応していいか困惑しているふうに見えるのだが。


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しかし、もしかしたらそれは私の洞察力と想像力が足りないせいであって、ふたりは無言のうちにも互いの心情を感得しあっているのかもしれない。

だから私は常々思っている、『海辺のカフカ』のナカタ老人のように、『魔女の宅急便』のキキのように、猫と意思の疎通ができたらどんなに良いだろう、と。


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サキはしばらくして身体を起こすと、リンのとなりに腰を下ろす。

そしてふたりは相手と眼を合わせないで、あたりをゆっくりと見まわしはじめた。


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とはいえ、ふたりの表情に緊張感や警戒感はうかがえずいたって穏やかで、ただ漫然と視線を動かしているという感じだ。

だが猫は、とくに外敵の多い外で暮らす野良猫は、生き延びていくために警戒を完全に解くことはなく、たとえ視界に脅威となるものをとらえていなくても、優れた探知能力をもつ耳は胡乱な物音をけっして聴きのがさない。


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やがてリンとサキは、不法に投棄されたと思われる角材で組まれた建設資材様の中をのぞきだした。

写真では井戸のように深い穴があるごとく見えるが、実際はただ地面に置かれているだけであって、猫の興趣をそそる代物ではないし、何かが潜んでいるわけでもない。


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リンはひとしきり枠の中を注視していたが、心惹かれる物がないからじきに飽いたのだろう、背を向けるとあらぬ方向に視線を転じた。


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リンはそれから地面の匂いを嗅ぎながらゆっくりとその場から離れていく。


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どのような基準で選んだのか私には知る由もないが、やがてリンは気に入った場所を見つけると静かにうずくまった。


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しばらくは独りの時間を過ごしていたふたりだったが、サキがリンに歩み寄ってきた。

そしてリンの顔に鼻先を近づける。


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するとリンはサキにグルーミングをしてそれに応えた。

ところが‥‥。


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たった1回舐めただけであっさりとやめてしまった。

それでもサキは身じろぎせずその場にとどまっている。「スワレ」と命令されて『停座』する忠実な警察犬のように。


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ここでサキが出し抜けに後ろ脚を使ってグルーミング。

私が思うにこの行為はおそらく、愛想のない母に対する不満をまぎらわすための転位行動だろう。


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そしてサキはまたリンをグルーミングしだしたが、リンはただされるがままに任せてこれといった反応を示さない。


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すげないリンの態度に落胆したのだろうか、それとも病気は治ったとはいえいまだ本来の調子に戻っていないリンに戸惑っているのだろうか、サキは顔を上げると、これといった対象物もない防砂林の一画を見つめる。


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サキはそれからリンの側から離れると、ゆっくりとした歩度で木立に向かって進んでいく。


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木立の中にたたずみこちらを振り向いたサキの表情は、何かなし屈託ありげに見える。

私はそんなサキに伝えたかった。「お母さんはじきに元気になるし、素っ気ないのはただの気まぐれなんだ」と。


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そう、たしかに猫はいたって気まぐれな動物だ。

けれどそれは猫の生まれ持った特性であり、また猫の魅力のひとつでもある。

そんな猫の気持ちをすべて理解するのは不可能だが、表情の変容を仔細に観察し、鳴き声の変調を注意ぶかく傾聴すれば、彼らが何を訴えているかしだいに分かるようになってくる。

そして我々が猫の眼を見ながらていねいに話しかければ、彼らだってこちらの気持ちを理解しようと努めてくれるだろう。

なんとなれば、猫たちはこれまでさんざんニンゲンに裏切られてきたので、我々が何を考えているか、彼らのほうがより強く知りたいと願っているはずだから‥‥。



〈了〉



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まだまだ寒い日が続いています。

そこで今回も日産自動車が提唱している『#猫バンバン プロジェクト』を紹介します。


#猫バンバン プロジェクト



外で暮らす猫たちは寒い冬場に暖かさを求めて、停まっている車のエンジンルームや
足回りに潜りこむことがある。


それを知らずにエンジンを始動すると、猫が負傷したり、最悪の場合は死亡します。

実際に駐車中の車にひそんでいたふたりの海岸猫(ミイロ・シシマル)が
発進した車のタイヤに轢かれて死亡し、
ひとりの海岸猫(カポネ)が始動したエンジンで怪我をしている。


そんな事故を防ぐため、 “エンジンをかける前” にボンネットを叩いて猫たちの命を救うのが
『#猫バンバン プロジェクト』の趣意です。


『#猫バンバン プロジェクト』の詳細は下の画像をクリックしてください。
日産のページへジャンプします。







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心もよう (中編)

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リンが本気で娘のサキをやり込めようとしていないのは明らかだ。

猫の “犬歯” は鋭く、その気になればサキの喉笛などいとも簡単に食い破れる。

そしてよく見ると、猫のもうひとつの強力な武器である爪をリンは出していない。


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とはいえサキの必死の形相からすると、リンにツボを押さえた効果的な部位を攻められているのだろう。

とりわけリンが噛みついている首はあらゆる生き物にとってのウィークポイントだ。


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多くの生き物は、腕や脚を切断されても迅速かつ適切な手当てを施されれば命を落とすことはないが、首を切断されるとそうはいかない。

ちなみに『首根っ子を押さえる』という慣用句は、相手の弱点や急所をつかんで動きをとれなくする、という意味である。

やはり私が受けた印象どおり、リンは効率のいい組み伏せ方をしているのだ。


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サキは身体をひねると、右脚の肘を曲げ左手を使ってリンの頭を押し返しはじめる。

そして‥‥。


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リンが上体を反らした一瞬の隙きを捉えると、サキはリンの頭を両前足ではさんだ。

その反撃が効いたのか、リンは表情を歪めながら更に身体を後ろにのけぞらせる。

サキがとっさに繰りだした技、『顔面つかみ』とか『顔面ひねり』とでも呼べばいいのか。


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それはともかく、サキの反撃が思いのほか効いたのか、リンはようやく力を抜いた。

するとサキは身体をおもむろに起こすと、つぎの瞬間脱兎のごとくその場から駆け去っていった。


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サキのうしろ姿をきびしい表情で凝視するリン。

「ただのレクリエーションなんだからもう少し遊んでくれてもいいのに」とか「親に手をかけるなんて、なんという娘なのかしら」とでも考えているのかもしれない。


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サキはリンから充分離れたところまで移動すると、唐突に毛づくろいをはじめた。

おそらくは昂ぶった気持ちを落ちつかせるための転位行動だろう。


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私が見るところ、サキの体格は今では母であるリンとおっつかっつであり、そして体力的には若いサキのほうがリンを凌駕していると思われる。


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それなのに遊びとはいえ、リンからの攻めを受忍していたのは、やはり母への潜在的な畏怖と気遣いがあったのだろう、と私は想像しているのだが。


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ニンゲンの、それも父と息子の場合、それまでの力関係(あくまでも実際的な膂力)が逆転する時期がやってくる。

たがいに口や態度にはけっして出さないが、その事実を両者ほぼ同時に自覚し、息子は一抹の寂しさと微かな優越感をいだき、父親は息子の成長を喜びながらも淡い屈辱感をおぼえる。

(ただ念のために断っておくが、この事例はあくまでも私自身の体験に基づいている)


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だからもしかすると、猫の親子のあいだにもこれに似た微妙な感情が交錯するのかもしれない、と私は考えてしまうのだ。


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それはともかく先ほどの母娘の “バトル” を見て、私としては安堵している。

なんとなれば、リンが病を克服し完全に治癒したことを予想外のかたちで確認できたからだ。


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毛づくろいを終えたサキは、リンに一瞥もくれずに木立を抜け防砂林の奥へと歩きはじめる。

サキの成長にともなって、母娘が別行動をとる機会が増えてきているようだ。


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それはとりもなおさずサキがおとなの猫になったあかしであり、親であるリンもそのことを認めている証左なのだろう。


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サキは前を見すえたまま迷いのないしっかりした足取りで灌木のあいだを進んでいく。

まるで明確な目的でもあるかのように。


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灌木のなかに放置されたブロックのかけら、サキはその上にちょこなんと座った。

ここがサキの目指した場所なのだろうか。


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しばらく辺りに目をめぐらせていたサキだったが、ついと頭上を見あげると、そのまま樹枝の隙間から薄曇りの空を見つめはじめた。

日向ぼっこができる暖かな太陽の光が差してくれないかな、とでも思っているのかもしれない。


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やはり母娘だから以心伝心で気持ちが通じ合うのだろうか、リンもサキに呼応するように白く平べったい雲が広がる空を恨めしそうに仰ぎ見る。


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せっかくエリアで唯一の開けた場所にいるのに、肝心の太陽が顔を出さないのをリンも残念がっているのかもしれない。


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サキは灌木の中から出て、近くにあった木に駆け登ると、思案顔で座りこんだ。


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優秀なハンターである猫は常に爪を尖らせておく必要がある。

だがサキはほんの数回、それも軽く樹皮を “撫でた” だけであっさりと爪研ぎをやめてしまった。


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このいかにもぞんざいな爪研ぎ、私には転位行動の一環に思えるのだが‥‥。

もしかしたらこれもまた先刻の木登りと同様に母へ対する示威行為なのかもしれないし、まったく違う感情をおさえるための行為かもしれない。

結局のところ、このあたりの猫の実際の心情を理解するのは、私にとってはやはり “難題” だということだ。


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サキはそれから木立のなかを突っ切ってリンがいる場所の方へ進むと、木立が終わる細い立木の脇に座りこんだ。

そして側にいる私を見返してきたが、そのサキの瞳には微かなためらいの色が感じられる。


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サキの視線は真っすぐリンに向けられている。

サキがこのあと何をしようと考えているのか、私にはまったく分からなかった。

すくなくともこの時点では。


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一方のリンはさっきとおなじ場所にいる。たぶん1ミリも移動していないだろう。

香箱をつくった姿勢にも変化はみられず、微動だにしていない。


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そこへフレームインしてきたサキは慎重な足運びでリンへ近づいていく。

「サキは何をするつもりなんだろう?」

遊びとはいえ、今しがたリンに強引に組み敷かれたばかりなのに、と私はいぶかった。


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サキはリンの目の前まで行くと、腹を上にしてごろりと地面に身体を横たえた。

動物にとって、たとえば犬の場合などは、こうしておのれの弱点である腹を相手に無防備に晒すのは、たいてい降伏・恭順をしめす行為だ。

ただ猫の場合は腹を晒すことの意味合いが犬とは異なっていて、「ワタシはあなたに全幅の信頼を寄せていて、安心しています」という気持ちのあらわれだと言われている。


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私がそんなことを考えているあいだに、リンはゆっくりと身体を旋回させると、先ほどとおなじようにサキを押さえこみはじめた。

サキは自ら第2ラウンドのゴングを鳴らしたかったのだろうか?

やはりというか、当たり前というか、猫の気持ちを理解するのは容易ではない。



〈つづく〉



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今年も寒い季節が到来しました。

そこで今回も日産自動車が提唱している『#猫バンバン プロジェクト』を紹介します。


#猫バンバン プロジェクト



外で暮らす猫たちは寒い冬場に暖かさを求めて、停まっている車のエンジンルームや
足回りに潜りこむことがある。


それを知らずにエンジンを始動すると、猫が負傷したり、最悪の場合は死亡します。

実際に駐車中の車にひそんでいたふたりの海岸猫(ミイロ・シシマル)が
発進した車のタイヤに轢かれて死亡し、
ひとりの海岸猫(カポネ)が始動したエンジンで怪我をしている。


そんな事故を防ぐため、 “エンジンをかける前” にボンネットを叩いて猫たちの命を救うのが
『#猫バンバン プロジェクト』の趣意です。


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心もよう (前編)

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リンの病はほぼ全快した。

だが私の “リンエリア詣で” はその後もつづいた。

それは私の心に一抹の不安が居座っていたからだ。まるで喉に刺さった魚の小骨のように。

結局私はリンエリアに8日間連続で足を運ぶことになる。

旧ブログを始めて2年間くらいは同じエリアに日参していたこともあったが、それ以後は一度もない。

おそらくこれから先もないだろう。ただし同じような状況が持ち上がらない限りはという条件付きだが。


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エリアに着いたとき、サキは宮本さんと一緒に “散歩” をしていた。

宮本さんに訊くと、ときどきこうやって海岸猫を伴ってエリア内を散歩するのだと言う。

猫がニンゲンと一緒に散歩、それも野良猫が、こんな光景はなかなか見られるものではない。


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一方リンは前方を見据えたまま、最後尾をゆっくりとした足取りで歩いている。


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やがて私を追い抜いたリンは、やや歩調を速めると、踏み分け道を防砂林の奥へと向かっていく。


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ところがリンは、途中で進路を左に変更すると、踏み分け道を外れて木々のあいだを進みはじめた。

いったいどこへ向かおうとしているのだろう、リンはいつもの巡回コースとは明らかに違う道筋をたどっている。

私は宮本さんとサキのあとを追うのをやめ、リンと同行することにした。


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リンはそれから防砂林を抜けると、レンガ道を足早に横断した。

そしてリンはその場に留まった。何もせずただぼんやりと何かが起こるのを待つかのように。


やがてリンの意図するところが私にも理解できた。

リンは実際に待っていたのだ。サキがいつもの巡回コースを通って引き返してくるのを。


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サキが隣接する防砂林に姿を見せると、リンはすぐに駆け寄り、サキに追随するかたちであとに付いていく。


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いつもの巡回コースを見まわるのが億劫だったのか、それとも縄張りの視察をそろそろ娘のサキに委ねようと考えてのことなのか、リンの真の動機は私にはうかがい知れない。


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が、いずれにしても、この日リンは慣例となっている巡回の順路をショートカットしたのだ。

もしかしたらリンの体力は完全に快復していないからかもしれない。

私としてはそう考えたくはないのだが。


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片や若いサキは意気軒昂で、いきなりそばにあった木に駆け登った。


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防砂林の中には、木登りを好む猫にとってそれに適した樹木がたくさんある。

喬木や灌木、そして難易度の高いものから低いものまでより取り見取りだ。


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木登りが上達したサキには、この木の形状はたやすすぎて手応えがなかったようだ。


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サキは木から飛び下りると、細身の木が疎らにある木立の方へゆっくりと歩いていく。


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そしてカメラのシャッターを押す間も与えてくれないほどの速さで、サキはその中の一本の木へ登ってしまった。


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ここでちょっとしたトラブル発生。細い枝にかけていた左の後ろ足を踏み外したのだ。


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しかしサキが慌てた素振りを見せたのは一瞬だけで、その後は体勢を立て直そうともしない。

どうやらこの姿勢が気に入ったようで、やがて右脚もだらりと垂らし、枝の上でくつろぎはじめる。


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おそらく本人にはそれなりの理由があるのだろうが、猫はこういった我々には理解できない行動をとることがよくある。

まあ、こういうニンゲンには想像もつかない行為をするのが猫の特性であり、彼らの魅力のひとつでもあるのだから受け入れるしかない。


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こうして木に登ること自体にも、彼らなりの内的動機があるはず。

ストレス解消のための転位行動かもしれないし、自分の力をあらわす示威行為かもしれないし、DNAに組み込まれた本能のなせる業かもしれないし、ただの気散じのためかもしれない。

なんにせよ独立独歩の精神を重んじる猫の行動原理を把握するのは、我々にとっては難題である。


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ただ猫の感情のなかでも、怒っているとかおびえているとかなどの情動は表情や声からある程度は推測できる。

また猫の形相や姿勢から彼らの心情を読みとる方法を解説している書籍やサイトもある。

が、あくまでも皮相的で大雑把な分類でしかない。


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ニンゲンほどではないにしても、猫にだってもう少し細やかな心理の機微があるはずだ、と私自身は思っている。


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“集合地点” は前回とおなじ場所だった。

リンエリアではここが唯一開けた一画だし、この日はあいにく曇っているけれど晴天なら陽当りが良く暖かいから自然とそうなったのだろう。


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リンは宮本さんが手ずから与えてくれるキャットフードを脇目も振らずに食べているが、サキは少し離れたところであらぬ方向を見つめている。


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しばらくするとサキはやおら立ち上がって宮本さんのそばに来ると、差し出されたキャットフードを頬ばりはじめた。


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おそらく私が到着する前にエサ場で食事を済ませているのだろう、サキはほんの少し食べただけで止めてしまう。


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「所用があるので、私はこれで帰ります」宮本さんはそう言い残してレンガ道へ出るために砂山を登っていった。


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宮本さんが砂山の向こう側に姿を消すと、サキが足早にそのあとを追っていく。

“散歩” がまだ続いていると思っているのだろうか。


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リンはというと、視線を送るだけで地面に横たわったまま動こうとしない。

この日は巡回ルートをショートカットしたとはいえ、いつもならリンも宮本さんのあとを付いていく。

にもかかわらず、ただ見送るだけというのは、宮本さんがもう戻ってこないことをリンは分かっているのだろうか。

もしかしたら経験を積んだ老練な猫は、簡単なニンゲンの言葉なら解するのかもしれない、と私はリンを見てふと思った。


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サキは砂山の上に端座している。サキの視線は、私からは見えない宮本さんに注がれているはずだ。

サキもまた、宮本さんがエリアを去ることを承知しているからこそ、これ以上後追いをすれば、帰路についた宮本さんが困るだろうと斟酌し、砂山の頂で見送るだけで踏みとどまっているのだろう。


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海辺の防砂林で生まれ育ったサキは、外の世界をまったく知らない。

そんなサキにとっては、自分の命をおびやかす多くの外敵がいようが、暑さ寒さが厳しい環境であろうが、海岸が “世界” のすべてであり、防砂林が “我が家” であり、生きていく場所なのだ。

サキの後ろ姿からは、そんな彼女の諦観がうかがえる。


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リンに目を移すと、理由は分からないけれど、何やら思い詰めたような険しい表情をしている。

私はリンの視線をたどってみたのだが、あらかじめ予測したとおり、そこにはこれといった対象物などひとつもない。


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どうやらリンは特定の物を見ているのではなく、意識はまったく別のところにあるようだ。


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ややして、宮本さんが去ったのを見届けたのだろう、サキが寂しげな足取りで戻ってきた。

そしてサキがリンのそばを通り過ぎようとしたその刹那だった。


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リンはいきなり身をひるがえしてサキに飛びかかると、そのままサキを組み伏せた。


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リンもサキも声は発しない。

このことからも本気の取っ組み合いではなく、じゃれあっていることは明らかだ。


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リンに喉元を噛みつかれ腋をかかえ込まれた不利な体勢とはいえ、サキはまともな抵抗も反撃もしないでほぼ防戦一方である。

そしてついにサキは完全に組み敷かれたかたちになり、レスリングのルールを適用すればこの時点でリンのフォール勝ちだ。


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しかしそれでもなおリンは、サキの喉に喰らいついたままいっこうに力を緩めようとしない。

するといよいよ堪りかねたのか、サキは腹からしぼり出すようなうめき声をあげた。



〈つづく〉



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病魔 (後編 3)

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リンの体調不良を知らされて5日目、そしてリンに抗生剤を服用させはじめて4日目‥‥。

前日にリンが木に登る姿を目の当たりにし、彼女のやまいが確実に快方へ向かっているのを実感した私の心はいくぶん軽かった。

エリアに到着してすぐにエサ場をのぞいてみたのだが、リンとサキの姿はない。

そこで私は隣接する区画の防砂林の中へ足を踏み入れ、ふたりを捜すことにした。


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まず最初に会ったのはリンだった。

この日も自分の縄張りを巡回しているのか、リンはその経路にあたる踏み分け道にひとりぽつねんと端座している。


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あたりを見まわしてみたが、サキの姿はどこにも見えない。

「リン、今日はひとりで縄張りをパトロールしているのか? 」私がそう訊いてもリンは何も答えず、私の背後に視線を送っている。


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そのとき、リンを呼ぶ声が聞こえてきた。するとリンは声の主である男性の方へ足早に近づいていく。

男性はリンエリアのボランティアの宮本さん(仮名)だった。


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「なるほどそういうことか、リンは宮本さんと一緒にテリトリーの見まわっているんだ」リンがひとりでいることに私は合点がいった。

せっかくなので私もリンと宮本さんに同行することにした。


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踏み分け道を進んでいたら、灌木の陰からいきなりサキが飛び出してきた。

そしてリンに駆け寄ると、丹念にグルーミングしはじめる。


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なかなか会う機会のない宮本さんに私は訊いた。「午後も海岸に来るんですか? 」

すると「リンの具合が悪くなってからは早朝だけでなく、空いた時間があれば午後も様子を見に来ている」と宮本さんは言った。


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人なつこく温順なリン自身の性格がそうさせるのだろうが、彼女はじつにたくさんの人に愛されている。それもとても深く。

かく言う私もそんなリンに魅了されているひとりだ。


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宮本さんはウエストバッグから取り出したキャットフードを、リンとサキに手ずから与えはじめた。

おそらくこの “おやつ” はリンとサキの母娘にとって魅力的な余禄なのだろう。


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宮本さんもリンが回復していることを実感しているようで、心なしか表情が明るい。


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リンがハウスにこもりっきりの頃に比べると、サキの表情や行動も変わってきたように感じられた。

瞳からは不安げな屈託の影が薄れ、動きも日ごとに軽快さを増している、少なくとも私の眼にはそう見えるからだ。


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宮本さんが防砂林の奥へ進みはじめると、サキがすぐにあとを追っていく。

この光景を見るだけで、サキが宮本さんを心から慕っているのが手に取るように分かる。


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リンはその場にとどまり、そんなふたりを見送っている。

「どうしたリン、お前も宮本さんと一緒にエリアを回っているんじゃないのか」と私は言った。


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その私の言葉が通じたのかどうかは分からないが、リンは腰をあげると踏み分け道をしっかりとした足取りで歩きはじめる。


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そしてリンはレンガ道に出ると、テリトリーの最端部へ向けてなおも迷いのない足付きで歩を進めていった。


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リンがたどった道筋は前日とまったく同じ。

どうやこの巡回ルートは、リンとサキにとってはもはや慣例化しているようだ。


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以前述べたように、ふたりがこの防砂フェンスを越えてとなりの区画に入ることはない。


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この境界線はサキが生まれる前から厳密に守られていることから、リンが本能に則り、経験に基づいて定めたと思われる。


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前日も素振りを見せていたが、リンはこの松の木の周辺が気になっているようだ。


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犬にはおよばないが、猫の嗅覚も鋭敏で、ニンゲンの1万倍から10万倍もの感度をもっているといわれている。


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リンはその高感度の臭覚で何かをかぎとったようだ。


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野良猫のリンがこれほど拘泥する臭い、おそらくそれは縄張りを侵犯した何者かが残したものだろう。

可能性としてもっとも高いのは、おなじ野良猫がマーキングした跡だ。


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しばらくそうしていたリンだったが、宮本さんがエサ場の方へ引き返しはじめると慌ててあとを追っていく。


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前日の機敏な動き、寸秒とはいえ木に登った光景を見て、私はリンの回復を実感している。


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そしてこの日のリンの様子からも、やまいが快方へと向かっている印象を強くする。


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表情に、とりわけ双眸に罹病前の “光” が戻ってきているように思えるのだ。

きびしい環境で生きる野良猫だけが持ちうる “気迫” や “凄味” のようなものが表れているのかもしれない。


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ちなみに飼い猫と野良猫の顔貌に画然としたちがいをもらたしているのは “眼の表情” だ。

一瞬たりとも気を抜けない外敵の多い環境で生きている野良猫は必然的に目付きが鋭くなる。


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リンのあとを追うように、サキが灌木のあいだから姿をあらわした。

どうやらサキは、前日にたがえた “正規” の巡回ルートをこの日はちゃんと遵守したようだ。


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そして先に来ていた宮本さんとリンに合流した。

まるで前もってこの場所が、待ち合わせの地点と決まっていたかのように。


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それからリンとサキの母娘は、宮本さんに先導されるかたちでエサ場まで戻ってきた。

そしてすぐに食事の時間となった。


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宮本さんが与えたキャットフードをひとつの皿で仲良く食べるリンとサキ。

リンは食べ盛りの若いサキと競い合うようにキャットフードを頬ばっている。


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この光景を見ていると、リンは体調を崩す前の食欲を取りもどしているように感じられる。


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宮本さんはふたりが食事に集中しているのを確認すると、そっとエサ場から離れ、そのまま帰路についた。

そうしないとリンとサキが自分のあとを追ってくることがあるから、と言いながら。


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腹がじゅうぶん満たされたのか、サキは台から飛び下りると足早に防砂林の奥へと向かった。


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リンはひとり残り、皿に残ったわずかなキャットフードを漁っている。

彼女の食欲が以前と同じくらいに戻ったという、私の心証はあながち外れていなかったようだ。


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サキにはまだやるべきことがあるのか、防砂林の奥から引き返してくると、踏み分け道をそそくさ進み、ためらいもしないでレンガ道に出ていった。


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そうして何気なく振りかえった私の眼は、すぐ近くの灌木の下にたたずんでいるリンの姿をみとめた。

どうやらリンも私と同じように、ここから歩き去っていくサキうしろ姿を見送っていたようだ。


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娘のあとを追って行動を共にするべきか、それともこのままエサ場付近にとどまるべきか、と思いあぐねるように、リンはその場に座りこんでしまう。


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そうしてしばらく考えこんでいたリンが選択した行動は、茂みの中へ身をひそめることだった。


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まるで外敵の接近を感知したかのように、リンは周囲に警戒の視線をめぐらせる。

けれど私の眼や耳は、それらしき胡乱な影も物音も認識できない。

野良猫は一様に警戒心が強い。もちろんそれには、まっとうな理由がある。


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外で生きている野良猫の身には何が起こるか分からないし、何が起きても不思議ではない。

さまざまな顔をもった外敵からの攻撃、思いもかけない突発的事故、そして今回リンをみまった原因不明の疾病。

野良猫がこういった危殆にいつなんどきおちいるか、誰にも予見できない。

本人にすら、だ。


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地域猫のように世話をしてくれる人がいて、なおかつ運が良ければ、これらの災厄に遭っても命を取りとめる場合はあるが、たいていは手遅れの状態で発見される。

地域猫でさえこうなのだから気遣う人のいない野良猫は一顧だにされず、しかばねを晒すだけだ。
(通常、野良猫は身体が弱ると自ら身を隠してしまうので、我々が遺骸を目にすることは稀である)


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そのことを本能的に知っている野良猫はだから、警戒心を緩めることなく常に五感を駆使して危険をいち早く感取しようとする。

そしてまた、それらの災いは自分ひとりで対処し乗り越えるしかないと覚悟している。

世話をしてくれる人がいても、けっしてあてにしない。


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ニンゲンはいざとなったら頼りにならないことを、彼らは独特の嗅覚で感じ取っているのだろう。

猫はもともと自立心が強く、誇り高く、気高い魂を持っている動物でもあるのだから。


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とはいえ、リンが茂みの中から動こうとしないのは、このときの私にとっていささか都合が悪かった。


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そこで私はリンに声をかけながら茂みへ入っていき、彼女を抱きかかえ、それからエサ場まで運んできた。


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そして近くにあった切り株に腰かけ、膝に乗せたリンに持ってきた抗生剤を強制投与した。

リンはいままでと同じように微塵も、毛ほども、そして徹頭徹尾抵抗を見せず、されるがままに薬を呑みこんだ。


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私がリンに抗生剤を投与したのはこれで4回目。

松田さんには、薬を手渡すときに4、5日与えてくださいとお願いしてある。

私が見るかぎり、リンの病気は全快に近いところまで復調しているので、今回の投薬を最後にしてもいいのだが、あと1回だけ抗生剤を与えることにしている。

野良猫の身には何が起こるか予測できないのなら、念を入れすぎるということはないだろう。


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私がリンと別れ自転車のところまで戻って帰り支度をしていると、踏み分け道をエサ場とは反対の方へ歩いていくサキのうしろ姿が視界に入った。


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私は声をかけようとして、寸前で思いとどまった。

呼び止めたところで、私がサキにしてやれることは今のところなんにもない。

いや、過去の経緯をふりかえれば、これからだってサキには実際的に何もできないだろう。


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今度のリンの罹病にさいして、たしかに私は手持ちの抗生剤を与えた。

薬の効能もすこしは彼女の回復の助力になったかもしれないが、おそらくリン自身の治癒力だけでも病魔に打ち勝てただろうというのが私の所感だ。

けっきょく私は傍観者としての立場を今回も踏み出していないし、踏み出そうともしなかった、その事実が私をとらえて離さない。


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こういうとき、私は名状しがたい無気力感に襲われる。

サキは私をかえりみることなく、目的をもった確かな足はこびで灌木の茂みの中へ姿を消した。



〈了〉



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今年も寒い季節が到来しました。

そこで今回も日産自動車が提唱している『#猫バンバン プロジェクト』を紹介します。


#猫バンバン プロジェクト



外で暮らす猫たちは寒い冬場に暖かさを求めて、停まっている車のエンジンルームや
足回りに潜りこむことがある。


それを知らずにエンジンを始動すると、猫が負傷したり、最悪の場合は死亡します。

実際に駐車中の車にひそんでいたふたりの海岸猫(ミイロ・シシマル)が
発進した車のタイヤに轢かれて死亡し、
ひとりの海岸猫(カポネ)が始動したエンジンで怪我をしている。


そんな事故を防ぐため、 “エンジンをかける前” にボンネットを叩いて猫たちの命を救うのが
『#猫バンバン プロジェクト』の趣意です。


『#猫バンバン プロジェクト』の詳細は下の画像をクリックしてください。
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