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wabi

Author:wabi


治療の一環として始めた海岸散策
そこで知り合った海岸猫たちと交流を
深めるうちに彼らの魅力に心惹かれて2009年10月に旧ブログを開設

そして2015年9月に当ブログへ移転

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2010年1月23日
東京都荒川区東日暮里で行方不明
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2012年8月5日
名古屋市緑区姥子山鳴海グランドで
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約束 (前編)




昨年来つづいていた体調不良が、少しずつではあるが軽快してきた。

そんなある日、私は自宅から遠くて頻繁に行けないエリアを訪れることにした。


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私がエリアをゆっくり歩きながら名を呼んでいると、ビクが何処からともなく姿を現した。


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だが当然私に気づいているはずなのに、ビクは私を一顧だにすることなく悠然と歩いてくる。


今日の海岸には強い『 海風 』が吹きつけている。でもそんな強風を物ともしないほど、ビクの足取りはしっかりしていた。
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もしかしたら “少々” 太り気味のビクの体躯は、強い風が吹く日の多い海辺特有の環境に順応した結果かもしれない。

いささか穿った見解ではあるが‥‥。


やがて防砂林を区切って設けられている道をはさんで私と向かいあうと、ビクは初めて私の顔を見た。春先に会って以来ほぼ2ヵ月ぶりの対面である
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こうして久しぶりに顔を合わせたときのビクは、初っぱなによそよそしく高圧的ともとれる態度を見せる。まるで私と会うのは自分の本意ではないかのように。


私はそんなビクに話しかける。「ビク久しぶりだな。元気そうでなりよりだ」
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しかしビクは険しい表情のまま口を閉ざして何も答えてくれない。


そして‥‥。
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実際に痒いからなのか、それとも気持ちを鎮静させるためなのかは分からないが、後ろ脚をつかってグルーミングを始めた‥‥、つもりなのだろう、ビク本人は。


ところが本人の意志に反して足先はむなしく空を切るばかりだ。
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なんとなればビクの太い胴体が妨げとなり、また四肢が短いこともあって、目的の箇所に足が届かないのだ。


私はビクの心中を忖度し柔らかい口調で言った。「なあビク、お前が今の体型になったのは昨日今日じゃない。だったら足が届かないことはお前にだって分かっていたはずだろう」
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するとビク自身もその事実に思い至ったのか、バツが悪そうに顔をそむけた。


しかしビクは失態を演じたことなど無かったように、すぐに表情を引きしめる。
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こういう状況でおかしそうに笑ってはいけない。猫にだって自尊心や矜持はあるからだ。たぶん。


笑いといえば‥‥。

ブログを始めた当初は、海岸猫の愉快な動作や表情を見て思わず笑うこともあったが、野に暮らす彼・彼女らの実情を知ってからの私はどんな光景を目にしても笑えなくなった。

明日をも知れぬ身の野良猫と関わっていると心愉しいことなどほとんどなく、大抵はつらく遣り切れない思いをする。

だから‥‥、私は事あるごとに自分自身に問いかける。

『 そんな思いまでして、どうして野良猫と関わり続けているんだ? 』、と。

しかし私はこの自問に対する明確な答にいまだ逢着していない。

そもそもその答を自分が持ちあわせているのかどうかさえ疑わしい。


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それからややあって、ビクはおもむろに腰を上げてからゆっくりと足を踏みだした。


そして一歩一歩を確認するように慎重な足運びでこちらに近づいてくる。
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ここでビクはぎこちなく “伸び” をした。それは注意深く観察していないと見逃してしまうほどの微妙な動きだった。


先ほどのグルーミングもそうだったように、ビクの行動はその太り肉(じし)の体型と臆病な性格があいまってとてもユーモラスだ。(でもけっして笑ってはいけない)
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道の半ばへ差しかかったとき、ビクはふいに歩みを止めた。


もしかしたら会わなかった2ヵ月の空白がビクに逡巡をもたらしているのかもしれない、と私は思った。

ちなみにこのような状況では、私はけっしてこちらから近づいたり手を出したりせず、猫の意思を尊重するようにしている。

と、いかにも鹿爪らしいことを述べているが、たいていの場合主導権を握っているのは猫であって、むこうが嫌がれば近づこうとしても簡単に逃げられてしまうし、ヘタに手を出したら鋭い爪で引っ掻かれるのがオチだ。


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私がそんな思いを頭の中で巡らせていたら、尻尾を高々と上げてビクが急接近してきた。


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そしてハスキーな声で小さく鳴きながら私の脚に身体をすり寄せる。


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が、それも束の間、ビクはすぐに私から離れると今来たコースをなぞるように引き返していく。


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そうしてさっきまで佇んでいた防砂ネットの側までもどってしまった。


今日は平日で海岸沿いの道路を往来する人もあまりいない。強い海風が防砂林の木々を揺らす音と近くを通っている国道から車の走行音が聞こえてくるだけだ。
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それなのにビクは警戒心のこもった面持ちで周囲を丹念に見まわす。


外敵の接近に備えて常に警戒をおこたらない、というのは野良猫が持つ習性であり生きてゆくために必須だが、ビクの場合はいつも何かに怯えて小心翼々としている。


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以前の記事にも書いたように、やはり2歳のときにボウガンの矢で頭を射抜かれた事件が、トラウマとしてビクの記憶に残っているのだろうか。


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『 あくび 』は、眠気や倦怠感を感じたときに覚醒を促すためだけではなく、ストレスなどで極度に緊張したときにその緊張を緩めるためにも起きる。

ただビクのあくびがどちらに当てはまるのか、それともどちらにも当てはまらないのか、私には知る由もなかった。


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別のアングルから撮影するために右に大きく回り込んだ私の脇を、ビクは足早に通り抜けていく。


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そして私から10メートルほど離れたところできびすを返すと、こちらを向いてその場に腰を下ろした。


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家猫外猫問わず猫と交誼を結んでいる読者諸氏ならご存知だろうが、彼・彼女らはかなり気まぐれな生き物で、ニンゲンの思惑通りに行動してくれることなどあまりない、というかほとんどない。

それに豊かな感情を持つ猫のこと、日によっては我々ニンゲンと同様に機嫌の良いときと悪いときがあるのだろう。

かといって、この日の私の行動がビクの機嫌を損ねたとは思えないのだが‥‥。


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でもまあ仕方がない、何が原因か分からないけれど、今日のビクはご機嫌斜めのようだ。

海岸猫を訪ねても姿を見せてくれなかったり、たとえ姿を見せても私に関心を示さないですぐに何処かへ立ち去ってしまうことはよくある。

ビクの機嫌がこのまま直らないのなら、日を改めてまた来ればいいだけのことだ。

しかし、私はまだ知らなかった。

この日が私にとって忘れられない、“意味ある日” になることを。



〈つづく〉



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ニューカマー (後編)




いったい誰が灌木の中にいるのか私もその正体を知りたいのだが、こういうとき私は大抵距離を置いて静観することにしている。
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実質的には限定された領域で完結している野良猫の社会に、部外者であるニンゲンがむやみに首を突っ込むのは良策でないと思っているからだ。

たとえ喧嘩になったとしても弥縫策的な仲裁など何の役にも立たないし、また決着がつかないことでかえって遺恨を残すことも考えられる。


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家猫同士の場合も基本的には同様で、劣位の者が逃げ場のないところへ追いつめられたり、優位の者が一方的に攻撃をしつづける状況にならない限りは傍観している方がいい。

なんとなれば野生の本能をいまだに墨守している猫、その猫社会における序列をニンゲンが無理やり変えたとしても、そこには歪んだ力関係が生じ、双方に解消されないわだかまりを抱かせる結果になるかもしれないからだ。※〔1〕

ただし、上記の事項はあくまでも私見であることを申し添えておく。


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灌木の奥に潜んでいた何者かが立ち去ったのか、やがてリンはおもむろにきびすを返すとこちらに向かってきた。


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リンはこのエリアで最年長の海岸猫であり、また母親でもある。

だからおそらく自分のテリトリーを定期的に見回るのは、リンの務めであり慣習なのだろう。


リンがいた辺りの灌木の奥を覗くと、何と先刻リンと対峙していたサバ白猫の姿があった。
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当然リンも気づいているはず、それなのにこの場を離れたということは、このサバ白猫とリンは私が最初に感じたように見知った間柄なのかもしれない。


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ところがそんな私の反応を観察していたのか、振り向くとリンが緊張した面持ちで目を瞠っている。


そしてリンはふたたび灌木の茂みへ足早に近づいて行き、その奥を注視し始めた。このリンの行動に私は奇異な印象を受けた。
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サバ白猫はたしかに灌木の茂みの中にいた。でもその事実はリンだって知っているはず、なのに何故いまさら警戒心をしめす必要があるのか、私にはさっぱり理解できない。

可能性として考えられるのは灌木の中に複数の猫がいた場合だが、しかしそんな偶然があるものだろうか。


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さっきの場所にサバ白猫の姿はないし、リンの後ろ姿からも緊張感は感じられない。
今度こそサバ白猫は立ち去ったようだ。



その時である、数メートル先の遊歩道を横切る影が私の視界に飛びこんできたのは。
私はとっさにレンズをそちらに向け、シャッターを押した。

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それは捜していたこの春に1歳を迎えたばかりのリンの娘だった。

《 待てよ、リンの娘が出てきたのは、さっきサバ白猫が潜んでいた同じ灌木の茂みだ 》

《 ということは‥‥、リンの娘とサバ白猫は灌木の中に仲良く潜んでいたのか? 》

このエリアの事情に疎い私は、その可能性を完全に否定できる立場にはないが、かといって肯定できる場面を目撃した訳でもない。


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そんな私が知っているのは、サバ白猫が “太くて短い尻尾” の持ち主だという事実。

つまり‥‥。

サバ白猫の尻尾はリンやリンの娘と同じ形状をしている、とだけは明言できる。

この事実にどんな意味があるのか、残念ながら今の私は判断を下せるだけの情報を持っていない。


私はリンを引き連れ、リンの娘の後を追って防砂林の奥へ進んでいった。
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というのは私の一方的な思いこみであって、リンとしては逆に私を “ 露払い役 ” にしてテリトリーを巡回しているつもりなのかもしれない。


リンはじきに私から離れ、周囲の匂いを丹念に嗅ぎはじめた。
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テリトリーにほかの猫の匂い、とりわけマーキングの跡が残っていないか細心の注意をはらっていると思われる。


ところが私が一瞬目を離した隙にリンは松の木によじ登ってしまった。ちなみにリンは小柄なこともあって木登りを十八番(おはこ)としている。
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猫が高いところを好むのにはそれなりの理由がある。

まず外敵に襲われるリスクが低くなり、逃げるのにも都合がいいということが挙げられる。

そして視点が高くなると視認性が良くなって、敵の接近や獲物の居場所をいち早く察知できる。


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猫はおおむね木登りが得意だが、なかには木登りが不得手なぶきっちょな猫もいる。

外敵が多い野良猫にとっては、木登りの得手不得手が生死を分けることも十分に考えられる。


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リンは生まれてからの3年間をホームレスの庇護のもと、防砂林にあったテント小屋で暮らしていた。

2013年の夏に、そのテント小屋が放火に遭ったのをきっかけとして、リンは野良猫生活を余儀なくされる。

リンが野良猫としてこれまで生き長らえてこられたのは、自身が持つ運動能力の高さが要因のひとつかもしれない。


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防砂林の一隅を見つめて、リンがにわかに身構えた。さっそく何かを発見したようだ。


リンは視軸を保持したまま体勢を変えた。
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リンが何を凝視しているのか私には確認できないけれど、リンの視線の角度からすると樹上にいる小鳥に照準を定めていると思われた。

私は何度か目撃しているが、肉食動物である猫は鳥も捕食する。※〔2〕


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だがこのような状況では相手に気づかれないように近づくのは不可能だ。

驚異的な跳躍力か翼をリンが持っていれば話は違ってくるが。


対象物が動いたのだろう‥‥、その動きに合わせてリンも視線を移動させる。
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どうやらリンが狙っていた獲物は何処かへ飛び去ったようだ。残念な素振りを見せないことから、リン自身も当初から捕獲できるとは思っていなかったのだろう。


リンは視線を元の方向に戻したが、さっきまでの張りつめた雰囲気は雲散している。
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たぶん居心地が良いからだろうと思うのだが、リンはこうして木に登るとなかなか降りてこない。

そこで樹上のリンをそのままにして、私は最初に訪れたエサ場へ戻ることにした。


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エサ場には先ほどの灰シロ猫が独りぽつねんと佇んでいた。
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夕刻の海岸の様子を眺めている幼い海岸猫の後ろ姿には、なにがなし寂寥感が漂っている。


離ればなれになった母や兄弟のことを思い出しているだろうか。それとも‥‥。
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このような境遇に落とし入れられた自分の身をはかんでいるのだろうか?


あけすけな私の視線に気づいたのか、灰シロ猫が私との距離を詰めてきた。
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それにしてもニンゲンの存在を察知して逃げるどころか近づいてくるところなど、やはりこの子は相当に人馴れしている。

だからといって元飼い猫だと決めつけるのは早計で、たとえ生粋の野良であっても幼齢時期(生後数週間)に人と触れあう機会が多ければ人懐こい性格になる。


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まれに見る人懐こい猫といえども最低限の警戒心はあるようで、灰シロ猫は松の根元にとどまり、それ以上近づいてこない。


私は独りごちるように言う。「それでいい、これからも剣呑なこの防砂林で暮らすなら、絶対に警戒を怠るんじゃない」

「此処には様々な外敵がいるけど、その中でもとくにニンゲンには十分用心するんだぞ」

「何と言ってもニンゲンはこの地球上で一番残酷な生き物なんだから」


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と諭してみたものの、好奇心旺盛な灰シロ猫の顔を見ていると、不安な気持ちは払拭できない。


リンが戻ってきたので、ふたりに食事を与えることにした。

リンの娘はさっき一度だけ、それも私の目の前を横切っただけで、結局その後は姿を見せなかった。

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リンはあくまでも鷹揚に、そしてそれとは対照的に育ち盛り・食べ盛りの灰シロ猫は貪るように猫缶を食べる。


灰シロ猫はまともに咀嚼しないで呑み下すような食し方をしている。
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私はまた独りごちる。「しっかり食べて、夏の暑さや冬の寒さ、そしてあらゆる外敵にも負けない強靭な肉体をつくるんだ」

「お前たちの食事の世話をしてくれる人はいる。だからといっていつもお前たちを護ってくれる訳じゃない」

「野良猫にとっての拠りどころは、結局自分自身しかないんだ」


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ふたりがまるで本当の母子のように食事する光景を見て、私は少し安心した。
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リンが傍にいてくれれば、幼い灰シロ猫の孤独感はいくらか和らぐかもしれない。


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帰途について頭上を見あげると、鈍色の分厚い雲が海岸の空を覆いはじめていた。

《 またぞろ天気が崩れるのかもしれないな 》今日も未明まで雨が降っていた。

雨が降るのは仕方がないけれど、私としてはこれから降る雨は冷たい雨ではなく、できれば春本来の暖かい雨であってほしいと思う。

外で暮らすすべての猫たちのために‥‥。



〈了〉


脚注
※〔1〕どうしても相性が合わない場合は部屋を別けるなどして対応する
※〔2〕私が知るかぎりにおいては成功率はかなり低い。

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ニューカマー (中編)




「お前は誰だ?」とか「何処から来たんだ?」などと猫に尋ねても、答えが返ってくるはずのないことはもちろん私も承知している。

だがこういう場面に逢着した場合、ほかの言葉が浮かんでこないのだから仕方がない。

そこで私は馬鹿のひとつ覚えのように、ふたたび幼い海岸猫に訊いてみた。

「お前は誰だ?、何処から来たんだ?」と。

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しかし灰シロ猫は今回も私の問いかけを完全に無視し、あくびしながら背骨を大きく湾曲させて伸びをした。


灰シロ猫と私の間には4メートルほどの距離しかなく、当然灰シロ猫は私の存在に気づいているはず。

なのにこの泰然とした物腰態度はいったいどういうことだ‥‥?


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カメラを持った見知らぬニンゲンが目の前にいるというのに、あろうことか灰シロ猫はその間合いを自ら詰めてきた。


松の幹を見据える灰シロ猫‥‥、爪を研ぐつもりなのか?
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いや、これは爪研ぎではなく、松の木を利用した『 伸び 』のバリエーションのひとつだと思われる。何故なら幹にかけた前足をまったく動かしていないからだ。


灰シロ猫は松の木から前足をおろしたとたん、何のためらいもなくこちらに向かって歩を進めてくる。
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我々の距離はついに2メートルを切り、戸惑った私は思わず背筋をのけぞらせながら後ずさった。


初見の海岸猫、それもまだ仔猫といってもいい海岸猫にこちらが気圧されるなんて経験は今回が初めてであり、そしておそらく向後も二度とないだろうと思われる。

この灰シロ猫の出自は不明だが、猫の性格形成には父親の遺伝子が大きな影響力を持つという説が正しいのなら、この子の父親は『 豪胆 』な猫にちがいない


私の脇を昂然とした足付きで横切ってゆく灰シロ猫。
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この行為は穿った見方をすれば、『 示威行動 』ともとれる。まったく何という大胆不敵な猫だ。


ただこの物おじしない行動だけでは元飼い猫だったのか、はたまた生粋の野良なのか、簡単には判断できない。

なんとなれば、生粋の野良のなかには最初から人懐こい子もいるし、それとは逆に飼い主に遺棄されたばかりであってもニンゲンを忌避する子はいるからだ。


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かかる状況にあってはまず、母猫や同じ月齢の兄弟が近くにいないかを確かめる必要がある。

がしかし、その可能性はかなり低いだろう、というのもこのエサ場に来てからすでに20分ほど経っているが、近くに家族がいるならとっくに姿を見せていると考えられるからだ。


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この灰シロ猫について今現在判明しているのは、月齢が半年くらいの男子ということくらいだ。

どういういきさつでこの子がこのエリアで暮らすようになったのか‥‥、いずれ関係者に会って訊いてみるしかないな、と私は思った。


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ここにきて、灰シロ猫はようやく私の顔をまともに見た。まるでたった今、その存在に気づいたかのように。


少し憂いを含んだ幼い猫の表情がなにを物語っているのか、私の凡眼では読み取れない。
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いずれにしろ生後半年ほどの幼い猫が親とはなれて独り海岸で暮らすようになるまでには、辛く悲しい目にあったにちがいなく、無邪気な振る舞いを見ただけにかえって不憫に思う。


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またこの子が此処に住みついた時期については、自分の運命を受け入れた諦観といってもいい雰囲気を漂わせているところを見るかぎり、最近のことではないだろうと推測できる。


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私がそんな思いに耽っていたら、灰シロ猫はあくびをしながらこちらに歩み寄ってきた。


この再接近に対して私はその場に佇み、ただシャッターを切ることだけに専念した。
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いくら人を警戒しない猫であっても敢えてこちらからは手を出さない、これは私が野良猫と付き合ううちに自然と習得した対応方法だ。

そもそも私が野良猫に関わる目的は彼らと親密な間柄になることではなく、彼らを観察しその実態をブログで発信することにある。

しかしそうして発信した記事を読者諸氏がどう受けとめるのか、それはそれぞれ違うだろうし、管理人である私はコメントなどの内容から推察するしかない。


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過去においては、私のブログ(旧ブログ)を読んだのをきっかけに野良猫の保護活動を始めたという、望外なメールが寄せられたこともあったが、あくまで稀な例だ。

それに私もそこまで求めている訳ではなく、これまで実情を知らないという理由で野良猫に無関心だった人が少しでも彼らに温かい目を向けてくれたなら、私にとって本懐なのだ


エサ場の入り口で立ちどまっている灰シロ猫。
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灰シロ猫はやがて、長い尻尾を上げたままエサ場のなかへ姿を消した。


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今日はまだその姿を見せていないリンの娘を捜すために、私はふたたび遊歩道へ戻った。


すると、緊張した面持ちで遊歩道の上に佇んでいるリンと目があった。
《 あんなところでいったい何をしているんだ、リンは? 》

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私の姿を認めたのをきっかけとしたように、リンは慎重な足運びで灌木の茂みに近づいていく。


そして灌木の手前でうずくまり、耳をそばだててその奥を凝視しはじめた。
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常ならぬリンの挙動から推しはかると、どうやら灌木の奥に何者かが潜んでいるようだ。

今日はすでに初見の海岸猫ふたりと遭遇しているのに、また新たな猫との出会いが待っているとでもいうのか‥‥。



〈つづく〉



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ニューカマー (前編)




初春‥‥。だが今年は春の到来が遅れていて、海岸に吹く風はまだ冷たい。
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頭上を見あげると、上昇気流をとらえたトンビがいかにも気持ちよさそうに、弧を描きながらゆったりと滑空している。


私は久しぶりにリンの住むエリアを訪れた。

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エリアの中をゆっくり歩きながら名を呼ぶと、リンはすぐに姿を現した。


そしてリンは側に寄ってきては、親愛の情をこめて私の脚に身体を擦りつけてくる。
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以前会ったときよりリンは少し太っていた。おそらく去年の秋に篤志の方たちによってなされた避妊手術の影響だと思われる。


2年前に私自らリンに避妊手術を受けさせようと捕獲を試みたのだが、私に馴れているはずのリンの予想外の抵抗にあい、2度失敗した経緯がある。

その直後私は体調不良におちいり、長らく海岸へ来られなかった。その間にリンは出産をし、3名の子供をもうけた。

だから私は今でも捕獲の失敗をひどく悔やんでいる。


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自分ではそんなつもりはないと思いたいのだが、抱くこともできるリンだから簡単に捕獲できるだろうという気の緩みが心のどこかにあったのかもしれない。

それでも、抱きあげてキャリーバッグに入れようとして逃げられた1度目の失策を自戒し、2度目は食べ物でキャリーバッグに誘導する方法を採った。

だが前回の記憶がリンの脳裏に残っていたのだろう、リンはけっしてキャリーバッグに入ろうとしなかった。


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不幸な子をこれ以上増やさないためにも、またリン自身を長生きさせるためにも、誰が避妊手術を受けさせようと、基本的には構わない。

だから当然、今回リンに避妊手術を受けさせてくれた人たちには感謝している。

ただ本来は、リンの生い立ちやその後の来歴を知る私がやるべきことだったと感じているのも事実だ。

とはいっても、偏狭なこだわりを持っていた訳ではなく、純粋にそうするのが自然だと思っただけなので、どうかそこのところは誤解しないでいただきたい。


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実際に捕獲を試みる以前に、その当時リンの世話をしていたホームレスの人にリンの避妊手術を2度申し入れてことごとく断られて歯がゆい思いをしている。

そのような経緯もあり、私はリンの捕獲失敗をことのほか後悔しているのだ。


私がそんな思いにとらわれているときだった。

背後に何かの気配を感じたのは‥‥。


振り向くと見知らぬ猫が灌木の茂みの側から、こちらの様子をうかがっていた。
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このエリアで暮らしている海岸猫なのか、それともたまたま通りかかった流浪の猫なのか、しばらく海岸から足が遠ざかっていた私には判断がつきかねた。


リンもその存在に気づいたらしく、いつの間にか私の足元にきて端座していた。
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ふたりの間にはおおよそ6~7メートルほどの隔たりがある。リンとサバ白猫はその間合いを縮めることも延ばすこともせず、ただ黙って向きあっている。


猫は縄張り意識の強い動物なので、ほかの猫が自分のテリトリーに侵入してきたら、たいていの場合は威嚇して追いだそうとする。

しかし表情こそ確認できないが、リンは沈黙したまま身じろぎしない。


そしてサバ白猫の表情からも敵意や害意といった感情は微塵も感じられない。
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互いにこれといった行動をとらずに口を閉ざしたまま見つめ合っているのは、ふたりが既知の仲だからかもしれないな、と私は思った。


写真のデータをあとで調べて分かったことだが、サバ白猫の姿を視認してからこの時点まで2分以上経過している。
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私はふたりに干渉しないように後ずさって、成りゆきをしずかに注視していた。


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すると何かのきっかけがあったのか、それとも当初からの予定の行動なのか、サバ白猫はいきなり身をひるがえすと足早に遊歩道の奥へ歩きだした。


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そうしてサバ白猫は灌木の茂みの中に姿を消した。その間一度も後ろを振り返らなかった。


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私はエリアにいくつかあるエサ場のうちで、最も古くからあるエサ場へ足を運んだ。
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リンも私のあとを追うようにエサ場にやって来た。


このエリアで一緒に暮らしているはずのリンの娘の姿を捜したが、傘にかこまれたサ場に誰かが潜んでいる気配は感じとれなかった。
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少なくともこのときは‥‥。


リンは陽が傾いた海岸の情景をネット越しに眺めながら、何やら沈思している風情だ。
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今の海岸での暮らしぶりについて考察しているのか、それとも生き別れた子供たちに想いを馳せているのか、残念ながら私にはうかがい知ることができない。


リンは姉妹のランとともに2010年4月27日、防砂林の中にあったホームレスのテント小屋で生を受けた。

テント小屋とはいえリンとランは一家眷属ともども室内飼い状態だったのだが、2012年の春に飼い主であるホームレスの男性は海岸から立ち去った。

その際に男性は知り合いのホームレスに猫たちを託した。


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ところが外で飼われるようになってからしばらくすると、妊娠中のリンとラン以外の猫は全員いなくなったという。

その直後の2012年5月にリンとランは揃って出産した。

ランは出産後3名の子供のうちふたりだけを連れて、世話を受けていたホームレスのテント小屋を離れて別のエリアへ移り住んだ。


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リンは生まれ育ったそのエリアに残ったのだが、2013年8月にテント小屋が放火に遭ってホームレスの人が防砂林から退去させられたために、寄る辺ない野良猫の身となる。

だがそんな境遇におちいったあとも、リンは防砂林の中で子供を育てながらたくましく生き抜いた。

結果としてリンもまた、周囲のニンゲンの事情のせいで運命を翻弄された犠牲者である。

私としてはこれ以上過酷な状況にリンが追いこまれないよう祈るばかりだ。


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ゆっくりとした足取りで私の目の前を横切ったリンは、そのままエサ場を去っていった。


《他のエサ場へ行くのかもしれない》、そう思った私は、さっきとは逆にリンのあとを追っていくことにした。

そうして傘にかこまれたエサ場を通りすぎようとしたときだった。

私の視界の片隅でなにかが動いた。


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とっさにリンの娘だ、と思った私はカメラをかまえて向きなおった。


しかしそこにいたのは別の猫だった。海岸ではついぞ見たことのない、灰色と白の被毛をまとった猫だった。
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私は興奮をおさえながらシャッターを切りつづけた。
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顔を洗っているということは、今までエサ場のなかで昼寝をしていたのかもしれない。


灰シロの猫はまだ幼さが残る顔をあげた。身体の大きさから推すと生後半年くらいだろうか?
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いっときの高ぶりが徐々に治まってきた。

すると初対面の海岸猫を眼前にした際に言う言葉が、私の口から自然について出た。

「お前は誰だ‥‥?何処から来たんだ‥‥?」



〈つづく〉



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臆病な猫 (後編 )




「このエサ場はいつの頃から、此処にあるのだろう?」

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ビクが『 東のエサ場 』から立ち去って久しいが、私はてっきり先ほど猫缶を与えた、この区画のとなりの防砂林を生活の拠点にしていると思っていた。

なんとなればその区画の防砂林からビクはよく姿を現していたし、ときおり海岸猫に食事を与えるときに使ったであろうトレイが残されていたからだ。


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ちなみにビクが以前暮らしていた『 東のエサ場 』は、10名以上の海岸猫を擁する大所帯のエリアだった。

当時その猫たちは、Kさんという女性がひとりで世話をしていた。


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ところがチビ太郎がエリアに出没するようになると、『 東のエサ場 』の海岸猫たちは彼を忌避し、やがて四散してしまった

するとKさんはそれを契機に海岸猫の世話をやめた。

仄聞したところによると、やめた原因は家庭の事情にもあったようで、おそらくはKさんにとって苦渋の選択だったに違いない。


私が『 東のエサ場 』でKさんと初めて会ったのは2010年の夏だった。

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そのときKさんは「ここの猫たちの世話を始めて8年ほどになります」と言った。

ということは、2002年から大所帯のエサ場をたったひとりで管理していたことになる。

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私がビクのことについて質問すると、Kさんは驚くべきことを語ってくれた。

それはビクが2歳のときに起こった、聞くだに “おぞましい出来事” だ。

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その日、Kさんはいつものようにエサ場にやって来た。

するとKさんを待っていたかのように、ビクはすでに姿を見せていたという。

しかしそのビクは極めて異様な姿でKさんを迎えた。

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Kさんが近づいてよく見ると、ビクの小さな頭に『 ボウガン 』の矢が刺さっていたのだ※〔1〕

その矢はまるで女性の髪の束をまとめるために差し込まれたかんざしのように、ビクの頭を串刺しにしていたという。

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驚いたKさんは自らの手で矢を引き抜こうとしたが、矢は頭蓋骨にがっちり食い込んでいてぴくりとも動かなった。

矢を抜くことをあきらめたKさんは、矢が刺さったままのビクを動物病院へと運びこんだ。

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そして獣医の手によってボウガンの矢はビクの頭から抜き取られた。

かかる大損傷を負いながらもビクは奇跡的に一命を取りとめ、また酷い後遺症も表れなかった。

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しかし今回ビクの写真を注意深く観察したところ、2、3年前から始まったと思っていた眼球が充血する症状が、すでにこのときから見られることに初めて気がついた。

もしかしたらこの眼の疾患はボウガンの矢で受けた損傷が原因かもしれない、と私はあらためて思った。

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おそらくは同一犯の仕業だと考えられるが、(サイコパスがこの街に何人もいると思いたくない)ブログを始めるきっかけを私に与えてくれた『 ミケ 』もボウガンの矢で首を射抜かれたと聞いている。

未だに野放し状態となっているその犯人に対して言うべき言葉を、私はもはや持ち合わせていない。

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何故なら己の慰みのためだけに、無抵抗で無辜な猫をボウガンで狙い撃つニンゲンの心理状態は、私の理解不可能な領域にあるからだ。

結局のところ、このような別の世界の住人である犯人には私の声は届かないだろうし、たとえ届いたとしても私の言葉を解せないだろう。


この凄惨な事件はビクに心にいったい何をもたらしたのか、とはいっても、ビク自身に尋ねるわけにもいかず、彼女の表情や行動から推し測るほかないのだが‥‥。


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前回も述べたように臆病で神経質なビクの気質は、先天的には父親の遺伝子によってある程度決定づけられたものだ。

さて前もって断っておくが、猫といえども後天的な性格形成というものは、思っているほど単純ではない、と私自身は思っている。

それでもボウガンの矢で頭を貫かれるという異状な体験が、ビクの性格形成に影響している可能性は否定できない


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ではビクが誰彼の区別なしにすべてのニンゲンを恐れているかといえば、けっしてそんなことはない。

ビク自身が信頼しているという絶対的な条件が付帯するが、その条件を満たした者には極めて親密な態度で接してくる。

ときには他の人懐こい海岸猫よりも深い親愛の情を表わすことすらある。


私に対しても、毎回こうして足許に身体を横たえては、背中を撫でることを許してくれる。というより、実際は「背中を撫でなさい」と強要してくるのだ。
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私はだから、ビクを訪ねたときは彼女の求めるままに、こうやって10分か15分のあいだ身体を撫でることになる。


おそらくは身体を触るという特権を与えられた他の人たちにも、ビクは同じ欲求をしているのだろう。
なんとなれば、ビクの被毛は野良猫とは思えないほどいつも艷やかだからだ。

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ニンゲンを恐れながらも、ニンゲンの愛情を希求する臆病猫のビク。

私はそんなビクを見ていると、不憫に思うと同時にニンゲンとしてとても申し訳ない気持ちになる


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しかしそんな私にしたところで、ビクにしてやれることはごく限られている。

ときおり訪れては、ビクの要求に従って身体を撫でてやり、おやつ代わりの猫缶を与えることしかできないのだ。


さっき食べ残した猫缶をビクがいつも使っている食器に移し替えてみた。
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そして飲水もペットボトルに入れて持参してきた水と入れ替える。


そうしたところビクはおもむろに食器に近づくと、猫缶を食べ始めた。さっきより勢いよく。
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しかも今度は周りを気にする神経質な素振りも見せない。
もしかしたら防砂林の深部にある自分のエサ場(住まい)、使い慣れた食器、そんな状況がビクに安心感を与えているのかもしれない。



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ビクは今年、12歳を迎える。

野良猫が10歳を超えることは稀有なこと。

私の知るかぎりおいては、ビクのほかに10年以上生きた海岸猫は、稀代の野良『 ミケ(12歳) 』、扁平上皮癌と闘った『 ミリオン(11歳) 』、そして今春他界した『 チビ太郎(11歳) 』だけだ。※〔2〕※〔3〕

ビクはボウガンの矢で頭を射抜かれる危難に遭っても、奇跡的に回復するという強運の持ち主でもある。

ビクはだから、臆病な猫というだけでなく、“奇跡の猫” ・ “強運の猫” なのだ。

しかし‥‥、奇跡はその性質上、たびたび起こる現象ではない。

私はその現実をあとになって改めて思い知ることになる。



〈了〉



脚注
※〔1〕ボウガン:『株式会社ボウガン』の商品名。正式名は『クロスボウ』だが、広く人口に膾炙しているボウガンの名称を使った。
※〔2〕ミケ(12歳):あくまでも獣医の見立てによる推定年齢である。
※〔3〕チビ太郎(11歳):チビ太郎は途中の7年間を長靴おじさんの飼い猫として過ごしたから、純粋な野良猫とはいえない。



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