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wabi

Author:wabi


2008年にうつ病と診断される。
治療の一環として始めた海岸散策。
そこで知り合った海岸猫たちと交流を
深めるうちに彼らの魅力に心惹かれて
2009年10月に旧ブログを開設。
そして2015年9月に当ブログを新設。

★プロフィール写真は元海岸猫の愛猫

■ブログ紹介
逆境にもめげず健気に そして懸命に
生きぬいている野良猫たちの哀切物語

「海岸猫」とは海岸で暮らす野良猫

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疲弊した町

夕刻の漁港。
110716-01



水路へ降りる階段に動くものを発見し、私は思わず身を乗り出した。
110716-02
しかし‥‥、それは私が希求していたモノではなかった。
そこにいたのは、“鳥”だった。



そこへもう一羽、同じ鳥が舞い降りてきた。よく見ると、今度の鳥は頭に白い飾りをつけている。
110716-03
白い飾りは雌雄の違いかもしれない‥‥。すると、この2羽は“つがい”ということになる。


残念ながら、私はこの仲睦まじい鳥の名を知らない。
110716-04
名も知らぬ夫婦鳥が啄ばんでいるのは“小魚”だ。


水路へ下る階段に多数の小魚が散らばっている。
110716-05
おそらく、魚を水揚げするときにこぼれ落ちたものだろう。


その小魚を求めて、大型の鳥もやって来た。
110716-06
しかし、私が探し求めているのは鳥ではなく、あくまでも“猫”なのだ。


夕刻だからか‥‥、先日は目にしなかった人影がちらほら見える。
そこで私は、軽トラックを洗車中の女性に話しかけた。

110716-07
「ここに猫はいないのですか?」
すると、その女性はしばし視線を宙に泳がせた後、「昔はいくらかいたけど、今はいないねェ」と言った。
「漁港なら猫がいると思ったんですが‥‥」
「見つけたら、すぐに保健所へ持っていくからね」と女性。
実にさらりとした口調だった。
私は後の言葉を濁し、女性に礼だけ言うと、足取り重くその場を離れた。



私の故郷に野良猫がいない理由‥‥。
このことはある程度予期していたが、現実として突きつけられるとさすがに動揺した。

110716-08
野良猫がいない町‥‥、それは理想の姿だ。野良猫に係わる人々が求める最終目標でもある。だが、私の故郷の在りようは果たして理想の姿といえるのだろうか‥‥?


野良猫がいない町は“野良猫を生かしておかない町”だ。さっきの女性の言葉通りならそういうことになる。
でも、もしそうであっても、それを非難することなど私には出来ない。

110716-09
その土地、その土地にはそれぞれ事情があるはずだ。野良猫を養っていくにはそれなりの余裕が必要になる。それは人であったりお金であったり‥‥。
思うに、私の故郷にはそんな余裕がないのかもしれない。



昔は買い物客で賑わった商店街は寂れ、しもたやが目立つ。
商店


町で唯一のデパートも最近閉店し、解体工事がはじまっていた。
商店02


飲み屋街にはかんこ鳥が鳴き、娯楽の殿堂と謳われたパチンコ屋も潰れていると聞いた。
110716-10
町全体が疲弊しているのだ。そんな町に野良猫を養う余裕などありはしない。


野良猫がいない町とは、すなわち“疲弊した町”なのだ。
110716-11
私は何とも遣り切れない想いを抱いたまま帰路についた。




それは、漁港へ猫を探しに行った2日後の夕刻だった‥‥。

出会いは、唐突に訪れた。




ここは老犬との散歩コースにある民家の玄関先‥‥。
黒猫
実家から数百メートルしか離れていない。


1匹の黒猫が外の様子を窺っていた。
黒猫02
その黒猫は実家の老犬を認めると、にわかに身構えた。首輪をしているところを見ると、この家の飼い猫なのだろう。


老犬が近づくと、黒猫は身を翻して距離をとった。
黒猫03
しなやかな猫の姿態を久しぶりに見た私は思わず興奮した。そして、飼い猫とはいえ猫の姿を確認出来て、安堵した。


老犬との散歩コースなのに、何故今まで遭遇しなかったのか‥‥、それには理由があった。
黒猫04
この家は2頭の犬を飼っている。散歩中の我々を発見するとその2頭が激しく吠えるため、いつも足早に通り過ぎていた。それに、そんな家によもや猫がいるなどとは思いもしなかったのだ。


私たちがその場を離れるまで、黒猫は警戒心を緩めることなく、険しい眼で睨みつづけていた。
黒猫05
この町に猫はいた‥‥、少なくとも1匹だけは。





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Comment

ないものねだり、私は江戸っ子なのでいわゆる田舎なるものがありません。だからでしょうが、前半のお写真のような風景、昭和を連想させる風景って心が和みます。
時に、たまたまなのかもしれませんが、昨年春に引越した時(東京下町)、2週間近く一匹の猫も見つけられませんでした。下町なのに猫がいない?・・・。
しかし不思議なもので、ある時、一匹の白い猫を発見したんです。そうしたらその後、何匹も見つける事が出来、結果、うちの近所には10数匹の猫がいるって判ったんです。
もしかすると猫は新参者が歩いていると警戒して、姿を見せないのではなかろうか?、。下町でも浅草や谷中などの観光地は人になれた猫が沢山いますが、そうでない、単なる住宅地である下町はそうした警戒心の強い猫が多いのではなかろうか、そう思うんです。
でも漁港にいないってのは珍しいですね。漁港の風景が好きで、色々と旅をしていますが、そんな漁港は今までありませんでしたから。

BigDaddyさんへ

コメント、ありがとうございます。
私の故郷も時代の流れに逆らうことは出来ず、日々変容していますが、都会よりはやはりスピードが鈍いようです。
ですから、時の流れに取り残された光景が町のあちこちで散見されます。築50年以上は優に経っていると思われる家屋、しぶとく残っている小売店、幼いころよく通った懐かしい路地‥‥等々。
そういうモノに遭遇すると、昔にタイムスリップしたような奇妙な感覚に襲われます。そして同時に驚くのです。それらが自分の記憶していたモノより遥かに小さく、狭いことに。
ブログで紹介した黒猫に遇った数日後、今度は実家の向かいの駐車場でグレーの猫が早朝盛んに鳴くのを目撃しました。
カメラを構えたら、車の下へ隠れてしまい、以後姿を見せませんでした。どうやらお向かいの飼い猫だったようです。
私が目にしたのは飼い猫2匹のみ‥‥、未だに“野良猫”には遭遇していません。
それ以後、積極的に野良猫を探すことは止めましたが、狭い路地や公園の木陰につい目がいってしまいます。
BigDaddyさんが仰るように、仮にそのエリアに野良猫がいたとしても、ただの通行人に易々と姿を見せることはないのでしょうね。
私も“猫のいない漁港”は訝しく感じていて、今も納得できずにいます。
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