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wabi

Author:wabi


治療の一環として始めた海岸散策
そこで知り合った海岸猫たちと交流を
深めるうちに彼らの魅力に心惹かれて2009年10月に旧ブログを開設

そして2015年9月に当ブログへ移転

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★プロフィール写真は元海岸猫の愛猫

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逆境にもめげず健気に そして懸命に
生きぬいている野良猫たちの哀切物語

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2010年1月23日
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痩躯の猫 (後編)

海岸猫が昼日なか自ら浜に降りることは滅多にない。

浜辺には猫が厭う “大きな水たまり” が眼の前に広がっているし、何よりも遮蔽物や喬木がない浜辺では外敵に対して無防備だと本能的に知っているのだろう。

それに朝夕の時間帯には、注意書きの看板があるにもかかわらず浜で飼い犬のリードを外す不心得者も多い。

そんな海岸猫も信頼しているニンゲンが一緒だと浜に降りてくることがある。

行方知れずになって久しいが、どんぐり眼が特徴のキジ白猫ソックスは私が浜に降りるといつもあとをついてきた。

私はそのことを思い出し、チビ太郎を浜に誘ってみることにした。

といっても私に深謀遠慮があったわけではなく、ただチビ太郎の気散じになればと思っただけである。


チビ太郎は砂浜への降り口で立ちどまり周りを警戒している。

付近に人影も犬の姿もないことは確認済みだが、私はチビ太郎を急かすようなことはせず、砂浜に立って彼がどうするか黙って見守っていた。


辺りに自分の脅威となる者がいないと見極めたのだろう、チビ太郎はこちらにむかって足を踏み出した。





だがその足取りはしなやかな動きが信条の猫にしてはいささかぎこちない。


まるでこの先に自分を陥れる罠が仕掛けてあるのを知っていて、それを察知するために一歩一歩慎重に足を運んでいるように見える。







もしかしたらチビ太郎が明るいうちに浜辺へ降りてくるのは、これが初めてかもしれないなと私は思った。


チビ太郎は急に立ち止ると、背後を振り返る。
ニンゲンの耳には聞こえない胡乱な物音を聴き取ったのだろう。






チビ太郎はそのまま浜辺へ降りる坂の途中に座り込んだ。







そして周囲を注意深く見回し始めた。
チビ太郎がここまで警戒するのを私は初めて見た。やはり浜辺は海岸猫にとって剣呑な場所なのだ。




これでは気散じを味あわせるどころか、チビ太郎によけいな警戒心を抱かせるだけだ。そう思った私は防砂林に戻るつもりでチビ太郎に近づいていった。


ところが何を思ったのか、チビ太郎は不意に腰を上げると、今度はさっきよりやや早足でこちらに向かってきた。







正面からだとチビ太郎の激痩せぶりが際立って見える。
とくに腹部のへこみが、チビ太郎が尋常な状態でないことを雄弁に語っている。



顔にしても頬の肉がすっかり削げ落ち、頭蓋骨に毛皮を貼り付けたような有り様だ。



またぞろ喉を駆け上がってきた嗚咽を私は懸命に呑み込む。


猫が痩せる原因には栄養失調・老齢・ストレス・疾患と様々あり、また疾患の種類も口内炎・糖尿病・腎不全・肝炎・癌など多岐にわたる。

あるいは猫エイズ・伝染性腹膜炎・猫白血病などのウイルス性感染症を発症したとも考えられる。

チビ太郎の年齢は失念してしまったが、初見のときには既にたくましい体躯を持った成猫だった。

あれから6年、したがってチビ太郎は野良猫の平均寿命をとっくに超えている。





ちなみにチビ太郎には、元の飼い主である長靴おじさんが去勢手術を受けさせている。

通常去勢手術を施術されたオス猫はテリトリーが狭くなり、その結果ほかの猫との接触機会も減ってしまう。

さらに性格が穏やかになり攻撃性も減退し、メス猫をめぐるオス同士の喧嘩もしなくなる。

ところがチビ太郎の場合は長靴おじさんが病を得て防砂林から去って独り残されると、ほかのエリアへ足繁く遠征するようになり、ついにはそのエリアの海岸猫たちを駆逐してしまったのだ。

だからその過程で、キャリア猫との喧嘩による咬傷から感染した可能性もなくはない。

チビ太郎の世話をしているボランティアさんなら、その辺の事情を知っていると思われる。





そのボランティアさんの計らいで既に診察を受けて加療中かもしれないし、自然治癒に任せているのかもしれない。

いずれにせよ責任の持てない第三者が口をはさむ事案ではない。

ブログ記事で自宅に住みついた野良猫の世話をしている様子を紹介している管理人に対して、「家猫にしてあげて」とか「猫に期待を持たせるようなことをしないでほしい」などと訴えるコメントをときおり見かけるが、こういう浅薄なコメント投稿者に私は腹立たしさを覚える。

人はそれぞれ明かせない事情を持っているし、できることとできないことの境界線も画然としているし、受容力にも限界があって、それらを知らない他人にとやかく言う権利などない。

上記のようなコメントを書きそうな思考傾向を自覚している人に僭越ながら忠告しておく。

自分の物差しで他人を測ることは、はなはだ無礼であり、また傲岸不遜きわまりないことだと認識してほしい。


チビ太郎は踵をかえすと、私がいる場所とは逆の方へ歩きだした。
私は慌ててチビ太郎に駆け寄り、更に撮影するために彼の正面に回り込んだ。




いったい何処へ行こうとしているのか私が知る由もないが、チビ太郎の足取りは確固たる目的があるかのようにしっかりしている。


チビ太郎の行く手には最近打ち上げられたと思われる流木が転がっていた。





「なるほど、そういうことか」私は大きく頷く。
樹皮が剥がれ一度水に浸かった流木は、爪研ぎに塩梅がいいのだろうか。






夜行性の猫のこと、もしかしたらチビ太郎はニンゲンがいなくなった夜に浜へ出て、この流木で爪を研いでいるのかもしれない。


私は過去に幾度か運動不足解消のために、夜の海岸を散歩した経験がある。

そしてその際浜に降りている顔見知りの海岸猫と何度か遭遇した。

最近ではリンとランの姉妹に会ったが、ランは声をかけると私だとすぐに気付いて近づいてきたのに、リンはいくら話しかけても私だと認識できずに防砂林の中へ逃げ込んでしまった。


それにしても‥‥、



自ら招いた状況とはいえ、チビ太郎はいつも独りで寂しくないのだろうか?


長靴おじさんの庇護のもとでミケとともに暮らしていたときも、結局ミケを追い出してしまった。



そして今回もエリアの一員として加わることができず、そこに暮らす海岸猫たちを一掃するという大胆な行動に出た。


単独行動が持ち前の猫とはいえ、何故チビ太郎はそこまで他者を排斥するのだろう?



生まれ持った性質なのか、それとも長靴おじさんと出会うまでの幼い時期に誘因となる出来事があったのだろうか?


チビ太郎はいわゆる “捨て猫” であって、仔猫のときに海岸に遺棄されているのを長靴おじさんが発見し保護した。





そのときには既に眼を病んでいたという。もしかしたら眼病が原因で兄弟たちの苛めに遭ったのかもしれない。


そして捨てられた理由も病んだ眼にあったのかもしれない。
長靴おじさんの話では捨てられていたのはチビ太郎ひとりだったというから、その可能性は高い。




兄弟から疎外され、信じていたニンゲンに裏切られたことがチビ太郎の性格形成に何らかの影響を及ぼしたのであれば、誰にも彼を責めることはできない。


更に数年前には苦楽をともにしていた長靴おじさんが病に倒れ、チビ太郎を残してテント小屋を出ていってしまった。





ただ2度目の出来事はいわば予想外の事態であって、チビ太郎を残していくことは長靴おじさんにとって断腸の思いだったはずだ。


しかし事情が理解できないチビ太郎にしてみれば信じていたニンゲンにまた裏切られたと思っただろう。



それに理由の如何を問わず、チビ太郎がニンゲンの都合によって2度も見捨てられたことは厳然たる事実である。


こうして海を眼の前にして、チビ太郎の脳裏に去来するものはいったい何なのだろう?



猫の心中を忖度しても答を知るすべがあるわけでもなく、しょせんは無益な行為だと分かっているのだが、私はついつい想像を巡らせてしまう。


チビ太郎の胸中に去来するのは、自分がまだ母や兄弟たちと暮らしていた遠い過去の記憶なのだろうか、はたまた防砂林の中で長靴おじさんと寝食をともにした記憶なのか、私の想像は時空を超えて迷走する。

やがて想像の翼は現在の長靴おじさんのところへ私を運んでいく。

何処かの病院のベッドの上で今も治療を受けているのだろうか?

あるいは既に退院を果たして役所が取りなした住居で暮らしているのだろうか?

ひょっとしたら‥‥。

想像の翼は不吉な領域の手前で羽ばたくのを止めた。そして私は現実の世界に落ちてきた。















チビ太郎、悪いけど今の私にこの境遇からお前を救い出す力はないんだ。

私にできるのはときどき様子を見に来ることと、祈ることだけだ。


「チビ太郎、簡単に死ぬなよ。いつの日にか長靴おじさんと一緒に暮らせることを信じて、とにかく生きろ」



〈了〉



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Comment

No title

こんにちは
お前とは違うと言われてしまうかも知れませんが(^-^; 私も
何も出来ず ただ チビ太郎の様子をwabiさんの記事を通して
見守り どの外猫さんも とにかく生きていて欲しいと 
願い祈っています。
 寒い冬を 乗り越えれますように・・ 意地悪な人間に
遭遇しませんように・・ 目や身体が これ以上悪くなったり
しませんように・・


 wabiさん 風邪などひかれませんよう 
 くれぐれも 気をつけて下さいね(*^-^*)    

感謝します

wabiさん、ありがとうございます。
チビ太郎のことを詳しく知らせてくださり。
チビ太郎のことは忘れたことがなく、いつもこうした知らせを待ちわびていました。
チビ太郎の存在を知るようになった(wabiさんのブログにより)のは、ミケやサンマがいた頃でした。
顔の様子やその生い立ち、また、これまでに至る経緯を知るにつけ、気の毒としか言いようがありませんでした。
それで、一時はうちで引き取ることも考えたのですが、ブログからの観察でしか判断できませんが、これまでの私の経験からすると、彼はうちのような多頭飼いの家では、今の海岸生活より辛さを感じさせることになるかもしれないと思い、断念しました。
これがもし、日々の食事もままならないなら話は別です。でも彼にはお世話してくださる優しい人がいます。
猫の幸せは、ひとくくりに「こう」とは言えないと思います。
性格も状況も境遇も違い、またそれを知ったとしてもお世話する側のもろもろの事情も絡みます。
聞けるものなら、本人(本猫)に、「どうしてほしいか、何が幸せか」を聞いてみたいです。

wabiさんがチビ太郎を愛し、海岸に足を運んでくださることを本当に嬉しく思っています。
そして、このように前後半に分けるまでに詳しく取り上げてくださり、お気持ちを書き綴ってくださったことを心から感謝いたします。
季節の変わり目、心と体の様子に気をつけてお過ごしくださいね。


こんばんは

チビ太郎ちゃんの顔をみると、悲しくなりますね。
海岸にいるこ達は、過酷な状況のなか、生き抜いているのでしょうね。
わが家の庭に連れて来たいとも思いました。

Wabiさんがおっしゃるように家猫にするためには、多くの課題があります。
日本人が、皆一人、一匹飼えばいいのでしょうね。(*^_^*)

出来る限りのことも、好き、嫌いを含めて個人差がありますよね。
「保護して飼いなさい」と言いきるのであれば、言う方の覚悟がいりますよね。
連れに来て、もっと、幸せにしてやってください。とお願いしたいと思います。

数えきれない外猫を全て面倒をみられる訳ではないのですから。
せめて、凍えない様に、お腹を空かせない様に、まわりに迷惑をかけないようにしたいものです。
猫を愛すれば、苦しいことがたくさんあります。
家猫がいて、自身の区別化にも苦しむことになりますから。

朝夕、冷え込むようになりましたので、体調に留意してくださいませ。





ねこ眠りさんへ

祈り

ねこ眠りさんと私との違いはチビ太郎を実際に知っているかどうかだけです。
私も今のチビ太郎に何もできませんから。
この子ことはずっと気になっているのですが、エサ場が自宅から離れているので
なかなか会いに行けません。(体調も悪いので)

ねこ眠りさんの祈りもチビ太郎に届いていると思います。
お気遣いありがとうございます。

ねこやしきさんへ

チビ太郎の境遇

ねこやしきさんの気持ちを知ったら本人(チビ太郎)も喜ぶと思います。
ありがとうございます。

私も長靴おじさんからチビ太郎の出自を聞かされて以来ずっと気になっていました。
見た目は強面ですが、それも眼の病のせいで本当は人懐こい猫なのです。
ただほかの猫との係わりが、それまでの境遇がそうさせるのか、うまくいかず、
いつも独りでした。

私の印象でも、チビ太郎の性格だとおそらく多頭飼いの環境は難しいでしょう。
ニンゲンにも当てはまりますが、他者とのつき合い方が苦手なようです。
原因はやはりその生い立ちや遺棄された経験が影響しているだと推測しています。
チビ太郎に限らず、野良猫たちがニンゲンの身勝手によって不幸な境遇に置かれたことを考えると、
いつもやり切れない思いにとらわれます。

私は相変わらず体調が思わしくなく、頻繁に海岸へ足を運ぶことができませんが、
またチビ太郎の様子をブログで紹介したいと思っています。

Miyuさんへ

応援しています

お気持ちは大変嬉しいのですが、Miyuさんの家の庭にチビ太郎が現れたら、
おそらくクロちゃんやミケちゃんは逃げてしまうと思います。
チビ太郎は仲間とのつき合いが苦手で、いつもほかの猫を排除していましたから。
彼をそういう性格にしたのも身勝手で無責任なニンゲンです。
病気の仔猫を遺棄するのは間接的に“殺害”する行為であって、どのような事情があろうが
許せません。

私も無力なニンゲンで、不幸な子をただ見ていることしかできません。
今いる元海岸猫の愛猫ひとりを育てるのに精いっぱいですから。

Miyuさんが家猫・外猫両方の世話をしているのを拝見していつも感心しています。
ご自身が言っているように愛情のバランスを取るのはとても難しいですから。
たとえ愛情に限りがなくても、どこかで線引をする必要があります。
そしてその線は人によってそれぞれ違って当然で、誰も非難する資格はありません。
Miyuさんの保護活動を陰ながら応援してます。

私へのお気遣いありがとうございます。
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