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wabi

Author:wabi


治療の一環として始めた海岸散策
そこで知り合った海岸猫たちと交流を
深めるうちに彼らの魅力に心惹かれて2009年10月に旧ブログを開設

そして2015年9月に当ブログへ移転

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★プロフィール写真は元海岸猫の愛猫

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逆境にもめげず健気に そして懸命に
生きぬいている野良猫たちの哀切物語

『 海岸猫 』とは海岸で暮らす野良猫

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昨年来つづいていた体調不良が、少しずつではあるが軽快してきた。

そんなある日、私は自宅から遠くて頻繁に行けないエリアを訪れることにした。


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私がエリアをゆっくり歩きながら名を呼んでいると、ビクが何処からともなく姿を現した。


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だが当然私に気づいているはずなのに、ビクは私を一顧だにすることなく悠然と歩いてくる。


今日の海岸には強い『 海風 』が吹きつけている。でもそんな強風を物ともしないほど、ビクの足取りはしっかりしていた。
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もしかしたら “少々” 太り気味のビクの体躯は、強い風が吹く日の多い海辺特有の環境に順応した結果かもしれない。

いささか穿った見解ではあるが‥‥。


やがて防砂林を区切って設けられている道をはさんで私と向かいあうと、ビクは初めて私の顔を見た。春先に会って以来ほぼ2ヵ月ぶりの対面である
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こうして久しぶりに顔を合わせたときのビクは、初っぱなによそよそしく高圧的ともとれる態度を見せる。まるで私と会うのは自分の本意ではないかのように。


私はそんなビクに話しかける。「ビク久しぶりだな。元気そうでなりよりだ」
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しかしビクは険しい表情のまま口を閉ざして何も答えてくれない。


そして‥‥。
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実際に痒いからなのか、それとも気持ちを鎮静させるためなのかは分からないが、後ろ脚をつかってグルーミングを始めた‥‥、つもりなのだろう、ビク本人は。


ところが本人の意志に反して足先はむなしく空を切るばかりだ。
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なんとなればビクの太い胴体が妨げとなり、また四肢が短いこともあって、目的の箇所に足が届かないのだ。


私はビクの心中を忖度し柔らかい口調で言った。「なあビク、お前が今の体型になったのは昨日今日じゃない。だったら足が届かないことはお前にだって分かっていたはずだろう」
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するとビク自身もその事実に思い至ったのか、バツが悪そうに顔をそむけた。


しかしビクは失態を演じたことなど無かったように、すぐに表情を引きしめる。
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こういう状況でおかしそうに笑ってはいけない。猫にだって自尊心や矜持はあるからだ。たぶん。


笑いといえば‥‥。

ブログを始めた当初は、海岸猫の愉快な動作や表情を見て思わず笑うこともあったが、野に暮らす彼・彼女らの実情を知ってからの私はどんな光景を目にしても笑えなくなった。

明日をも知れぬ身の野良猫と関わっていると心愉しいことなどほとんどなく、大抵はつらく遣り切れない思いをする。

だから‥‥、私は事あるごとに自分自身に問いかける。

『 そんな思いまでして、どうして野良猫と関わり続けているんだ? 』、と。

しかし私はこの自問に対する明確な答にいまだ逢着していない。

そもそもその答を自分が持ちあわせているのかどうかさえ疑わしい。


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それからややあって、ビクはおもむろに腰を上げてからゆっくりと足を踏みだした。


そして一歩一歩を確認するように慎重な足運びでこちらに近づいてくる。
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ここでビクはぎこちなく “伸び” をした。それは注意深く観察していないと見逃してしまうほどの微妙な動きだった。


先ほどのグルーミングもそうだったように、ビクの行動はその太り肉(じし)の体型と臆病な性格があいまってとてもユーモラスだ。(でもけっして笑ってはいけない)
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道の半ばへ差しかかったとき、ビクはふいに歩みを止めた。


もしかしたら会わなかった2ヵ月の空白がビクに逡巡をもたらしているのかもしれない、と私は思った。

ちなみにこのような状況では、私はけっしてこちらから近づいたり手を出したりせず、猫の意思を尊重するようにしている。

と、いかにも鹿爪らしいことを述べているが、たいていの場合主導権を握っているのは猫であって、むこうが嫌がれば近づこうとしても簡単に逃げられてしまうし、ヘタに手を出したら鋭い爪で引っ掻かれるのがオチだ。


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私がそんな思いを頭の中で巡らせていたら、尻尾を高々と上げてビクが急接近してきた。


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そしてハスキーな声で小さく鳴きながら私の脚に身体をすり寄せる。


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が、それも束の間、ビクはすぐに私から離れると今来たコースをなぞるように引き返していく。


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そうしてさっきまで佇んでいた防砂ネットの側までもどってしまった。


今日は平日で海岸沿いの道路を往来する人もあまりいない。強い海風が防砂林の木々を揺らす音と近くを通っている国道から車の走行音が聞こえてくるだけだ。
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それなのにビクは警戒心のこもった面持ちで周囲を丹念に見まわす。


外敵の接近に備えて常に警戒をおこたらない、というのは野良猫が持つ習性であり生きてゆくために必須だが、ビクの場合はいつも何かに怯えて小心翼々としている。


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以前の記事にも書いたように、やはり2歳のときにボウガンの矢で頭を射抜かれた事件が、トラウマとしてビクの記憶に残っているのだろうか。


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『 あくび 』は、眠気や倦怠感を感じたときに覚醒を促すためだけではなく、ストレスなどで極度に緊張したときにその緊張を緩めるためにも起きる。

ただビクのあくびがどちらに当てはまるのか、それともどちらにも当てはまらないのか、私には知る由もなかった。


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別のアングルから撮影するために右に大きく回り込んだ私の脇を、ビクは足早に通り抜けていく。


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そして私から10メートルほど離れたところできびすを返すと、こちらを向いてその場に腰を下ろした。


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家猫外猫問わず猫と交誼を結んでいる読者諸氏ならご存知だろうが、彼・彼女らはかなり気まぐれな生き物で、ニンゲンの思惑通りに行動してくれることなどあまりない、というかほとんどない。

それに豊かな感情を持つ猫のこと、日によっては我々ニンゲンと同様に機嫌の良いときと悪いときがあるのだろう。

かといって、この日の私の行動がビクの機嫌を損ねたとは思えないのだが‥‥。


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でもまあ仕方がない、何が原因か分からないけれど、今日のビクはご機嫌斜めのようだ。

海岸猫を訪ねても姿を見せてくれなかったり、たとえ姿を見せても私に関心を示さないですぐに何処かへ立ち去ってしまうことはよくある。

ビクの機嫌がこのまま直らないのなら、日を改めてまた来ればいいだけのことだ。

しかし、私はまだ知らなかった。

この日が私にとって忘れられない、“意味ある日” になることを。



〈つづく〉



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Comment

No title

こんにちは
wabiさんのところでは台風10号の被害は大丈夫でしたか・・
猫ちゃんたちも うまく隠れていてくれたでしょうか・・
早く台風の季節が過ぎて 猫ちゃんも人間も過ごしやすい秋が
来るといいですね(*^-^*)

忘れられない“意味のある日”・・と 前回のビクちゃんの
奇跡は何度も起きない・・という意味の最後の文とは 
繋がっているような気がして・・
心配ですが でも また お待ちしていますね(^-^;
朝晩の気温差が大きくなってきましたので 夏風邪などに
お気をつけて下さいね。

ねこ眠りさんへ

鋭意作成中

幸いなことに台風10号は、この地域に
これといった被害をもたらさないで北上して行きました。
海岸猫たちも無事だと思われます。
お気遣いいただきありがとうござます。

さて今回の記事、またしても思わせぶりな記述で終わらせてしまい
申し訳ありません。
次回の記事を鋭意(?)作成中ですので、もうしばらくお待ちください。
非公開コメント



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