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wabi

Author:wabi


治療の一環として始めた海岸散策
そこで知り合った海岸猫たちと交流を
深めるうちに彼らの魅力に心惹かれて2009年10月に旧ブログを開設

そして2015年9月に当ブログへ移転

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★プロフィール写真は元海岸猫の愛猫

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2010年1月23日
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パフォーマンス (中編)




昼間に気温の低い海面から気温の高い陸地にむかって吹きつける風を『海風』という。

遮るもののない海面を渡ってくる海風は、その威力を減ずることなく海岸に到達する。

それゆえ海風の風力は想像以上に強く、ときとして風上にむかって歩けないほどの風速になる。

さらに海風は砂浜の砂を舞いあげては、『飛砂(ひさ)』として内陸へ飛散させてしまう。

その飛砂によって農地や家屋が埋没する被害をふせぐために、『防砂林』や『防砂ネット』が海岸線に沿ってもうけられている。※〔1〕


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強い海風にあおられて支柱が歪んだりかしいだりしないための補強なのか、それともべつの目的のためなのか私には分からないが、フェンスの胴縁と平行に一本の鉄パイプが渡してある。

ネットをよじ登ってきたリンは、その鉄パイプに器用にのりうつった。


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「なるほど、これはキャットウォークだ」私はつぶやいた。

『キャットウォーク』をネットで調べると、「高所にあるネコの通り道のことで、自然にできたもののほか、人為的に作られたものも含む。転じて、高所用の通路や足場の代名詞となった」とある。


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無論このフェンスを設置した施工者にそんな意図はなく偶然の産物だろうが、高さといい幅といい海岸猫にとってはかっこうのキャットウォークだ。


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私も過去にキャットウォークなるものを利用した経験がある。

屋内に設けられたそれは下のフロアーから5~6メートルの高さがあり、幅は40センチほど、そして床面が粗いメッシュという剣呑な代物だったが、華奢ながらも墜落防止の手すりが取りつけてあった。


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だがリンが立っているのは幅10センチほどの丸い鉄パイプで、墜落をふせぐものは何もない。

普通のニンゲンなら歩くどころか、立ちつづけることさえ不可能だろう。


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この事実ひとつをとってみても、猫の平衡感覚と運動能力がいかに優れているかが分かる。

まあ、ニンゲンにも猫のような肉球があれば数メートルくらいは歩ける‥‥、かもしれない。


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リンは立ちどまるとちらりと地面を見おろした。


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そういえば、さっき方向転換する直前にも同じ素振りを見せたが‥‥。「まさか、登ったものの降りられないってことはないよな、リン?」

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身軽なリンも垂直に立ったネットをつたって下へ降りることはできないのか。


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以前にも述べたが、猫は高いところへ登るのが得意でも降りるのは苦手なのだ。


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こんな場所、こういう状況でグルーミングとは‥‥、余裕の表れなのか、それとも昂ぶった気持ちを抑えるためにおこなっているのか、残念ながら私にはリンの表情が読みとれない。


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「リン、大丈夫なのか、お前はそこから降りられるのか?」私は少々心配になってきた。


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それまで平坦なところを歩いているときと同じ姿勢だったリンが急に身体を低くかまえ、慎重に足を運びはじめた。


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リンが差しかかったのはフェンスの角で、鉄パイプも緩やかなカーブを描いている。

よく見ると、そのパイプと直角に曲がったフェンスとのあいだに隙間がある。


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その隙間は小柄なリンでも通り抜けるほどの広さがあり、足をすべらすと転落してしまうだろう。

リンはその危険性を察知して注意深く行動しているのだ。


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さらにフェンスの支柱が傾かないために設置された『控え柱』が進行のさまたげになっている。

リンは控え柱に身体を密着させながら、ゆっくりと方向転換していく。


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鉄パイプとネットの間に生じた隙間、覆いかぶさるように張りだした控え柱、それらの障害を持ち前のしなやかな身体と抜群のバランス感覚で難なくきりぬけるリン。


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こういう状況でも猫の動きはじつに優雅で華麗で、気品すら感じさせてくれる。


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ただ高所にいる緊張感からか、リンの眼つきはいつもより真剣で、瞳孔も若干ひらいているようだ。


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リンが歩いている鉄パイプは、私の目測だと地面から3メートルほどの高さにある。

たとえこの高さから落下したとしても、生来の優れた平衡感覚と反射神経をもつ猫なら怪我をしないで着地できるはずだ。

それに浜辺の砂ほど柔らかくないが、防砂林の地面が砂地という条件も味方するだろう。


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とはいっても現実世界には予期しない出来事、いわゆる “万が一” という現象がときおり起こり、「猿も木から落ちる」とか「河童の川流れ」といった諺もそのことを示唆し、慢心をいましめている。

つまり、リンがフェンスから降りられなくなったり、飛び降りたさいに怪我をする可能性がゼロではない、というわけだ。


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東京に住んでいたときに飼っていた愛猫が、隣家の庇から降りられなくなったのをハシゴをつかって救ったことがある。

だがここにはハシゴに代わるものなど見あたらず、そもそもあれから20年余の年月がたった今、足がかりがほとんどないフェンスをよじ登る体力がはたして私にあるのかどうか‥‥、はなはだ心許ない。

ちなみに私は『高所恐怖症』ではないが、しかし高いところが好きかと問われれば、「できることなら避けたい」と答えるだろう。


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やがて鉄パイプが支柱と平行に地面へむかっている場所までくると、リンはおもむろに腰を下ろして前方を凝視し始めた。

“キャットウォーク” はそこで終わっていた。


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表記すべきものもない虚空を見つめつづけるリンの表情は、心なしか張りつめているように感じられる。

そのリンの顔を見ているうちに、私のなかにあった危惧の念が徐々に大きくなってきた。

稀にみる身体能力をもったリンにしても、垂直に立っているフェンスからは降りることができないのかもしれないと‥‥。

いずれにしろリンがこの状況をどう打開するのか、私は最後まで見届ける決心をした。



〈つづく〉



脚注
※〔1〕防砂林は砂防林、防砂ネットは防風ネットと呼ばれることもある。
以上は同義語ではなく、厳密には別物だが当ブログでは慣例に倣った。



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#猫バンバン プロジェクト

日産自動車が提唱している『#猫バンバン プロジェクト』を紹介します。



外で暮らす猫たちは寒い冬場に暖かさを求めて、停まっている車のエンジンルームや
足回りに潜りこむことがある。


それを知らずにエンジンを始動すると、猫が負傷したり、最悪の場合は死亡します。

実際に駐車中の車にひそんでいたふたりの海岸猫(ミイロ・シシマル)が
発進した車のタイヤに轢かれて死亡し、
ひとりの海岸猫(カポネ)が始動したエンジンで怪我をしている。


そんな事故を防ぐため、 “エンジンをかける前” にボンネットを叩いて猫たちの命を救うのが
『#猫バンバン プロジェクト』の趣意です。


『#猫バンバン プロジェクト』の詳細は下の画像をクリックしてください。
日産のページへジャンプします。







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Comment

おはようございます。

リンちゃん、ちゃんと降りられたかしら・・・。
心配ですね。

猫は、高いところへ登っていくのですね。
落ちなければ良いのですが・・・。



こちらは、大雪警報が発令されました。
そちらは、大丈夫でしょうか?

とっても寒いです(+o+)

Miyuさんへ

身も凍るような寒さ

このあとのリンの行動は次回の更新をお待ちください。

猫、とくに野良猫はいまだに野生の本能を持ちつづけているハンターであり、
つねに外敵を意識し、獲物を探しています。
そんな猫にとって“高所”は都合のいい場所なのでしょう。

今年は穏やかな年始を迎えましたが、もしかしたらそれは
我々を油断させるために自然が企んだことかもしれませんね。
こちらは雪は降りませんでしたが、身も凍るような寒さに
襲われています。
大雪に見舞われている日本海側に大きな被害がないよう
祈るばかりです。

追記:私は気づきませんでしたが、雪がちらついたようです。

No title

こんにちは
また次の 雪の降りそうな寒波が来るらしいので
サキちゃんたちが また心配になりました・・(^-^;
早く暖かい春が来てほしいです♪
 
リンちゃんのキャットウォークの続きも気になります。
「あっ キャットウォークだ!」なんて お散歩をしていて
猫ちゃんを見つけたら どこに行くのかな♪ って楽しいですね♪ 
でも みんな落ちないように気をつけてね~(*^-^*)

ねこ眠りさんへ

厳しい季節

梅の花が咲きはじめていますが、冬本番はこれからですね。
日本海側の降雪は山を越えたようです。
ただ、仰るように今度は関東地方に雪が降る予報がでています。

外で暮らす猫たちにとっては厳しい季節です。
とくに幼い子たち、初めて冬を体験する子たちにとっては
命をかけた闘いでもあります。
皆が無事に春を迎えられることを祈るばかりです。

木の上、塀の上、屋根の上、庇の上などは、
猫にとっては寛げる場所なんでしょうね。
ニンゲンをふくめた外敵から身を守れるし、
見晴らしもいいですから。
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