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wabi

Author:wabi


治療の一環として始めた海岸散策
そこで知り合った海岸猫たちと交流を
深めるうちに彼らの魅力に心惹かれて2009年10月に旧ブログを開設

そして2015年9月に当ブログへ移転

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★プロフィール写真は元海岸猫の愛猫

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逆境にもめげず健気に そして懸命に
生きぬいている野良猫たちの哀切物語

『 海岸猫 』とは海岸で暮らす野良猫

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2010年1月23日
東京都荒川区東日暮里で行方不明
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2012年8月5日
名古屋市緑区姥子山鳴海グランドで
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午後の巡回 (中編)

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リンエリアをはさんで東西数百メートルにほかのエサ場は存在していない。

数年前まではいくつかのエサ場があったのだが、前回の記事で述べたように海岸猫がいなくなり、それらのエサ場は自然消滅した。

「海岸猫(野良猫)の減少」、この文言を表面的にとらえれば本来なら喜ばしいことなのだが、気にかかるのはその減り方で、海岸猫の場合は保護されたり死亡が確認された子はほんのわずかで、大半がなんの前触れもなく行方不明になっているのだ。

海岸からいなくなった猫たちはどうなったのか‥‥?、その消息は杳としてつかめていない。


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この『リンエリア』にしても、リンとサキの母娘ふたりが残っているだけで、いつ消滅してもおかしくない。

なんとなれば、野良猫の置かれている境遇は多くの危険と常に背中合わせだからだ。

それがために野良猫の寿命はきわめて短く、一般的に飼い猫の平均寿命が14~16歳なのに対して野良猫は4~6歳といわれている。


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野良猫の主な死因としては、「交通事故などによるケガ」、「猫白血病などの病気」、「免疫力低下をまねく栄養不良」、「野生動物からの攻撃」、「ニンゲンによる虐待」、「暑さや寒さ」などが挙げられる。

さらに‥‥。

これらとはべつに、我々が想定していない脅威が彼らの命をおびやかしている可能性もある。


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そんな脅威を回避するには、彼ら自身が生まれながらに持っている野生の本能と後天的に学んだ判断力しかないのだ。

言うなれば野良猫たちは常に死線ぎりぎりのところで生きているわけで、だからどんなに用心をしてもし過ぎるということはないのだろう。


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こうして防砂林の中を歩きまわるのも、縄張りにほかの野良猫が侵入した兆候がないか、外敵の存在をしめす痕跡がないかをチェックする目的も兼ねているのかもしれない。


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この場所は安全だと確認したリンが腹ばいになっていると、サキが音も立てずに近づいてきた。

そしてたがいの鼻を触れあわせて、猫社会の作法に則ったあいさつをする。


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さらにリンがお尻の匂いを嗅ごうとすると、サキはやんわりと身体をかわす。


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リンは「どうしてイヤがるの、母として娘のことをよく知りたいだけよ」と言っているような表情で見つめるが、それにサキが応じる様子はない。


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なおもサキの後を追うリン、しかしサキは今度もするりと身をかわした。

その仕草はあからさまではないものの、はっきりとした拒否の意思を感じさせる。


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鼻でのあいさつと異なって、お尻の匂いを嗅ぐ行為はほかの意味がふくまれている。

たとえて言うなら、鼻でのあいさつが名刺交換だとすれば、お尻の匂いを嗅がすのは個人情報をすべてさらけだす行為にほかならない。


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というのも、猫の肛門の両側にある『肛門腺』からは分泌物がでていて、その匂いには血筋や素性、そして健康状態などのデータが詰まっているからだ。

だからリンは母親として娘の体調を知りたかったのだろう。

だが娘のサキは「ワタシはもういちにんまえだから自分のことは自分でできるわ」と母の干渉を拒んだのかもしれない。


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しばらくすると、私の脇からサキが姿をあらわしてゆっくりとリンにあゆみ寄っていく。


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だがサキを無視するように、リンは前方を見つめたまま身じろぎしない。

リンは先ほどのサキの反抗的な態度に腹を立てているのか?


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ニンゲンの親なら自分の気遣いを子どもが敬遠するようになると寂しく感じるものだが、猫の場合もそうなのだろうか。


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母のそっけない対応に消沈したのか、サキはきびすを返してリンのそばから離れていった。


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そして近くにある切り株にちょこなんと腰を下ろした。


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そのサキの目の前をリンが通っていく。しかしリンはサキに一瞥もあたえず歩き去った。

サキもそんなリンにちらりと視線を投げかけただけで、切り株のうえから動こうとしない。

私はサキをそのままにして、とりあえずリンの後を追うことにした。


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リンは周囲の様子に目を配りながら、ゆっくりとした歩度で防砂林の奥へ向かっていく。


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少し開けたところへ出たとき、我々の前方にサキが姿があった。


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いきなり視界にはいってきたところをみると、私たちを大きく迂回して先まわりしたようだ。


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切り株の上にいるサキにリンが近づき、さっきと同じように‥‥、いやさっきよりもっと親密なあいさつを交わす。

娘が母を慕い、母が娘を慈しむ、そんな心情が伝わってくる光景だ。


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どうやら、これでたがいのわだかまりはあっけなく解消されたようだ。

ニンゲンとちがって猫は気分転換がじつにたくみで、前回紹介した転位行動などでいとも簡単に気散じをする。


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どうでもいいようなことで悩みを胸にかかえこみ、そのせいで他人を恨んだり憎んだり、あるいはぎゃくに矛先を自分自身に向けるニンゲンの愚かさを猫たちが知ったらどう感じるのだろう。

気の毒にと憐れむのだろうか、それともあきれて苦笑するのだろうか。

いずれにしても自由を好む彼らは、様々な “軛” につながれているニンゲンなどにはなりたくないと思うかもしれない。


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自分なりの目的があるのか、サキはひとり防砂林の奥へと進んでいく。


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残されたリンはというと、さっきまでサキが座っていた切り株の匂いを嗅ぎはじめた。

直接嗅ぐことを拒まれたので、間接的に娘の情報を得ようとしているのだろう。


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我が子の現状を把握して得心したのか、リンは切り株から跳び下りるとサキの足あとをたどるように歩を進めていく。

私はもうしばらく、ふたりの縄張り巡回に同行することにした。



〈つづく〉



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