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Author:wabi


治療の一環として始めた海岸散策
そこで知り合った海岸猫たちと交流を
深めるうちに彼らの魅力に心惹かれて2009年10月に旧ブログを開設

そして2015年9月に当ブログへ移転

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★プロフィール写真は元海岸猫の愛猫

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私のわきを足速にすり抜けていったのだから、てっきりリンはサキのあとを追っていき、ふたたび母娘で行動を共にするのだろう、と私は思っていた。

ところが‥‥。

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リンはサキを追いかけるのを途中でやめて松の根元に座りこむと、その場から動かなくなった。

いっぽうのサキは、ずっと前方からリンの様子をうかがっている。

おそらくサキとしては母が自分を追ってくると期待して、待っているのだろう。


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しばらくそうしていたサキだったが、リンに動く気配がないと感じたのか、腰を上げるとなおも防砂林の奥へと進んでいく。


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だがやはり母のことが気にかかかるようで、サキはつと立ち止まると後ろを振りかえる。


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やがてサキは正面を向くと、ゆっくりと歩を運びながらあたりを探索しはじめた。


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私はサキを見送ると、きびすを返してもと来た道を戻っていった。

しばらく進んだところで、こちらに向かってくるリンと鉢合わせをする。

このとき私は、やはりリンは娘のことが気になってあとを追って行くんだなと思った。


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でもどういうわけか、リンはサキの方へ向いていた進路を右に切って灌木のなかへ姿を消す。


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踏み分け道に引きかえすと、さっきとほぼ同じ場所にとどまって背後を見つめているサキの姿があった。


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サキは視軸を固定したままゆっくりとこちらを向くと、姿勢をひくくした。

その表情は真剣で緊張感すら見てとれる。


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腹ばいになったサキは視線を徐々に移動しはじめた。

サキが何に反応しているのか私は興味をそそられたが、こういう状況では被写体を変更しないようにしているのでひきつづきサキを注視する。


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するとリンが私の視界を左から右へゆっくりと横切っていく。


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とうぜん気づいているはずのサキの存在を完全に無視して、リンはそのまま私の視界から消えてしまった。

母はなんらかの反応をしてくれると期していたからだろう、サキはあからさまに落胆の表情を見せる。


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サキはこうべを垂れたまま、しずしずとリンに歩み寄っていく。「お母さん、機嫌をなおしてよ」と言っているように。

でもリンは娘に一瞥もくれず、防砂林の奥を向いたまま身動きしない。


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今まで母娘のやり取りを見ていた私もここに至って、どうしてリンがこれほどかたくなにサキを忌避するのかさすがに不可解に思いはじめた。

私が想像したように自分を放ったらかして掲示板で遊んでいたサキに腹を立て、それにまだこだわっているのだろうか。


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それとも私がうかがい知ることのできないほかの理由があるのだろうか。


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リンはおもむろに身体をひるがえすと、こちらに向かってきた。


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そうしてまた私のわきを足速に通り抜けていった。


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リンは踏み分け道に出ると、迷いのない足取りで進んでいく。


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そのリンの後ろ姿を見つめながらサキも移動をはじめた。


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サキは歩度を速めながらリンのあとを追っていく。

注意をひくものでもあったのか、リンは道の真ん中でうずくまっている。


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まさにサキがリンに追いついたときだった。

身体を起こしたリンが方向転換をして大きくジャンプした。


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母の挙動におどろいたのだろう、サキは呆然とその場にたたずむ。

ただ写真では確認しづらいが、リンも灌木の茂みの手前あたりにとどまっている。


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サキはちいさく跳躍すると、着地と同時に身体をひくく身構えた。視線は母の後ろ姿をしっかりと捉えている。


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サキはそれからお尻をぷるぷると小刻みにふるわせて力を溜めると、リンを目がけてジャンプした。

その気配を感じとったのだろう、リンは灌木のなかへ駆けこんでしまう。


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サキはふたたびジャンプすると、そのままリンのあとを追っていった。


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私は蜘蛛の巣が張りめぐらされた灌木のあいだを通りたくなかったので、遠まわりを承知で踏み分け道をつかってふたりのあとを追うことにする。


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防砂林を区分けしているフェンスの縁に、リンが身じろぎしないでたたずんでいる。

そこは海寄りの区画から風によって運ばれた『飛砂』がこちら側へ侵犯してきている場所だった。

どうやらリンはネットの向こうに行こうかどうしようか逡巡しているようだ。


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そこへサキがやってきてリンの身体にそっと鼻先を近づける。

でもやはりここでもリンはなんの反応も示さない。


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するとサキは母を押しのけて前にでると、なんのためらいもなくネットの裂け目をくぐり抜けてとなりの区画へ足を踏み入れた。

リンはその場にとどまり、だまって娘の後ろ姿を見おくる。


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リンはあくまでも慎重で、ネットの前でその先にある灌木の茂みを凝視しつづけている。

そのなかに敵意をもった何者かがひそんでいないか警戒しているようだ。

防砂林での暮らしが7年にもおよぶリンだから、実際にこの場所で外敵に遭遇した経験をもっているのかもしれない。


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やがて安全が確認できたのか、リンはゆっくりとネットの穴をくぐっていく。


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ここはエサ場からもっとも離れた地点であり、またエリアの境界線でもある。

ふたりが入っていった区画の防砂林は灌木が密生していて、ひとの侵入をきびしく拒んでいる場所だ。

私はリンとサキの “縄張り巡回” に帯同するのをそこであきらめた。


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今回リンとサキの母娘の様子を観察して印象的だったのは、本来は仲の良いふたりのあいだに存在している微妙な不協和音だ。

サキは2015年生まれなので今年2歳になり、これはニンゲンの年齢に換算すると23、4歳にあたる。

その年ごろのニンゲンは学業をおさめ社会人になったり、生まれ育った家を出てあらたな『家庭』をつくる実際的な親離れのときをむかえる。

もちろん私はその時期が野良猫社会のそれとぴったり一致するとは考えていないけれど、かといって大きく乖離しているとも思えない。

だから、いつのまにかオトナになり、独立独歩の道をあゆみはじめたサキにリンが戸惑いと寂しさを覚えている可能性はあるだろう。

リンがサキに対してそっけない態度をとったのも、そのことが原因かもしれない。



〈了〉



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Comment

鍵コメYさんへ

長文のコメントありがとうございました。

ご質問にお答えします。
接続詞『なんとなれば』は「何故かというと・どうしてかというと」という意味であって
方言ではありません。

非公開コメント



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